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「男なら一国一城の主を目指さなきゃね」は最強の異世界転生なろう小説だと思う【感想・レビュー】

男なら一国一城の主を目指さなきゃね (カドカワBOOKS)

最近アニメ化でも話題を集めている「異世界転生もの」。

Web小説サイト「小説家になろう」などを中心に一大人気ジャンルとして栄えている異世界転生小説ですが、「事故などで死んだ主人公が特殊な能力を授かって異世界に転生する」というテンプレがあるからこそ、個性を出すのが難しいジャンルでもあります。

そんな中で僕が個人的に最強だと思ってるのが、「男なら一国一城の主を目指さなきゃね」という作品です。

なぜこの作品が最強の異世界転生なろう小説だと思うのか、レビューしていきます。

 

王道の異世界転生+徹底的な世界観作り

「男なら一国一城の主を目指さなきゃね」は、電車の脱線事故によって死亡した数十人がファンタジー世界に転生するという、いわゆる「集団転生」系の作品です。

主人公は元自衛官の商社マンで、田舎の弱小貴族の末っ子に転生して赤ん坊から人生をやり直すことになります。

判断力や分析力に優れた聡明な主人公は成長の過程で「魔法」などの特殊能力の仕組みを把握していき、常人離れした成長を見せてタイトル通り「自分の国を興す」ことを本気で目指していく…という話です。

内容は王道の「成り上がりもの」。ですが、その王道ストーリーを支える「世界観」の徹底した作り込が半端じゃありません。

文明レベルや王族を頂点にした社会構造、経済規模、過去数百年の歴史などの背景が絶対に揺るがないように作り込まれてます。

各都市の規模や人口、それぞれの距離、各国の広さ、貴族の人数と分布、人口に基づく軍隊の規模。ストーリーにほとんど関わりがないような町や村の配置まで設定にあるみたいで、主人公がどう動いたことで世界にどういう影響が出て、それがどういう形で表れるかまで矛盾がありません。

徹底的すぎるほどの世界観作りが土台にあるから、王道のストーリーが映えます。

 

主人公が「努力と知恵」で成り上がっていくのが最高

主人公の成り上がりが、異世界転生にありがちないわゆる「チートで楽して勝ちまくり」じゃないのも個人的に大好きなポイントです。

まず幼少期の時点で、思考力を活かして魔法を使う能力の仕組みに気づいた主人公が、自分を鍛え上げるために徹底的な「努力」を重ねます。それこそ幼少期の時間の全てを魔法の修練に使い込む勢いです。

その結果として主人公は人間離れした強さを手に入れるわけですが、「そりゃあ頭も使ってこれだけ努力すればそうなるだろう」と納得がいく過程がちゃんと描かれてます。

その後も主人公は、「自分を高めるためなら一日もサボらず休まず努力するのが当たり前」という思考で武術も魔法も体力も鍛え上げていきます。

イチローの野球の実力を見て「強すぎてずるい、チートじゃん」という人はいません。それと同じで、主人公が「国を興す」という目標に本気だからこそ常軌を逸した努力を重ねていき、その描写がしっかりとあるから「チート」感がありません。

さらにこの主人公、ものすごく頭の回転が速いです。とはいえ、あくまで「めっちゃ賢い人」の範囲内で。戦闘の重要な局面から王族への謁見での会話まで、常に最適な行動のために冷静に考えて動いていきます。

優秀な人が必死に頭を使って、さらに揺るぎない努力を重ねれば、常人離れした結果を残せるのも納得ですよね。

そんな「努力と知恵で成り上がる」ストーリーだからこそ、読んでいてニヤッとさせられる爽快な快進撃に仕上がってます。

 

書籍版は打ち切り?→Web版が「小説家になろう」で連載中

そんな魅力があって、硬派な王道の異世界転生小説として一定の人気を集めた「男なら一国一城の主を目指さなきゃね」は、書籍化もされています。ですが、残念ながら書籍版は4巻で打ち切りみたいです。ほんとにもったいない。

「小説家になろう」ではさらに続きが発表されてますが、書籍版4巻は序盤も序盤です。主人公が成り上がっていく過程の最初の助走部分でしかありません。

Web版は2019年7月の時点で610話以上。それでも主人公の成り上がりはまだまだ道の途中で、これからさらにどんな高みに上りつめていくのか楽しみすぎて今も待ちきれません。

今も毎週更新され続けてるので、これからも楽しめる、というかこれからさらに話が盛り上がっていく作品です。

 

まとめ:硬派で重厚な異世界転生が読みたいならこれで決まり

異世界転生ものに「主人公がとにかくチート能力で突き進む爽快でストレスフリーな物語」を求める方には、「男なら一国一城の主を目指さなきゃね」はあんまり向いてません。

硬派で重厚で、ややダークヒーロー寄りの容赦ない主人公の成り上がりを楽しみたい方におすすめです。名ばかり貴族でほぼ平民の主人公が、有名冒険者へ、そして国の重要人物へ、さらにその先の「王」という目標へ上りつめていく様を楽しみましょう。

4巻までしかありませんが、キャラや世界観のビジュアルを体感できる書籍版も買ってみてね。

男なら一国一城の主を目指さなきゃね (カドカワBOOKS)

男なら一国一城の主を目指さなきゃね (カドカワBOOKS)