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「ヘイトフル・エイト」感想 タランティーノ節全開の会話劇が魅力(ネタバレあり)

ヘイトフル・エイト(吹替版)

異色の名監督クエンティ・タランティーノの作品の魅力と言えば、CG演出を使わない徹底的にアナログで血みどろなアクションを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

それももちろんタランティーノ作品の見どころですが、もうひとつ大きな特徴が「会話シーン」です。「ヘイトフル・エイト」は、そんなタランティーノ節が全開のシュールな会話劇を存分に楽しめる作品に仕上がっています。詳しくレビューしていきます。

 

「ヘイトフル・エイト」あらすじ

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2015年 アメリカ

監督:クエンティン・タランティーノ

キャスト:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンズ、チャニング・テイタム

 

大雪が降るワイオミング州の山の中。黒人の賞金稼ぎウォーレンは通りがかった駅馬車に同乗させてもらうが、そこには賞金首の女ドメルグと、彼女を護送する賞金稼ぎのジョン・ルースが乗っていた。

彼らとともに駅馬車に乗るウォーレンだったが、猛吹雪が迫り、一行は「ミニーの紳士服飾店」という山中の店で吹雪をしのぐことになる。そこには同じく吹雪で足止めを食らった男たちがおり、お互いをよく知らない8人がひとつ屋根の下で過ごすことになるのだった。

ところが、ひょんなことから屋内の空気は不穏さを増していき……

 

「ヘイトフル・エイト」感想

無駄に長いのに面白い会話シーン

最近は「イングロリアス・バスターズ」や「ジャンゴ 繋がれざるもの」のような大作アクション映画を撮ることが増えたタランティーノ監督。それと比べると、この「ヘイトフル・エイト」はひとつの建物内の出来事をテーマにしたコンパクトな作品です。

制作費もキャストの人数も控えめですが、その分タランティーノ作品の大きな持ち味である「やたらめったらに長い会話シーン」が前面に押し出されてスパイスをがっつり効かせてます。本作ではこの「会話劇」こそが最大の見どころと言えるでしょう。

なにせ全体で167分もあって、半分以上が会話劇です。しかもストーリーの内容的には「賞金首の女盗賊を巡った男たちの戦い」だけ。ぶっちゃけ本筋にまったく関わりのない無駄な会話のオンパレード。

それなのに、その無駄に長い会話劇がやたらと面白くて惹き込まれるからタランティーノは凄いですね。絶妙な間の持ち方や言葉選びのひとつひとつがこちらの脳を刺激して退屈させません。

使われる言葉も当時のアメリカらしく差別用語や下品なジョークのオンパレードで、モラルなんてク〇食らえな勢い。それなのにセンスを感じさせられて、逆にユーモアたっぷりで上品な感じすらしてくるから凄まじいです。

「冗長な会話シーン」がタランティーノ節全開のシュールでブラックなユーモアを帯びることで、「ボリュームたっぷりのスリリングな会話劇」に仕上がってます。

 

血糊ドバドバの撃ち合いもしっかり

他のタランティーノ作品と比べて控えめとはいえ、血みどろでアグレッシブな戦闘シーンももちろんあります。

登場人物が少ない分一人ひとりの死亡シーンにフォーカスが当たっていて、描写のインパクト的にも他の作品に負けてません。CGを使わずマネキンと血糊を多用するからこその、どこの90年代だと言いたくなる無駄に血の多い銃撃シーンはさすがです。

拳銃で撃たれただけで頭が弾け飛ぶわけないとか人間が後ろにふっ飛ぶわけないとかツッコミどころは満載ですが、そういう過剰なゴア描写で戦闘シーンすらブラックユーモアに包まれるのがタランティーノ作品の真骨頂でしょう。

特に人気ハリウッドスターのチャニング・テイタムが登場したと思ったらほんのちょこっとの出演時間で後頭部ぶち抜かれて退場するシーンは爆笑です。出演料高くてあんまり拘束できなかったのかな。

 

まとめ:タランティーノらしさをギュッと詰め込んだ怪作

他のタランティーノ作品と比べるとちょっと地味な扱いになってますが、目に見えて派手なアクション路線ではなく、シュールさとブラックさのさじ加減が絶妙なサスペンスコメディとしてのクエンティ・タランティーノ映画を表したような一作に仕上がってます。

ある意味めちゃくちゃ「タランティーノらしさ」が色濃く含まれた映画と言えるんじゃないでしょうか。「密室に閉じ込められた男たちのせめぎ合い」というミステリーっぽい題材とは裏腹にインモラルで過激なストーリーが展開される、さすがの怪作でした。

ヘイトフル・エイト(吹替版)