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「サクラメント 死の楽園」感想・評価 行き過ぎない演出だからこそリアルな恐怖がある(ネタバレあり)

サクラメント 死の楽園(字幕版)

ゴア映画の名手イーライ・ロスが製作スタッフにいて、題材が「閉鎖的な島で暮らすカルト教団への潜入」ということもあり、ホラー映画ファンからけっこうな注目を集めた「サクラメント 死の楽園」。

ところが、ふたを開けてみれば内容は真っ当で地味なサスペンススリラーということで、評価的にはいまいちだったようで。

僕も観おわったあとはそこまでインパクトはなかったんですが、なぜか後からじわじわと気持ち悪く感じる印象が沸いてきました。

なんというか「ずっと追いかけられて逃げ惑う悪夢」を見たあとのような映画です。詳しくレビューします。

 

「サクラメント 死の楽園」あらすじ

www.youtube.com

2013年 アメリカ

監督:タイ・ウェスト

出演:AJ・ボーウェン、ジョー・スワンバーグ、エイミー・サイメッツ、ジーン・ジョーンズ

 

過激なドキュメンタリーを制作するVICE社のサムは、カルト教団の信者になった妹から奇妙な手紙を受け取ったという男性パトリックとともに、教団の信者たちが暮らす孤島へと取材に向かう。

「エデン教区」と呼ばれる島では信者たちが教祖「ファーザー」のもとで穏やかに暮らしており、一見すると平和な世界が広がっていた。

ところが、次第にエデン教区の裏に隠された真実が明らかになり、ファーザーと信者たちの狂気の暴走が始まるのだった。

 

「サクラメント 死の楽園」感想

地味だからこそ現実味のある島の描写

この「サクラメント 死の楽園」、パニックホラーとして観るとぶっちゃけ地味です。

極端にグロテスクな描写があるわけでも驚きのどんでん返しがあるわけでもなく、「一見平和なカルト教団の島には暴力や洗脳支配がはびこっており、最後には教祖を筆頭に狂気の集団虐殺と集団自殺が起こる」という、この手の映画ではまあ予想通りの展開がくり広げられます。

ですが、その「予想通り」っぷりが逆にリアルです。変にオカルト方面に走ったりインパクト重視のグロ展開に行かず、現実に起こり得る範囲内で惨劇が広がっていくのが生々しい。胸糞の悪い事件のニュースを見た後のような後味があります。

さらに、演出面の目玉であるPOV方式もそんな生々しさに拍車をかけていて、「ショッキングな内容を含むため視聴にはご注意ください」と前置きされた報道映像みたいな質感が不気味です。

 

基になった実話の後味が悪すぎる

僕はこの映画を観た後で知りましたが、ストーリーの題材には「人民寺院」というカルト教団が実際に信者たちの村を作って集団自殺した事件があるんですね。

亡くなった人数は約900人で、アメリカ国民が犠牲になった事件としては「9.11」以前では最大の死者数だったとか。

事件の詳細を知ると「サクラメント 死の楽園」がいかにこの惨劇をリアルに再現してるかが分かって、映画のフェイクドキュメンタリーとしての完成度の高さが感じられます。実際にほぼ同じ内容の事件があったと知ることで、映画の現実味も増して後味の悪さが大きくなりました。

 

まとめ:題材の事件とセットで味わうと恐怖倍増

「イーライ・ロス製作」という売り文句からショッキングで残虐なホラーを期待すると肩透かしを食らいますが、「大量虐殺事件のドキュメンタリー風作品」として観ると、あえて抑えた演出が生々しくて観おわった後の不快感を増します。

さらに、その内容が実際に起きた惨劇に沿ってると知ると、気持ち悪さやインパクトも倍増です。

パンチの効いたホラーではなく、不穏で不気味なサスペンスとして楽しめる良作でした。

サクラメント 死の楽園(字幕版)
 

 

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