SF映画の定番の舞台のひとつに「近未来」があります。
映画の中の近未来は、めちゃめちゃ不自由な監視社会だったり、文明が崩壊していたりと、かなり不幸せに描かれることも多いです。ユートピアの反対、いわゆる「ディストピア」という世界観ですね。
今回はそんな、ディストピアな近未来を舞台にした映画のおすすめを紹介してみます。
- 感情を抑制されたディストピア:リベリオン
- 生身の囚人でFPSゲーム:GAMER
- ディストピア世界での禁断の恋:ロスト・エモーション
- ディストピア×ジュブナイル物語:ギヴァー 記憶を注ぐ者
- 未来も希望もないディストピア:トゥモロー・ワールド
- 身の毛もよだつディストピアの闇:アイランド
- おバカすぎてディストピア:26世紀青年
- 延滞の対価は命:レポゼッション・メン
- 「列車の中でディストピア」という異色作:スノー・ピアサー
- ディストピア世界の映像が秀逸:エリジウム
- まとめ
感情を抑制されたディストピア:リベリオン
「争いの原因=人間の感情や欲」という考えのもと、人間の感情を薬で抑制するようになった未来の世界のお話です。人間の感情に訴えるものである恋愛や芸術・文学も禁止されています。
主人公はそういった禁止物を取り締まる「クラリック」と呼ばれる捜査官の一人で、東洋風の格闘技と拳銃アクションを織り交ぜた「ガン=カタ」と呼ばれる架空の格闘術を使って戦います。主演は「ダークナイト」シリーズで有名なクリスチャン・ベールです。
あらゆる芸術文化を禁止された淡白で冷たい世界観ももちろんですが、このガン=カタによる中二病全開アクションも有名になって、SFアクションの世界ではカルト的人気を誇る作品として知られています。
アクションの方ばっかり注目されがちですが、「感情を持つ→即死刑」という世界はよく考えると相当恐いですよね。
生身の囚人でFPSゲーム:GAMER
「コール・オブ・デューティ」のようなFPSゲームを、コントロールチップで身体を操られた囚人たちを使ってプレイする様子が娯楽として放送されるとんでもない近未来のお話です。
「身体を操られて自分では自由に動けず、本物の銃で撃ち合いをさせられる」。想像しただけで地獄のようなシチュエーションですね。自分のプレイヤーが下手だったらそれだけで生還は絶望的になります。
そんなデスゲームもですが、作中で描かれる「ソサエティ」というオンラインゲームも相当悪趣味です。
「自分のアバターを操って他のアバターたちと好きにコミュニケーションをとれる」というこのゲームですが、操られるアバターは「俳優」として身体を操作される本物の人間です。
身体の自由を奪われて、操作主の気まぐれでアホみたいな恰好や恥ずかしいプレイ、痛いことまで何でもさせられるという人権完全無視の仕事。まぎれもなくディストピアですね。
ディストピア世界での禁断の恋:ロスト・エモーション
争いのもとになる感情を薬で抑制して暮らすようになった近未来社会…と、先に紹介した「リベリオン」とそっくりな設定の作品です。
ですがこちらはアクション要素はなく、禁じられた「恋」という感情に目覚めてしまった男女のストーリーを静かに描いたラブロマンス色の強い内容になってます。
ハリウッドの若手人気俳優ニコラス・ホルトとクリステン・スチュワートの、徹底的に抑揚を抑えたガラスのように繊細な演技が注目ポイントです。
全体的に白一色の、不気味なほど清潔な映像美が未来社会の無機質な冷たさを表現していて惹きこまれます。
ほぼ全編が日本ロケで、建築家・安藤忠雄さんのデザインした建物で撮影されてるのも見どころです。
ディストピア×ジュブナイル物語:ギヴァー 記憶を注ぐ者
「感情を抑制された近未来」系の映画3発目。こちらでは戦争や争い、欲といった概念の「記憶」自体が封印されているという世界が描かれます。誰も「戦争」という概念そのものを知らないという世界です。
主人公はそんな社会の中で唯一過去の歴史の記憶を持つ「レシーヴァー」という役割を担うことになった青年です。
彼が人類の過去を知るにつれて感情が芽生えて、それに合わせてモノクロだった映像にだんだん色味が与えられる演出が印象的でした。
原作が児童小説ということもあって、「ハリー・ポッター」 のようなジュブナイル色の強いSF映画になってます。
未来も希望もないディストピア:トゥモロー・ワールド
人類から「出産の能力」が失われて、新しい命がひとつも生まれなくなった近未来のお話です。
