小説の中には、フィクションでありながら「実際に起きた出来事」という設定で描かれたものがあります。
その中でも「出来事の体験者にインタビューして、その内容をまとめた」という形式の小説は、登場人物たちの体験談からストーリーの全体像がだんだん見えてきて、想像力をかき立てられる面白さがあります。
そんな「インタビュー形式の小説」の中から、読みやすいおすすめの作品を紹介していきます。
『Q&A』/恩田陸
人気小説家の恩田陸さんの代表作のひとつ。とあるショッピングモールで起こったパニック事件の生存者に事情聴取が行われていき、それぞれの証言から恐ろしい事件の全体像が浮かび上がっていきます。
「死者数十名、なのにパニックの原因らしい原因が一向につかめない」という事件の不気味さにゾクゾクさせられて、事態が判明していく終盤では「そういうことか…」という、予想の斜め上の恐怖を突きつけられます。
読み始めたら真相が気になってどんどんページが進んでしまう、本格サスペンスホラーの傑作です。
『WORLD WAR Z』/マックス・ブルックス
「ゾンビウイルスの蔓延によるパニックを人類が乗り越えたあとの世界で、国連調査員の主人公が各地の生存者たちに体験を聞いていく」という設定のフェイクドキュメンタリー小説です。
じわじわと感染が広がって日常が壊れ、世界中でパニックが起きて文明が崩壊し、少数の生存者たちがゾンビに打ち勝って社会を復興させていく様子が描かれます。
語り手は政府の重要人物から軍の幹部、一兵士、ごく普通の主婦、貧困国の少年、老人などさまざまで、それぞれの人物の国もアメリカからヨーロッパ、中東、アジア、オセアニアなどバラバラです。
一部の国民を見捨てる厳しい決断を下す政治家、家族を連れて非合法な手段で国境を渡る父親、無茶な軍事作戦で疲弊する兵士、パニックを利用して荒稼ぎする詐欺師などその行動も十人十色で、世界規模の感染パニックが、ものすごい奥行きをもって描写されていきます。
ちなみにこの本、ブラッド・ピット主演で映画化もされてますが、ストーリーはほとんど別物です。
『永遠の0』/百田尚樹
太平洋戦争のゼロ戦パイロットたちの話を聞きなから、凄腕パイロットだった祖父の実像を追っていく青年を描いた戦争ヒューマンドラマです。映画化もされて大ヒットしたので、知ってる人も多いんじゃないでしょうか。
映画では大幅に削られてますが、小説では「パイロットとしての祖父を知る戦友たちの語り」の部分がかなりの割合を占めていて、戦時中の空気感まで伝わるような臨場感のある描写が特徴です。
インタビュー形式の内容も合わさって、フィクションながら生々しい戦争の実像を見せてくれる名作です。
まとめ
サスペンス、ホラー、戦争とテーマはさまざまですが、どの作品も「インタビュー形式」という作風を最大限に活かして、自分も登場人物たちの目線に立ってるかのようなリアリティを感じさせてくれます。
一風変わった展開の小説を読みたいとき、臨場感のある小説を読みたいときは、手に取ってみてください。