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「ナチス第三の男」感想 伝記映画と呼ぶには掘り下げが浅い(ちょこっとネタバレ)

ナチス第三の男(字幕版)

ナチスドイツの大罪人として最も有名なのはやっぱりヒトラーですが、そこに並んで有名なのはヒトラーの側近であるゲッペルスや親衛隊トップのヒムラー、そしてホロコーストの主導者でもあった「ラインハルト・ハイドリヒ」でしょう。

そんなハイドリヒにフォーカスをあててその半生を描く映画「ナチス第三の男」は、歴史の重要な一局面をドイツ側の視点から伝える映画として注目されました。

僕も「ヒトラー ~最後の12日間~」みたいな重厚な伝記映画を期待して観てみましたが、その内容は…ちょっと「浅くね?」と思ってしまった。詳しくレビューします。

 

「ナチス第三の男」あらすじ

www.youtube.com

2017年 フランス・イギリス・ベルギー

監督: セドリック・ヒメネス

キャスト:ジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、ジャック・レイナー

 

ドイツ海軍を不名誉除隊となる苦痛を味わった青年ラインハルト・ハイドリヒは、のちの妻となる女性リナと出会い、彼女の影響でナチス党の理念にのめり込んでいく。

やがて彼はナチス親衛隊の情報部を任されてめざましい成果を上げていき、親衛隊においてナンバー2の幹部になっていくのだった。

1941年にチェコ人保護領であるベーメン・メーレン保護領の副総督に任命されたハイドリヒは、そこでも手腕を発揮していく。ところが、そんな彼の暗殺を狙うチェコスロバキアの特殊部隊が領内に潜入し、暗殺計画を進めていき…

 

「ナチス第三の男」感想

「ハイドリヒが何故ナチスのトップ層まで上りつめたのか」掴みづらい

ハイドリヒの伝記映画である「ナチス第三の男」ですが、観ていってもあんまりハイドリヒの内面や(仕事人間としての)優秀さが分からないんですよね。

大勢いるナチス親衛隊の中で何故ハイドリヒがずば抜けた出世を果たして、親衛隊のナンバー2にまで上りつめたのかが掴みづらいです。「奥さんと出会ってナチスにハマって入党して出世しました~」という流れが表面的な描写やふんわりした描写に終始してて、主人公であるはずのハイドリヒが印象に残りません。

おそらく彼の一人の人間としての彼を表現しようとして「奥さんの尻に敷かれる様子」「やたらと葛藤して不安定に激情する様子」が描かれますが、それがかえって悪手になってます。

本来のハイドリヒの評価とされてる「優秀だけど残忍で冷徹で無慈悲なエリート人間」というイメージが全然見えません。頭が良さそうに見えないんですよね。

さらに、主演のジェイソン・クラークがどちらかというとずんぐりむっくりな体系なのもマイナスイメージに拍車をかけます。ぶっちゃけ全然似てねえ。「高身長でスマートな人物」という人物像とも遠いんですよね。

 

 

後半はほとんどチェコスロバキア軍人たちが主役

ハイドリヒといえば「ナチス高官の中で唯一暗殺によって死亡した人物」としても有名で、その暗殺作戦「エンスラポイド作戦」も歴史ファンからはけっこう知られてますが、なんと後半ではその作戦描写がほとんどを占めるという。

暗殺に臨むチェコスロバキアの軍人や協力者たちがほとんど主人公みたいになってしまって、ハイドリヒの影がさらに薄くなってしまいます。

しかしさらに不幸なことに、この「エンスラポイド作戦」の描写の方がハイドリヒの半生を描く前半より圧倒的に面白いんですよね。ふつうにハラハラドキドキして観てしまった。

チェコ軍人役をジャック・オコンネル&ジャック・レイナーという若手注目株の実力派俳優が演じていて、彼らの方がジェイソン・クラークより圧倒的に華があります(そもそもクラークは名脇役タイプの俳優で主演向きじゃない)。

ハイドリヒがついに息絶えるシーンも、一生懸命カタルシスを感じさせようとしてるのは伝わりますが「ふーん…」と流してしまった。これじゃあ誰を描く作品なのか分かりません。

 

まとめ:せっかく作ったのにもったいない

前半と後半でテンションが違い過ぎるし、ハイドリヒの内面の掘り下げ方も通り一遍で済ませてしまってる感が強いしで、駄作とまではいいませんが「色々足りないなあ…」と思ってしまいました。

ていうか、エンスラポイド作戦の映画だったらちゃんと丸々一作使って描いた「ハイドリヒを撃て!」っていう作品がもうあるんだから、わざわざ「ナチス第三の男」でまたやらなくてもいいのに。

中途半端な作品になるって想像できただろうに、なんでエンスラポイド作戦のくだりを後半丸々持ってきてしまったんでしょうか。せっかくハイドリヒの伝記映画として作ったのにもったいないなあ…

ナチス第三の男(字幕版)

ナチス第三の男(字幕版)