映画でよく「低予算映画なのに大ヒット!」や「莫大な制作費の超大作!」のような宣伝を見かけると思います。
ですが、実際に映画の制作費の相場はどのくらいで、どこから「低予算」でどこから「大作」なのかを知っている人は少ないんじゃないでしょうか。
そこで、制作費ごとの映画の規模を紹介・解説していきます。
制作費1億円以下:邦画でもハリウッドでも「低予算」扱い
映画の制作費でまず最初のラインになるのが「1億円」です。このラインを超えるか下回るかで、邦画もハリウッド映画も規模が変わります。
基本的に、邦画でも「制作費1億円以下」は低予算扱いになります。
具体的な例で言うと、「リアル鬼ごっこ」1作目が1億円、「モテキ」が6000万円くらいだそうです。
「(メジャークラスの)邦画の平均予算は3.5億円」という話もあるので、「制作費数千万円」という規模は完全なB級とは言わないまでも、商業作品としてはマイナー寄りの映画に多い金額と言えます。
ここからさらに下がって「制作費数百万円~数十万円」になると、自主制作レベルの規模になります(「カメラを止めるな!」が300万円でしたね)。
一方で、ハリウッドの映画制作費は邦画より一桁くらい上がるのが基本です。
億単位が当たり前なので、1億円を切るというのはただ低予算な映画というより、インディーズ映画などの特殊な例になります。
ハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」や「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の監督を務めたギャレス・エドワース監督の出世作に「モンスターズ/地球外生命体」というSF映画があるんですが、これが制作費5000万円。これでも「あり得ない超低予算で予想外のヒット!」と騒がれました。
ハリウッドで制作費1億円以下というと「マジか!」と驚愕されるレベルと言えます。
制作費1億円~10億円:邦画なら「普通」ハリウッドなら「超低予算」
制作費が1億円を超えると、邦画としてはまあまあの規模の作品になります。
「邦画の平均予算は3.5億円」とありましたが、テレビでそこそこCMが流れて大規模に劇場公開されるメジャーな映画がこのくらいの制作費の映画です。
具体的には、漫画原作のティーン向けラブコメ映画とか、派手な映像より物語がメインのヒューマンドラマとかコメディとかが3~6億くらい。
一方で、ハリウッドでは制作費が10億円以下ならまだまだ「超低予算」扱いです。
例えば、「アイデアで勝利した低予算スリラー」という扱いの「ソウ」1作目でも制作費1億円以上。
他にも、アイデア勝負のイロモノ映画やホラー映画なんかに多い制作費で、「うまくやれば数億円の制作費で興行収入数十億を稼げる」というコスパのいいラインだそうです。
数億円を「超低予算」と言えるあたり、ハリウッドの資金力が感じられます。
制作費10億円~30億円:邦画なら「大作」ハリウッドならまだ「低予算」
制作費が10億円を超えると、邦画としては「大作」と言えるレベルになってきます。
「シン・ゴジラ」が15億円くらい、「永遠の0」が20億弱、「20世紀少年」が3作あわせて60億くらいだそうです。
一般的に「興行収入が制作費の3倍」が損益分岐点と言われていて、日本での映画の興行収入が「50億超え=年に数本レベルの大ヒット」ということを考えると、邦画の制作費は20億円くらいが物理的な限度になります。
一方で、ハリウッドではこの規模でもまだまだ「制作費ちょっと少ないですね」レベルです。
リーアム・ニーソン主演のアクション映画「96時間」は25億円以上だけど低予算扱いだし、人気コメディシリーズの1作目「ハングオーバー!」も30億円をちょっと超えてるけどまだ低予算扱いでした。日本とは文字通り「桁違い」ですね。
制作費30億円~100億円:ハリウッドなら「中堅・普通」クラス
制作費が30億円を超えてくると、やっとハリウッドのメジャー作品では「中堅・普通」と言わるレベルになります。
あのクマのぬいぐるみの「テッド」が50~60億円、ジム・キャリー主演の「イエスマン」が70億円以上。
有名スターが出演したコメディやヒューマンドラマ、そこまで大作扱いじゃないアクション映画なんかがこのくらいの制作費です。
制作費70億円や80億円の映画もハリウッドではゴロゴロ作られますが、この規模の作品でも場合によっては日本では公開すらされずDVDスルーされたりするので、ハリウッドがどれだけ巨大な映画界なのかよく分かります。
ちなみに、邦画の実写映画でこのレベルの作品はほぼ皆無ですが、例外として「ジブリ映画」だけは数十億円規模の作品もあります。それだけヒットが見込めるってことですね。
制作費100億円~:ハリウッドでも「大作」レベルに
制作費が100億円を超えたら、やっとハリウッドでも大作レベルです。
「デッドプール2」が110億円以上、「トランスフォーマー」1作目が150億円以上、あの「アバター」は250億円近い制作費がかかってます。邦画大作が10本以上撮れますね。
これだけのお金を使えるのも、世界中で公開して興行収入1000億とかを現実的に狙えるハリウッド映画ならではです。
ちなみに、邦画でも制作費150億円をかけた大作「ファイナルファンタジー」がありましたが、歴史に残るほどの大赤字を記録して終わりました。
この超赤字で「ファイナルファンタジー」を作ってきたスクウェアの経営が傾き、潰れないために現「スクウェア・エニックス」に合併されたとも言われてます。
まとめ:ハリウッドの資金力やべえ
邦画とハリウッド映画それぞれで映画の制作費を紹介しました。僕たちが普段観てる映画を1本作るのにどのくらいのお金がかかっているか、なんとなく感覚をつかんでもらえたんじゃないでしょうか。
こうして比べると、やっぱりハリウッドの資金力って凄まじいですね。日本はもちろんですが、日本とそんなに変わらない市場規模のヨーロッパ各国や韓国でもとてもかないません。
例外として、最近は中国映画界がハリウッド並みの大作を連発してるので、今後が楽しみですが。
「制作費」というちょっとマニアックな部分に着目して映画を観てみるのも、作り手の頑張りや映画作りの裏側が想像できてけっこう楽しいです。