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【Netflix】「フラクチャード」感想・評価 あらゆる要素が不穏で不気味な秀作スリラー(ちょっとネタバレ)

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サム・ワーシントン主演のNetflixオリジナル映画「フラクチャード」。旅行先で訪れた病院で家族が失踪した謎を父親が追うという、いわゆるサスペンススリラー的な内容です。

ややスロースタートで前半は地味な展開ですが、妻と娘の失踪後の怒涛の展開が凄まじいです。不穏な雰囲気の中で徐々に異様さが増していくストーリーが見どころで、Netflixらしい、小粒ながらユニークな秀作でした。

詳しくレビューしていきます(途中の演出などに触れてますが、結末はネタバレしません)。

 

「フラクチャード」あらすじ

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2019年 アメリカ

監督:ブラッド・アンダーソン

キャスト:サム・ワーシントン、リリー・レーブ、スティーヴン・トボロウスキー

 

レイ・モンローは妻のジョアンと娘のペリとともに、感謝祭で妻の実家を訪れたあとの帰路に着いていた。

その最中に立ち寄ったガソリンスタンドで、野犬に襲われたペリが高所から転落して頭を打ち、それを助けようとしたレイも一緒に落ちて怪我をするという事態が発生する。

レイは重傷を負ったペリを連れてジョアンとともに慌てて近くの救急病院に行き、娘を診察してもらえることになるが、うたた寝をしていた間に妻と娘が姿を消し、診療記録すらなくなってしまう。

病院が何かを隠していると考えたレイは、妻と娘を探して奔走するが……

 

「フラクチャード」感想

序盤から不穏で居心地の悪い空気がたっぷり

まず、冒頭から雰囲気がかなりよかったですね。いい意味ですごく気持ち悪かったです。

険悪な夫婦喧嘩に始まり、さびれたスタンド、いかにも閉鎖的な田舎の総合病院と、どのシーンもとにかく不穏。観てるだけで居心地が悪くなります。

そんな中で起こる妻と娘の失踪。診察してもらったはずなのに記録がなく、会話したはずの看護師たちも娘のことを知らないと言い出す……自分以外の人たちが示し合わせたように「そんな人知らない」と言ってくるシチュエーションは、ジョディ・フォスターの「フライトプラン」やリーアム・ニーソンの「アンノウン」を連想させます

この「居心地悪い系サスペンス」的なストーリーは、「妻と娘を探して救う」ということへの緊張感や焦燥感をさらに煽ってくれますね。

 

観客にすら「主人公を疑わせる」という誘導

主人公の「この病院はおかしい」という考えに対する共感と同じくらい、いやそれ以上に「主人公の方がおかしいのかも?」という疑いを観客に抱かせる誘導もよかったです。

主人公自身も事故で頭を打ってることによってその説得力がさらに増していて、「病院が妻と娘を奪った説」と「妻も娘もぜんぶ主人公の妄想説」が5分5分で並ぶことで観客を混乱させます。

絶妙に役に立ってない監視カメラ記録とか、病院外の目撃者とか、敵か味方か分からない警察官と精神科医とか、こちらを惑わせる要素が多いのもナイスです。さらに、医者とか看護師たちが絶妙に「信用できなさそう」なお顔なのも失礼ながらツボでした。

 

後半の怒涛の展開に惹きこまれる

先に書いたように前半はややスロースタートでやきもきさせられますが、妻と娘が消え、主人公が病院への疑いを深めてからの後半は怒涛の展開で惹きこまれましたね。

警察官や精神科医の登場時には「こいつらは病院とグルなのか?」と疑って見てしまうし、主人公の過去(事故で妊娠中だった前妻を失った)が明らかになることで主人公の証言の信憑性が怪しくなってくるしで、観てるこちらも意識を二転三転させられました。

病室に残された娘の持ち物や事故現場の跡みたいな物理的な要素はもちろん、「主人公のバックグラウンド」という心理的な要素で観客を惑わせるのはこの手のサスペンスとしてはちょっと新鮮でした。

 

まとめ:サスペンス好きなら一見の価値あり

ものすごく大傑作というわけではありませんが、こういう「失踪系サスペンス」としては及第点以上のクオリティだと思います。ひねられたサスペンスが好きなら一見の価値ありではないでしょうか。

主演のサム・ワーシントンといえば「アバター」や「タイタンの戦い」の主演で知られてますが、彼はやっぱりこういう小粒で癖のある作品でリアルな人間味のある役柄を演じるのが向いてるように思えます。

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