怠惰ウォンテッド

映画とアニメとラノベのレビュー 怠惰に平和に暮らしたいだけ

「リディバイダー」感想・評価 "一人称視点"にこだわり過ぎたのが敗因(ネタバレあり)

リディバイダー(字幕版)

VRゲームの流行なんかも関係してるのか、ここ最近「一人称視点」スタイルの映画が増えてきました。

この手の映画はまるでFPSゲームのような臨場感が最大の見どころですが、そんな一人称視点にこだわり過ぎるあまり失敗した感があるのが、SFアクション映画「リディバイダー」です。

ド派手なCGによる破壊描写はしっかりと見ごたえあり。何より主演が「美女と野獣」の野獣役を演じたダン・スティーヴンスということでけっこうな大作のはずですが、悪い意味でB級感が漂いすぎています。

作りはそれなりにちゃんとしてるのになぜ面白くないのか、レビューします。

 

「リディバイダー」あらすじ

www.youtube.com

2017年 アメリカ、オランダ

監督:ティム・スミット

キャスト:ダン・スティーヴンス、 ベレニス・マーロウ、 ティゴ・ヘルナント

 

地球の資源が枯渇しつつある近未来。エネルギー問題を解決するための手段として地球を「複製」し、もうひとつの地球「エコーワールド」から資源を集める、という計画が実行される。

しかし、エコーワールドと地球をつなぐタワーに異常が発生し、世界中で異常現象が勃発。元NASAのパイロット・ウィル(ダン・スティーヴンス)は異常の謎を探り、地球を救うためにエコーワールドへと向かう。

ところがそこには複製されないはずの人間たちが存在し、ドローンが人々を襲撃する光景があった……

 

感想

「一人称視点」の制約に振り回されたアクション描写

この「リディバイダー」、SF映画としてのビジュアルは決して悪くありません。

CGは十分ハリウッド大作レベルで、派手な銃撃戦や爆発シーンなども満載。ドローンが飛びかう光景はいかにも近未来で、映像的には良作レベルです。

にもかかわらず、なんでこんなに面白くないのか。その最大の要因が、「一人称視点」にこだわり過ぎた点にあると思います。

「エコーワールド」に潜入したウィルの行動は常に一人称視点で描かれていて、まるでゲームを観ているような臨場感が感じられます。最初は。

ところが、話が進むほどに、この「一人称視点」が足枷になってしまってるんですよね…

最初は「よく撮ったなあ」と感心したり、「視界にモニターやメッセージが出てくるの近未来っぽいなあ」と盛り上がれるんですが、映像のインパクトに慣れてしまうと「一人称視点」そのものには魅力を感じません。

それどころか、アクションシーンで登場人物たちがどう見ても現実ならあり得ない立ち回りをしてるのがリアリティを損なっていきます。

ウィルの視界(画面)に映るためにわざわざ遮蔽物から飛び出したり、撃たれるのがウィルの視界(画面)によく見えるようにやたら棒立ちだったり。

そのせいでどのキャストも「お芝居してますよー」感が強すぎて、キャラクターが死んでます。

同じ一人称アクション映画の「ハードコア」はどのアクションシーンも計算され尽くしていて「絶対に一人称を活かしてやる」という作り手の気概が感じられたんですが、この「リディバイダー」は逆に一人称視点に振り回され過ぎです。

ハードコア(字幕版)

ハードコア(字幕版)

 

 

「主人公の目線」に縛られることによる世界観の狭さ

一人称視点のもうひとつの弊害として、「ストーリーが主人公の目線に固定されるせいで、世界観が狭くなりがち」という点があります。

この「リディバイダー」では、そっちの弊害もしっかり出ちゃってる感じがしました。

一応は世界の崩壊を巡る壮大な戦いのはずなのに、メインの登場人物は主人公のウィルと「エコーワールド」を作った企業の上司、同僚の数人だけ。

この数人とその他エキストラだけで話を回しちゃってるせいで、世界観の幅がせいぜいひとつの街角の範囲内に収まってしまってます。

さらに、基本的には「映画の尺=ストーリーの時間」というリアルタイム進行のせいで、ウィルたちが「エコーワールド」実験の施設の周りをウロウロしてるだけの印象しかないんですよね。

その中に練りこめる人間ドラマ要素もたかが知れてて、とってつけたような家族愛や人間の欲望の描写が、深みも何もないチープな演出になってます。

結果的に、ストーリー面でもちょっと褒められない出来です。

 

まとめ:ワンアイデアの出オチ感が強い凡作

元々は10分くらいのショートムービーを原案に始まった映画だそうで、そのワンアイデアに頼り過ぎてよく練らずに作っちゃった感がすごいです。

一人称視点のアクション映画としては演出が作り込み不足、SF映画としては世界観を広げきれず、ひとつの物語としては浅すぎる。「おおっ!」とワクワクさせられたのは冒頭の一人称視点のインパクトくらいで、アイデアを活かしきれなかった出オチ作品になっちゃってます。

時間は90分ほどでサクッと観られますが、「ものすごく暇だから珍しいSF映画が観たい!」という人くらいにしかおすすめできません。

リディバイダー(字幕版)

リディバイダー(字幕版)