次世代に受け継ぐ未来も希望もなくどんよりした重苦しい世界の中で、主人公はこの十数年間で唯一「子どもを出産した少女」に出会います。そして、人類の希望である少女を守っていくことになります。
この独特の世界観が秀逸なSFアクション映画です。ストーリーの間に挟まれるアクションシーンが印象的で、特に数分間ぶっ続けで主人公の動きを追う「超長回しワンカット」風の演出が凄まじい緊張感を演出してます。
身の毛もよだつディストピアの闇:アイランド
「怪我や病気をした人の四肢や臓器のスペア」として作られて育てられるクローン人間を描いたSFアクションです。
「外の世界は汚染されて人間は住めない」と教えられながら施設で生きるクローンたちの中で、自分たちが人体のスペアとして利用される運命を知ってしまった主人公の決死のサバイバルが描かれます。
監督が「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイということもあって、やたらと派手な爆発やカーアクションが多いのが特徴です。作中のシーンが「トランスフォーマー/ダークサイドムーン」に流用されたのでは……という盗作問題もありました。
「アベンジャーズ」シリーズのブラックウィドウ役で有名なスカーレット・ヨハンソンが、まだ今ほどは有名じゃなかった頃に出演してたりするのも見どころ。
おバカすぎてディストピア:26世紀青年
21世紀に軍の冷凍睡眠実験に参加したごく平凡な青年が5世紀後に目覚めると、人類全体の知能がめちゃくちゃ低下してアホばかりの世界になっていた、というSFコメディです。
周りがみんなアホなので相対的に主人公は「天才の救世主」として崇められて、平凡な知識や思考力を駆使して大統領として世界を立て直していくことになります。
全体的にB級テイストが強くて、内容もえげつない下ネタや、薬キメながら脚本書いたのかと言いたくなるようなばかげたジョークで埋め尽くされてます。
かなり好き嫌いが分かれる作品ですが、こういうアメリカンなコメディを受け入れられる人にとっては爆笑間違いなしです。僕はまあまあ好きです。
ろくでもない邦題はこの映画のせいじゃないからスルーしてあげて。
延滞の対価は命:レポゼッション・メン
機械式の人工臓器が普及した未来社会で、臓器のローン支払いをできなくなった滞納者から強制的に臓器を回収する「回収人」の主人公を描いたSFアクション映画。ジュード・ロウが主演です。
回収人の仕事は「滞納者をスタンガンで眠らせて、強制的に腹をかっさばいて臓器を取り出す」というかなりえげつないやり方。ターゲットになるのが「保険会社に騙された善良な人々」だという点は、現代アメリカのブラックな医療保険事情を皮肉ってるみたいでした。
現代社会の延長線上にリアルにありそうなディストピア描写で、色々と悪趣味なのに一周まわってそれがシュールで笑えたりもします。
「列車の中でディストピア」という異色作:スノー・ピアサー
氷河期のようになって文明が崩壊した世界で、「エンジンを炊いて走り続ける」ことで凍結を防いでいる列車とそこで生きる人々を描いたSFサバイバルアクションです。
列車は線路が世界を一周してグルグル回り続けられるようになっていて、「前列の車両=富裕層/後列の車両=貧困層」というこの手の映画ではお決まりの格差社会が作られています。
どう考えても「こんな狭い列車内でそんな社会作って自給自足とか無理だろ」と思ってしまうスケール感不足がありますが、列車が舞台という独創的な発想や、泥臭いディストピア描写はSF映画好きなら一見の価値ありです。
ディストピア世界の映像が秀逸:エリジウム
「第9地区」や「チャッピー」のニール・ブロムカンプ監督、マット・デイモン主演のアクション映画です。
人類が「荒廃した地球で暮らす貧困層」と「綺麗で豊かな宇宙ステーションで暮らす富裕層」に分かれた未来社会で、放射能に侵されて余命わずかの主人公が医療手段を求めて宇宙ステーションを目指すストーリーが描かれます。
荒廃してさびれた地球の描写ややたらとえげつないアクション描写、オリジナリティあふれるロボットやメカニックの描写など、映像面で見どころが多い作品です。
まとめ
以上、ド派手なアクションから馬鹿馬鹿しいコメディまで、ハリウッド大作からB級作品まで、おすすめのディストピア近未来映画を紹介しました。
映像が印象的だったり世界観やストーリーが光っているものばかりなので、ぜひ一度観てみてください。
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