Netflixオリジナル映画といえば「そこそこ良作揃いだけど中途半端なクオリティの作品も多い」というイメージじゃないでしょうか。
個人的にはそれに加えて「ストーリーがあっさり薄味なのを、映像美と演出でうまいこと補って及第点に仕上げてる」ような作品が多い印象です。
そんな中でこの「月影の下で」は、なかなか濃密な良作として楽しめました。SFやサスペンスが好きな方なら、一見の価値ありです。詳しくレビューします。
「月影の下で」あらすじ
2019年 アメリカ
監督:ジム・ミックル
キャスト:ボイド・ホルブルック、クレオパトラ・コールマン、マイケル・C・ホール、ボキーム・ウッドバイン
1998年のフィラデルフィア。警察官のトーマスは、離れた場所で複数の市民が突然顔から出血して死亡するという奇妙な連続殺人事件に遭遇する。
捜査をするうちに女性容疑者を発見したトーマスは彼女を追うが、地下鉄に追い詰めて確保しようとしたところで不運にも死亡させてしまうのだった。
ところが、それから9年後に再び同じような事件が起こり、さらに死んだはずの容疑者が再び目撃されて……
「月影の下で」感想
やや使い古されたSF的ストーリーへの「+α」が光る
「未来からタイムスリップしてきた人間が過去の人間を殺して歴史を変えようとする」というのは、SF的ストーリーとしてはやや使い古された感がありますね。
超有名どころだと「ターミネーター」シリーズが思い浮かぶし、この「月影の下で」のストーリー(とある組織の重要人物になるであろう人間たちを抹殺していく、という展開)はまさに「ターミネーター3」です。
そのままだと「ああ、その手のやつね」で終わってしまうこの題材に、ちょっとした「+α」を加えることで面白味を増していたのが、本作の光るポイントでしょう。
まず、作品全体のテイストが「刑事サスペンス」に仕上がってたのが面白かったです。クライム映画としてのスリルがSF映画としてのストーリー性とうまくマッチして、そのままだとそれぞれのジャンルで古臭くなりかねない内容に、いい感じに新鮮味を与えてました。
さらに、そこに「親から子、孫へと続く絆」というしっかりしたヒューマンドラマ要素を簡潔かつ濃厚に組み込んでたのも上手かったですね。
タイムパラドックスものとしても「犯人は未来から来ていた!」というひとつのどんでん返しにもういっこ「しかもそいつは主人公の孫だった!」という驚きを加えたのがナイスで、それを「妻から娘へと受け継がれているブレスレット」というかたちで明かすのも粋な演出で好きでした。
実績あるキャストの存在感もナイス
主演のボイド・ホルブルックといえば最近は「ザ・プレデター」の主演で話題になったイケメン俳優ですが、アイドル俳優・アクション俳優的な人気だけでなく、しっかり演技もできることを本作で見せてくれました。
一人の男の青年期から壮年期までを、「暗い人生を歩む」ことで重ねられたバックグラウンドも滲ませながら演じ上げてたのが印象的です。彼の演技力のおかげで映画としての魅力がひとまわり増してたんじゃないでしょうか。
あと、彼の義理の兄を演じたマイケル・C・ホールも良かった。「わだかまりもあるけど、親戚としては決して悪い人じゃない」という独特のポジションがいい味出してました。
映像的な見どころは控えめ
あくまでストーリーがメインの「月影の下で」ですが、個人的にはもうちょっと映像的な見どころも欲しかったなーと思いました。
特に冒頭の未来での爆破テロ事件とか、どんな規模でどれほど悲惨なものだったのかが視覚的にもっと分かりやすかったら作品自体のインパクトも強くなったと思います。
たぶんかなりの低予算作品だったんでしょうね。それでも作品としては安っぽさを微塵も感じさせないのはさすがNetflixですが。
まとめ:小粒ながら手堅く仕上がった良作
一歩ひねったストーリーと丁寧な演出・映像で見せるSFサスペンス/刑事サスペンスとして、小粒ながら手堅いクオリティに仕上げられた良作でした。
Netflixオリジナルだと「エクスティンクション 地球奪還」とか「ARQ: 時の牢獄」とかと同じ匂いを感じましたね。
こういう掘り出し物の隠れた良作があるからNetflixは好きです。