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【レビュー】「ブラック・サマー: Zネーション外伝」はゾンビ史に残る大傑作かもしれない

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2019年4月11日よりNetflixで配信が始まったドラマ「ブラック・サマー: Zネーション外伝」

タイトルからも分かるように、人気ゾンビドラマ「Zネーション」のスピンオフとなるこの作品。まだゾンビウイルスが蔓延する前の、アメリカが崩壊していく様が描かれます。

原作となる「Zネーション」がかなりクセのあるB級ホラーとして話題を集めたので「そのスピンオフってどんな感じになるんだ…?」と思って観てみると、これが予想以上に凄い。

もしかしたら、ゾンビ映画・ゾンビドラマの歴史に残る大傑作かもしれません。

 

※配信開始されたシーズン2のレビューはこちら↓

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「ブラック・サマー: Zネーション外伝」

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2019年 アメリカ

原作・制作:カール・シェイファー、ジョン・ハイアムズ

キャスト:グウィニス・ウォルシュ、スタッフォード・ペリー、ムスタファ・アラブシ

 

ストーリーは、アメリカのとある郊外の住宅地から始まります。

事態はちょうどゾンビウイルス感染が全国的に浸透し、住民の混乱を政府が統制しきれなくなってきた頃。まだゾンビよりは人間の方が多いくらいの時期です。

舞台となる郊外でも軍の主導で避難が始まりますが、ぽつりぽつりと感染が発生して秩序が崩壊。生存者たちは各自の努力で生き延びないといけなくなり、物資や車を巡って人間同士の争いもはじまります。

そんな混乱の中、メインとなる生存者たちがどうやって最初のパニックを逃げ延び、出会って、サバイバルをくり広げていくかがストーリーの軸になります。

 

「ゾンビ映画の序盤」が延々と続くようなストーリー

ゾンビ映画の序盤では「ゾンビウイルスの感染が爆発的に発生し、それまでの平和な日常が一気に崩壊していく」という流れが描かれるのが定番ですよね。

そして、この「ゾンビ映画序盤で世界が壊れていくシーン」がとくに好きだ、というホラーファンは多いはずです。
「ブラック・サマー: Zネーション外伝」では、数話をかけてこの「ゾンビ映画の序盤」のテンションが延々と続きます

はじめはまだギリギリ秩序が保たれていたのが、堤防が決壊するようにパニックが広まっていく冒頭は、リアルな恐怖とゾクッとする興奮を感じさせます。

 

ゾンビ映画ではそこから時系列が一気に「世界の崩壊後」まで飛ぶことが多いですが、このドラマでは崩壊の様子がリアルタイムで描かれていきます。

人々が逃げ惑い、一部の人は運よく生き残り、生存者たちが出会ってグループを作り、なんとかその日を生き延びようともがいていく。

絶望感が漂う中でも「死にたくない」という本能や「家族と再会したい」という希望に頼ってくり広げられるサバイバルは、ヒリヒリするような緊張感の連続です。

 

群像劇スタイルで見せるゾンビサバイバル

明確な「主人公」と呼べる人物がいないのも、「ブラック・サマー: Zネーション外伝」の特徴です。

第1話の冒頭はまさに「混沌」といえるめちゃくちゃっぷりで、家族や恋人同士、友人同士などの生存者たちが好き勝手に行動していきます。そんな中で、登場人物一人ひとりにスポットがあたり、彼らがそれぞれどうやって生き残ったかが描かれます。

そうやって生き抜いた登場人物たちは偶然出会ってグループで行動することになりますが、主要キャラの一人に見えた人物があっさり退場したり、意外な人物が意外な人柄や活躍を見せたりで、先の展開が予想できません。

「いかにもな主人公が他の生存者を率いて活躍する」というゾンビ映画のテンプレから外れた、いわゆる「群像劇」スタイルのストーリーも見どころのひとつです。

 

追記:「ゾンビパニック」作品としては史上最高の傑作だった

最終話まで観たので追記です。結論から言えば、「最初の期待を裏切らない凄まじい傑作」でした。

シリーズ全話を通して「時系列の空白なく、全ての登場人物たちの行動を追う」ことに異様なまでのこだわりが見えます。

それぞれの人がどう動いて、その結果何が起こり、最終的に誰が生き残ったか。従来の作品ではどうしても細かい部分がスキップされがちでしたが、「ブラック・サマー: Zネーション外伝」ではそんなサバイバルパニックの流れこそが最大のテーマになってます。

 

特に最終話「競技場」では、そんな作品コンセプトの表れ方が顕著です。

ワンカット長回しを多用したアクションシーンの連続で、ほとんどセリフもなく「サバイバル」と「パニック」が数十分にわたって描かれ続けます。

数十人の生存者たちがチームワークもクソもなく好き勝手に撃ちまくって逃げ惑う様は、まさに混沌の極みです。名前やセリフのあるキャラクターたちですらそんなパニックの中であっけなく死んでいくのは、かえってリアリティがありました。

「ゾンビ感染のパニックが起きて日常が崩壊し、ほとんどの人間がゾンビ化するなかで運のいい少数人が生き残るまで」をここまで克明に描く作品は、今後も生まれることはほとんどないんじゃないでしょうか。

「パニックホラー」の一点で観るなら、最高のゾンビ作品と言っても過言じゃありません。

 

まとめ

「Zネーションのスピンオフ」というかたちの「ブラック・サマー: Zネーション外伝」ですが、「リアルなゾンビパニックドラマ」としては、本家とは比べ物にならないほどの傑作です。

ゾンビ映画やゾンビドラマの中でも「秩序の崩壊」や「サバイバル」の要素が好きな人にとっては、たまらない内容じゃないでしょうか。

純粋なホラーパニックとして見たら、この世のゾンビ作品の中でも上位5本の指に入るクオリティです。Netflixの製作力の高さを実感させられました。

ゾンビ映画やゾンビドラマのファンなら、観ないと人生損です。

 

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