スティーヴン・キング原作、フランク・ダラボン監督の「ミスト」といえば、とんでもなく鬱な結末でトラウマを生む「バッドエンド映画」として知られてきました。
あまりのショッキングさから「結末がひどい映画ランキング」などでも1位の常連作で、まさに歴史に残るバッドエンド映画と呼べる作品です。
そんな「ミスト」ですが、観ていて救われないポイントは結末だけではありません。劇中のあらゆる展開が、観客を鬱にさせます。
結末以外でも「ミスト」がとことん救われない作品である理由・ポイントをまとめてふり返ります(ネタバレ注意)。
「ミスト」が救われない理由1.あらゆる行動が裏目に出る
この手のパニック映画だと「登場人物たちが協力して危機に立ち向かう」というのが王道の展開ですが、「ミスト」では登場人物たちのサバイバル行動があらゆる場面で裏目に出ていきます。
怪物が光に寄ってくると分かって「明かりを消せ!」と主人公が叫ぶ一方で、状況を把握していない人たちが「明かりをもっと点けろ!」とどんどんライトを点灯させていったり。
怪物を倒すためにたいまつを作ろうとした男がすっ転んで火だるまになり、あわや建物が燃えそうになったり。
そうして全身火傷を負った彼を助けようと隣の薬局に向かったら数人が犠牲になり、さらに火傷の彼も結局助からなかったり。
間の悪い行動が連鎖を起こして状況を悪化させていくのはかなりストレスフルですが、「異常な状況でパニックを起こした一般人たちが全然うまく協力できない」という点では逆にリアルだな…とも思わされます。
「ミスト」が救われない理由2.話聞かない&説明下手な人が多すぎ
登場人物たちの行動の間が悪い一方で、会話劇もかなりグチャグチャでストレスが溜まります。
まず、最初に異常が起きた時点で周囲の男たちを説得する主人公の言葉選びがグダグダ。
さらに、「怪物なんて信じない!」とスーパーを出ていこうとする人々を止めようとする主人公も全然うまく喋れてなくて「もっとこう言えば結果は違ったのに…」と思わずにはいられません。
他の場面でもとにかくコミュニケーションがちぐはぐで、一番喋りが達者なのは本作最大の敵・カーモディおばさんという始末。
これも「現実で異常事態が起こったら、パニックを起こした人々が映画みたいにテンポよくスムーズに会話できるわけない」というシニカルなリアリティを感じさせるポイントです。
「ミスト」が救われない理由3.「いい人」から死んでいく
登場人物たちの行動も会話もグダグダだった結果、どんどん犠牲者が増えるわけですが、よりにもよってそれが「いい人」ばっかりなのも酷いポイントです。
後半なんて化け物より人間の暴走による犠牲者の方が目立つし、親切なスーパーの店員が死んで嫌味な店長が結局生き残るし、死者と生存者の「いい人/嫌な人」比率がバグってます。
パニックの中で生き残るのに善人か悪人かなんて関係ない、と突きつけられてるようで鬱ですね。
「ミスト」が救われない理由4.監督のひらめきで死んだ人々
本作最大の鬱ポイントはやっぱりバッドエンドすぎる結末ですが、その結末が「原作では存在しなかった」というのも、知ってしまうと救われません。
スティーヴン・キングによる原作小説「霧」では、スーパーを脱出した主人公たちはフリーウェイを移動していき、その途中にラジオで生存者たちの集まる町「ホープ」の名前を聞く…という場面で物語が終わります。
主人公たちが助かったのかは分かりませんが、まだ希望がある終わり方ですね。
それが映画「ミスト」では、あのあまりにも救いのない結末に。監督・脚本のフランク・ダラボンが自ら考えたもので、原作者のキングからも「この結末は衝撃」と好評だったとか。
フランク・ダラボン監督のひらめきによってインパクトのある結末になった「ミスト」ですが、作品としてはより印象深くなった一方で、主人公は絶望のどん底に落とされた…と考えると複雑ですね。
まとめ
衝撃の結末以外にも、あらゆる描写や演出が観客の絶望感をあおってくる「ミスト」。これだけネガティブな展開の末にあのバッドエンドがあるからこそ、より多くの人にインパクトを与えて今でも「キング・オブ・バッドエンドな映画」として語り継がれてるんでしょうね。
人間の醜さと現実の理不尽さを描く作品としては、間違いなく名作です。