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「ドーン・オブ・ザ・デッド」感想・評価 走るゾンビの原点であり頂点(ネタバレあり)

ドーン・オブ・ザ・デッド (字幕版)

今では当たり前になった「走るゾンビ」も、出てきた当初は「ゾンビはノロノロ歩いてなんぼじゃろ!」という声もあったりして、賛否両論でした。

そんな「全力疾走で走るゾンビ」というスタイルを知らしめたのが「ドーン・オブ・ザ・デッド」です。

一応これより前にも「走るゾンビ」を出す作品はあったんですが、認知を広めたという点ではこの「ドーン・オブ・ザ・デッド」こそが原点だと言えるでしょう。

そして、この作品を超える「走るゾンビ映画」は未だ出てきてないんじゃないでしょうか。詳しくレビューします。

 

「ドーン・オブ・ザ・デッド」あらすじ

2004年 アメリカ

監督:ザック・スナイダー

キャスト:サラ・ポーリー、ヴィング・レイムス、ジェイク・ウェバー、マイケル・ケリー、ケヴィン・ゼガーズ

 

郊外で夫のルイスと平穏に暮らす看護師のアナ。ある朝彼女が目覚めると、近所に住む少女が自宅に侵入し、いきなりルイスに食らいつく。

アナの救急手当の甲斐もなく死亡するルイスだったが、次の瞬間死んだはずの彼が起き上がり、奇声を上げながら襲いかかってくるのだった。

ルイスから逃れてなんとか家を脱出したアナは、狂暴化した人々と逃げ惑う人々によって、街が地獄絵図と化しているのを目の当たりにする。車で逃げ出したアナはやがてほかの生存者と出会い、近場のショッピングモールへと避難するが……

 

「ドーン・オブ・ザ・デッド」感想

「ゾンビ映画らしさ」と「ホラーアクション」のほどよいバランス

なんというか、「超王道100点満点」な作品です。これぞ「走るゾンビ映画」の正解って感じ。

原作はゾンビ映画というジャンルの基礎を築いた1978年の映画「ゾンビ」ですが、それをうまいこと現代的で新しいかたちに作り上げてますね。

 

古典的な名作を原作にしているだけあって、「ショッピングモールに立てこもる」というシチュエーションからサバイバルの描写まで、多くの人が想像する「ゾンビ映画」のスタイルをそのまんま体現してます。

平和な日常がいきなり崩壊して街にゾンビが溢れかえり、運よく生き残った少数の人々がサバイバルをくり広げ、新しく築いた安全地帯もささいなミスからまた崩れていく……王道から1ミリも離れない作風だからこそ、新時代のゾンビ映画の原点ともいえる完成度になってますね。

一方で、「ゾンビを走らせる」という当時としてはかなり大胆な試みによって、新感覚のホラーアクション映画としても一級品に仕上がっています。

ゾンビたちが血眼になって全力疾走してくる姿は、文句なしに「超怖い」んですよね。絶対にこの場に居たくないと思わせてくれます。

ノロノロゾンビのときは「ゾンビから逃げる」という行為の見どころはじわじわ追いつめられていく緊張感でしたが、ゾンビが走ることによって、これがジェットコースター的なハラハラドキドキに変わっててナイスです。

心臓に悪いシーンの連続で、アクション大作としても存分に楽しませてくれます。

 

ゾンビ映画らしいゴア描写もたっぷり

ド派手でスピーディーなアクションシーンには爽快感すら感じられる「ドーン・オブ・ザ・デッド」ですが、見るも無残なゴア描写もたっぷりあります。

ゾンビたちの血みどろ具合や腐敗具合はもちろん、「ゾンビ妊婦がゾンビ赤ちゃんを出産」とか、「チェーンソーで攻撃しようとしたら間違って仲間を両断」とか、心臓が弱い人なら気絶するんじゃないでしょうか。

どれも「みんなが楽しめるアクション大作!」というには厳しいエグさで、ゾンビ映画とは元々は悪趣味なB級ホラーだったということをしっかりと感じさせてくれますね。

ホラーアクションとしての豪快さとゴア描写の陰湿さを兼ね備えてるからこそ、「ゾンビ映画」らしい作品に仕上がってます。

 

終末世界ってちょっと楽しそうだよね

映画の中盤は生存者たちがショッピングモール内での日常シーンが続きますが、こういう「終末世界で生き残った人たちが好き勝手に過ごす」のって、なんか楽しそうに見えちゃいますよね。

「ショッピングモールの商品も設備も独占して遊び放題」って、ちょっと憧れませんか?実際に、このときの登場人物たちはけっこう楽しそうで、館内で自転車乗り回したり映画を観たり、屋上からゾンビを狙撃して遊んだり、やりたい放題です。

こういうだらしなさ・みっともなさに「大量消費社会への皮肉」という原作のテーマも受け継がれてる感じがします。

 

まとめ:ゾンビ映画の歴史の転換点

今でも「走るゾンビなんて認めん!」というコアなファンの方は多くいますが、ゾンビ映画界の流れ的には、むしろ走るゾンビの方がメジャーになりつつありますね。

その骨組みを作り上げた原点はどこかと言われたら、やっぱりこの「ドーン・オブ・ザ・デッド」じゃないでしょうか。ストーリーも演出も作品全体の雰囲気も、全てに隙がない王道っぷりです。

1978年の「ゾンビ」がゾンビ映画の歴史の最初の25年を決定づけたとしたら、次の25年を決定づけたのは間違いなく「ドーン・オブ・ザ・デッド」でしょう。

ゾンビ映画というジャンルそのものの中で、大きな転換点を作った名作です。そしてひとつのホラーアクション映画としても、今観てもやっぱり超面白い。