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【Netflix】「上海要塞」感想・評価 観るのが苦痛なペラペラSF大迷作(ネタバレあり)

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最近どんどん勢いを増して世界進出を果たしている中国映画。なかにはハリウッド顔負けの超大作もあったりして、世界第2の経済大国として存在感を見せています。

そんな中国映画界の贈る最新のSF超大作として公開された「上海要塞」。いざ蓋を開けてみたら世紀の大爆死で、中国の映画ファンからも酷評の嵐が起こったそうで。

そんな(色んな意味で)話題の中国産SFアクション映画がNetflixに入ってきたので観てみましたが、大酷評も納得な迷作でした

詳しくレビューします。

 

「上海要塞」あらすじ

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2019年 中国

監督:タン・ファーハオ

キャスト:ルハン、スー・チー、シー・リアン、カオ・イーシャン

 

中国の宇宙船が持ち帰った新エネルギー「シエントン」によって人類の歴史が大きく変わり、さらに発展した近未来。宇宙からシエンントンを狙うエイリアンが襲来し、人類は激しい戦いを繰り広げていた。

世界各地の都市が壊滅する中、人類は上海を拠点に連合軍を結成。チアン・ヤンをはじめとした若いパイロットたちの活躍や、女性司令官リン・ランの奮闘もあり、上海はエイリアンの攻撃を食い止めて豊さを保っていた。

ところが、エイリアンの侵攻はさらに激しくなり、罠も張りめぐらされて……

 

「上海要塞」感想

誰を楽しませたいのか分からない迷走ストーリー

なんていうか、「ガッチャマン」とか「テラフォーマーズ」とかキムタク版「SPACE BATTLESHIP ヤマト」みたいな、日本の残念なSF大作をすごく連想させる映画です。

ハードSF映画を作りたいのかラブロマンス映画を作りたいのかタレント推しのアイドル映画を作りたいのか分かりません。誰を楽しませたいのか全く分からない。

派手でリアルな空中戦が出たと思ったらウルトラ警備隊みたいな司令センターが出てきて、青春映画みたいに若者たちがわちゃわちゃと恋愛関係を見せたりもして。

青春描写に時間をとられるせいでSF映画としてのストーリーはスッカスカ。世界規模の話なのにメイン登場人物の数人だけで話が回って、なぜ主人公たちが世界の命運を握るほど優秀なのか、他に何十万何百万といるはずの連合軍は何をやってるのか全然奥行きが見えません。

かといって、尺取りの青春描写は特に面白いわけでも深いわけでもなく、とってつけたような表面的なシーンに終始してるからまた救えません。

こってりラーメンに「女性・若者受けを狙って生クリームをたっぷりかけました」と言われたら誰もが正気を疑うのに、なんでSF映画にイチャイチャ恋愛要素をかけてグチャグチャに混ぜちゃうんですかね。

「流転の地球」という良作SF大作を自力で作り上げた国の作品とは思えません。

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映像のクオリティでも全然カバーしきれてない

この作品の唯一の評価点はエイリアンや連合軍兵器のCGと戦闘シーンですが、それですらストーリーや演出のヤバさを全然カバーしきれてません。

実際アクションやVFXはハリウッド並みのクオリティなんですが、その映像美で表現してるのがこの陳腐な物語だから面白く観れるわけなくて。

むしろ、ポップでチープで世界観の狭いストーリー描写に対して「違うんです!これは世界規模のSF大作なんです!」という言い訳のように派手な戦闘シーンがくり広げられると興ざめすらしてしまいます。

主人公たちの切り札の戦闘機も「これなら現代の戦闘機の方が強くない?」ってなるし、上海を壊滅させてまで撃った必殺兵器も「核ミサイルでいいじゃん」ってなるし、司令センターが壊滅する泣きのシーンも「そんな重要施設がそんな無防備なわけないでしょ」ってなるし。

映像の派手さを楽しむ前にあらゆる描写にツッコミが浮かんでしまって、冷めに冷めてしまいます。

 

映画がつまらないとプロパガンダもうざいんだね

中国は日本と違って色々と「自由じゃない国」なので、中国の大作映画では政府から公開OKをもらうために「国の素晴らしさをアピールする要素」がよく盛り込まれます。

世界観やストーリー、登場人物の信念など至るところから「中国はいい国です!」「これからの世界のリーダーは中国です!」という声が聴こえてきます。ですが、映画ファンとしては映画自体が面白ければいいよね~と全然スルーできました。

でもこの「上海要塞」は駄目です。ふつうにムカつくしうざい。上海が世界の中心になってる世界観とか、えらい人たちがすごく人格者だとか、いちいち「うっせえ!」と思わずにはいられません。

むしろ「スターシップ・トゥルーパーズ」的な、過剰に褒めちぎることで一周まわって馬鹿にしてるみたいになってるけど大丈夫なんでしょうか。いいんでしょうか。

 

まとめ:どうなる中国SF映画

ハリウッドでもその他の国でも、大作アクション映画の世界では「映像が派手だからって面白いわけじゃないよ」と言いたくなる作品がときどき出てきますが、「上海要塞」はその典型みたいな作品ですね。

「流転の地球」が世界のSF映画ファンからも評価されて歓迎されただけに、次に続く大作がこの体たらくなのはかなり痛い。

今のところ1勝1敗ですが、今後の中国SF映画が好転するのか落ちていくのか気になります。どうか迷走せず堅実に作っていってほしい。