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『86 -エイティシックス-』感想 めちゃめちゃ切ない青春ミリタリーSFライトノベル

86―エイティシックス― (電撃文庫)

こんばんは、晨(@ashita_bassist)です。

 

安里アサトさん作、第23回電撃小説大賞に輝いたライトノベル「86 -エイティシックス-」。ジャンルとしてはSFやアクションになるでしょうか。いわゆる「ラノベ」と聞いて連想される美少女要素や萌え要素は限りなく0に近い、硬派なミリタリー小説です。

 

物語の舞台になるのは、大きな大陸の中心にある「帝国」と、その周囲に位置する国々です。その中でも、帝国の西方に位置する「サンマグノアリア共和国」という国が中心に描かれます。

 

「帝国」は無人戦闘マシン「レギオン」を使って周囲の国への侵略を開始。ところがその帝国そのものがレギオンの暴走で滅んでしまい、持ち主のいなくなったレギオンたちは暴走し続けて共和国への襲撃を続けます。

 

そんなレギオンの群れに対してサンマグノリア共和国が取った対抗手段は、レギオンと同じく無人の兵器「ジャガーノート」による防衛戦でした。

 

ところがこのジャガーノートは、パイロットを乗せて操縦させる兵器です。これを「無人兵器」と言い張る共和国の理屈がまたとんでもなく恐ろしいものになっています。

 

銀髪が特徴の共和国最大の民族「アルバ」たちは他の民族を「人間ではない動物」として差別して扱い、国土の端の86区に強制収容して「86(エイティシックス)」の蔑称で呼びます。そして、人間ではない86が乗るジャガーノートは「無人機」だ…という理屈を語ります。

 

レギオンに対抗するにはあまりにお粗末なジャガーノートで特攻同然の戦いを強要され、86は人口が激減して10代の少年少女までもが戦場に向かうことになっていて…という、どこまでも悲壮感溢れる戦場がストーリーの中心になります。

 

主人公は決死の戦場の中で何年も生き延びているベテランのジャガーノート乗りの少年シン。そして、共和国首都の基地からシンとその部隊と「知覚同調」という技術で通信を取る指揮官の少女レーナです。

 

使い捨ての道具として消耗させられるシンたち前線部隊。そして、そんなシンたちに少しでも寄り添おうとしながらも「安全なところから口だけ出しているお偉いさん」という立場にしかなれないレーナ。

 

死と隣り合わせの中で生きる意味を見出そうとする側と、自分の力の無さに葛藤する側のそれぞれの苦悩が描かれます。

 

話を読み進めていくうちに、どこまでも救いのないシンたちの運命に唖然とさせられます。86のシンたちをないがしろにする共和国の堕落ぶりは、「人はここまでクズになれるのか」と感心してしまうほどでした。単純に襲ってくるレギオンの方が分かりやすい分まだ優しいと思えるレベルです。

 

そんな中で一体どんな生きがいを見つけられるのか。シンたちが見せる最後の答えは、涙なしには受け止められません。ほんとに読んでてちょっと泣きました。

 

「使い捨ての少年兵と、彼らの力になろうとするお嬢様」という構図は、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の1期が近いと思います。ですが、どんなに努力しても生存の道が残されていないシンたち86の運命は、オルフェンズに登場した鉄華団よりさらに悲惨だと言えます。

 

他にも、同じライトノベルの中でいうと、まさかのハリウッド映画化も果たした「All You Need Is Kill」が近いテイストかもしれません。「報われない少年少女の戦い」という点では同じテーマ性を感じました。

 

『86 -エイティシックス-』は、かっこいいロボット描写や派手な戦闘シーンを求めて軽い気持ちで読んだら涙腺崩壊まちがいなしの、悲劇のディストピア小説です。シンたち以上に残酷な運命を抱えたキャラクターは、他の小説や映画、アニメの中にもそうそういないんじゃないでしょうか。

 

この本を手に取るときは、それなりの覚悟を持って臨む必要があると思います。それくらい衝撃を受けた小説でした。

 

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)