「戦争映画」というと昔の名作を連想する方も多いでしょうが、今の映画界でも現在進行形で新たな名作が生まれています。
映像技術の進化もあって、本物の戦場のような迫力・緊張感を見せてくれる作品も多いです。
というわけで、今回はあえて「2010年代の新しい作品」に絞って、戦争映画の現代の名作を紹介します。
ハクソー・リッジ
「アメイジング・スパイダーマン」シリーズのアンドリュー・ガーフィールド主演で、太平洋戦争に実際に従軍した英雄的な衛生兵を描く壮大な戦争ヒューマンドラマ。
信仰上の理由で「武器を持たず戦場に立つ」という選択をした主人公の苦悩と献身がくり広げられます。
重厚なドラマはもちろん、「プライベート・ライアン」に並ぶと評された圧倒的な戦闘シーンが見どころで、目を覆いたくなる凄惨さが戦場のリアルを見せます。
ローン・サバイバー
アメリカ軍特殊部隊ネイビー・シールズの隊員が10人以上も死亡した悲劇的な史実「レッド・ウィング作戦」を描く戦争アクション。
マーク・ウォールバーグやテイラー・キッチュ、ベン・フォスターといった実力派俳優が敵地の奥深くに潜入する隊員を演じ、ささいな判断ミスが巻き起こす地獄のような死闘が展開されます。
たった4人で数百人のゲリラに追われながらの撤退戦シーンは息をつく暇のない緊張感で、それを救出に来たヘリがあっけなく爆破炎上しながら墜ちていくシーンの絶望感が印象的です。
「ローン・サバイバー」感想 ネイビーシールズだって数には負ける(ネタバレあり) - 怠惰ウォンテッド
ダンケルク
「インセプション」や「インターステラー」のクリストファー・ノーラン監督が贈る異色の戦争映画。第二次世界大戦の序盤、ナチスドイツ軍に海岸まで追い詰められた連合軍の脱出劇が描かれます。
戦争映画としては珍しく、人間ドラマや登場人物の心情描写をほぼ排した演出が最大の見どころ。淡々として一見すると味気ないシーンが、そもそも個人の心情なんて挟む余地のない戦場の緊迫感を体感させます。
ノーラン監督おなじみの低温的で無機質な色遣いが、冷たい灰色の戦場をするどく描き出した名作です。
戦火の馬
スティーブン・スピルバーグ監督作。まだ「軍馬」が一般的に使われていた第一次世界大戦を舞台に、「ジョーイ」と名づけられた一頭の馬の視点から戦争を描くという珍しい作品です。
軍に接収され、将校を乗せて戦場を駆け、敵に接収されたり逃亡に使われたり民間人に拾われたり荷運び馬になったりとさまざまな主人のもとを渡っていくジョーイ。「道具」として使われる馬の視点だからこそ分かる戦場のやるせなさが見どころです。
主演ともいえる馬くんの演技が凄くて、感情や表情の変化がしっかり感じられます。
リベリオン ワルシャワ大攻防戦
ナチスドイツ占領下のワルシャワで、一斉蜂起したレジスタンスたちの戦いを描くポーランド発の戦争大作。
あまりなじみのない「ポーランド映画」ですがその迫力はハリウッド顔負けで、かなり悲惨で血みどろな戦闘シーンがくり広げられます。
特に中盤の、車両爆弾で一気に吹き飛ばされた市民たちの血肉が雨のように降りそそぐシーンはトラウマが残るレベル。市民を巻き込む市街地戦の恐ろしさを生々しく感じさせます。
アメリカン・スナイパー
クリント・イーストウッド×ブラッドリー・クーパーによる名作。2010年代の戦争映画史を代表する作品のひとつでしょう。
「狙撃手」という孤高の立場で戦場に飲まれていく主人公の苦悩がひたすらシリアスに描かれて、戦争が人間の心理に与えるダメージの深さを教えてくれます。
「国のため」と信じて身も心も犠牲にしてきた人々の献身を讃える一方で、「英雄」という言葉の意味を考えさせる重い一作です。
ドローン・オブ・ウォー
ドローン(無人攻撃機)のパイロットの苦悩を描く現代ならではの戦争映画。主演は名俳優として多くの出演作を持つイーサン・ホークです。
家族と暮らすマイホームから基地に通い、はるかかなたの戦場の無人機を操作してボタンひとつで敵の命を奪う。という生活に心を蝕まれていく主人公の苦悩は、「戦争と日常の狭間で揺れる」という点では「アメリカン・スナイパー」とも共通する部分があります。
静かで地味ながら、ストーリーと心情描写に惹きこまれる良作です。
戦火の中へ
韓国発の戦争映画。朝鮮戦争でわずか70人ほどの韓国軍学徒兵が北朝鮮の大規模部隊に立ち向かう凄惨な史実を描いています。
まだあどけない子どもたちが戦場で命を散らしていく様がひたすら悲しくてやるせなくて、壮絶な戦闘描写も合わさって、あまり知られてこなかった朝鮮戦争の悲劇をまざまざと見せつける名作です。
主演はBIGBANGのメンバーT.O.P.ですが、真に迫るシリアスさで「アイドル俳優」などとはとても呼べない名演を見せてくれます。
ホース・ソルジャー
9.11テロのあと、アメリカ軍の最初の反撃として行われた攻撃作戦を描く戦争アクション映画。タリバンを相手に山岳地帯で立ち回るため、2001年の現代戦で「馬に乗って戦う」という選択をした特殊部隊の実話がもとになっています。
主演は「マイティ・ソー」でおなじみクリス・ヘムズワース。ストーリーの内容的にはドラマ性よりド派手なアクションがメインですが、騎馬兵たちによる異色のミリタリーアクション映画としてかなり楽しめます。
フューリー
ブラッド・ピット主演で、最近の戦争映画では珍しく「戦車兵」たちにスポットを当てた作品です。
他のキャストも「トランスフォーマー」シリーズのシャイア・ラブーフ、「パーシー・ジャクソン」シリーズのローガン・ラーマン、「ウォーキング・デッド」のジョン・バーンサル、色々出てるマイケル・ペーニャとかなり豪華。
ドラマ性やメッセージ性はわりとあっさり目ですが出演陣の名演が説得力を加えていて、何より手に汗握る戦車戦がかなり見ごたえがあります。
まとめ
以上、2010年代の個人的おすすめ戦争映画たちでした。
映像技術の進化でハリウッド以外の映画界からも大作クラスの作品がどんどん出てきてるから戦争史の描き方がかなり多角的になってたり、「戦車」とか「馬」とか今まであんまりなかった点にフォーカスをあてた作品が出てきたり、変化が感じられますね。
2020年代はどんな作品が出てくるんでしょうか。今から楽しみです。