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霧島まるは『左遷も悪くない』感想 優しく和まされる近世スローライフ【レビュー】

左遷も悪くない〈1〉 (アルファライト文庫)

こんばんは、晨(@ashita_bassist)です。

 

近世の田舎町に左遷された軍人の主人公と、そのお嫁さんの和やかな日々を優しいタッチで描くライトノベル「左遷も悪くない」

 

作者の霧島まるはさんが僕と同じ佐賀県在住ということで、なんとなく手に取ってみました。そしたらこれが自分にドンピシャでハマったので、レビューします。

 

『左遷も悪くない』あらすじ

舞台は「ミルグラーフ王国」という近世ヨーロッパくらいの時代設定の国。主人公は28歳で軍人のウリセス=アロという男です。

 

青春時代を士官学校と戦場で過ごした生粋の軍人のウリセスは、上官にはっきり意見したり汚職貴族にも媚を売らない実直すぎる性格と、一騎当千の強さを持った生粋の武闘派でした。

 

戦時こそ「目障りだけどいないと困る奴」だったものの、戦争が終わって平和になるとただの「目障りな奴」になったウリセスは、ド田舎の町に駐留する連隊長に任命されます。つまりは「左遷」でした。

 

左遷先でも「冷酷で無慈悲な鬼軍人らしい」などと可哀想な悪評が広まるウリセスでしたが、その町にはかつて彼に命を救われた元軍人の男がいました。そして、その男は自分の娘のヴァレーリア(レーア)をウリセスの妻にやりたいと縁談を持ちかけてきます。

 

縁談が成立して、お互いの顔も知らないまま結婚したウリセスとレーアは、大きな事件も起きない平和な田舎町で日常を過ごしながら、少しずつ夫婦としての絆で結ばれていき……というお話です。

 

 

「ラノベ」っぽさの薄い落ち着いた雰囲気と世界観

ライトノベルというと、主人公がちやほやされるハーレムストーリーや都合のいい出世物語、ハイテンションなドタバタ劇といった「いかにも」なものを連想する人も多いと思います。

 

ですが、この「左遷も悪くない」は、そんなラノベっぽさを感じさせない作風になってます。

 

物語設定は異世界転生ものでもなく魔法が飛び交うファンタジーでもなく、近世ヨーロッパくらいの年代に雰囲気が近い、現実的な世界です。

 

文体もやたら擬音語が多かったり回りくどい表現が多かったりといった「ラノベ癖」はなく、どちらかというと古風で、それでいてテンポがよくて読みやすい文章でストーリーが語られます。

 

世界観はファンタジーじゃないけど読み味的にはファンタジー小説が近くて、「いかにもなライトノベルは苦手」という人でもすんなり受け入れられるんじゃないでしょうか。

 

少しずつ「夫婦」になっていく主人公2人が微笑ましい

登場人物の中で一番印象的だったのが、ヒロインのレーアです。

 

「一歩引いて夫を支え、その留守中に家を守るのが良き妻」という価値観だった時代にその価値観を守ろうとする健気な性格のレーアは、ちょっとドジで頼りなさげなところもあって、守ってあげたくなるようなキャラクターです

 

ドジっぽさもわざとらしい雰囲気はなく、ちょっと慌てやすかったりしてあたふた赤面してしまう様子に、静かにキュンとさせられます。

 

そんなレーアの可愛さはもちろん、ウリセスも意外と萌えポイントが高かったりします。

 

最初は「戦場以外のことは知らずに生きてきた孤高の一匹オオカミ」という雰囲気のウリセスでしたが、自分を夫と慕って、毎日支えようとしてくれるレーアの存在で少しずつ心が動いていく繊細な心理描写にいちいち胸キュンさせられます。

 

ちょっとした理由でレーアと一緒に寝ない夜に広すぎるベッドで寂しさを感じてたり、レーアの体調のことになると滑稽なくらい心配性になったりと、「なんだ、レーアのことしっかり大好きじゃん」と思える行動が増えていって、ニヤニヤが止まりません。

 

最初はウリセスに強すぎる憧れを抱いてたレーアがだんだん彼を「弱いところもある普通の男」として愛していって、ウリセスもレーアを「初めて自分以外に全幅の信頼を置けるようになった人生のパートナー」として愛していく流れが丁寧に丁寧に描かれて、微笑ましくなります。

 

まさに「左遷も悪くない」なー、と思える平和な日常ストーリー

ウリセスとレーアが「夫婦」として成長していく傍でくり広げられるストーリーは、平和な田舎町らしい、何気ない日常の出来事ばかりです。

 

事件といえば「色恋沙汰のもめ事」だったり「ウリセスの実家の妹の家出&突然の来訪イベント」だったり、命がけの戦争と比べれば平和極まりないです。

 

だからこそ、読む側としては安心してページを進められます。日常の中のちょっとした騒動を経てウリセスとレーアがまた一歩夫婦の道を歩んでいく展開が心地よくて、このフフッ」ってなる和やかな胸キュンを求めてどんどん読んでしまいます。

 

「左遷も悪くない」どころか、「こんな左遷ならされてみたい!」と思ってしまう、読んでいて羨ましくなるスローライフなストーリーです。

 

まとめ

リアルで穏やかな近世ヨーロッパ田舎スローライフの「左遷も悪くない」。

 

「いい感じにファンタジーっぽくて、でも読んでて疲れずに癒されるような話が読みたいなー」という人にはぴったりです。僕も仕事で疲れた合間の和みとして読んでます。

 

勢いのいいハイテンションなライトノベルをエナジードリンクとするなら、この「左遷も悪くない」は、胃がぽかぽか温まってほっと一息つける紅茶みたいな作品です。上質で落ち着いたスローライフ物語を読みたい方は、絶対にハマれます。

 

左遷も悪くない〈1〉 (アルファライト文庫)

左遷も悪くない〈1〉 (アルファライト文庫)

 

 

 

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