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「フェーズ6」感想 救いなし。これぞ世界の終末(ネタバレあり)

フェーズ6 (字幕版)

「他人を犠牲にしてでも生き残ろうとする奴」というのは、パニック映画ではある意味定番の存在ですよね。

大抵そういう奴は悪役ですが、「世界の終末で弱肉強食のサバイバルを送る」みたいな状況になったら、生き残るためには善人だろうとなりふり構ってられないはず。

この「フェーズ6」は、そんな「終末世界における泥沼のサバイバル」というテーマを一切の救いなしに描いた異色作でした。

むせかえるほどの絶望感が漂う本作の描く「終末世界のリアル」を詳しくレビューしていきます(結末に関するネタバレありです)。

 

「フェーズ6」あらすじ

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2009年 アメリカ

監督:アレックス・パストール、ダビ・パストール

キャスト:クリス・パイン、ルー・テイラー・プッチ、パイパー・ペラーボ、エミリー・ヴァンキャンプ

 

致死率100%を誇る新種ウイルスによって社会が崩壊し、生存者たちが自力でのサバイバルをくり広げる世界。ブライアンと恋人のボビー、ブライアンの弟ダニーとその友人ケイトの4人は、ウイルスに汚染されていないであろう海辺を目指して車を走らせていた。

そんな彼らの前に、同じくサバイバル生活を送るさまざまな人々が現れる。ときには助け合い、ときには争いながら4人は旅を進めていくが……

 

「フェーズ6」感想

ひとかけらの救いも正義もない

これほどまでに救いのない終末パニック映画も少ないでしょう。ハリウッド大作なら正義感や感動でどうにか解決されるであろう部分が、「他人なんて思いやる余裕ない」という容赦のない判断によって切り捨てられていきます。

その「救いのなさ」は意地悪なほど徹底されていて、「ブライアンたちが感染者のまだ幼い少女と父親を見捨てて逃げる」なんて描写は心理的にかなりきついです。何がきついって、別にブライアンたちがクズなわけではなく、「自分が同じ立場でも大事な人を守るために彼らを見捨てるだろうな」と共感せざるを得ないところが本当につらい。

さらにもうひとつ、ブライアンが恋人であるボビーすらも感染したら見捨てるシーンがえげつない。一人弱って死んでいくボビーの心細さを想像してしまうともう…

そんなブライアンですら感染していると分かると実の弟であるダニーに切り捨てられる、という展開が、追い打ちのようにダメージを与えてきます。

最終的に「大切な人(娘)のそばに居続けた父親は(おそらく)死に、大切な人だろうと切り捨てたダニーたちは生き残る」という結末を迎えるのも印象的です。終末世界に正義なんてひとかけらもなく、ただ「生き残った命」だけがあることを知らしめます。

 

「主人公」のいないロードムービー

ブライアンたちがさまざまな人物と出会っては離れていくロードムービー調に進む「フェーズ6」ですが、主人公らしい主人公がいないのも本作の特徴でしょう。

登場人物の中心になるのはクリス・パイン演じる兄ブライアンですが、彼は一応リーダーではあっても主人公ではありません。

本来なら「戦う力を持ち、いつも自信に満ちたアメリカの男」といういかにもなヒーローポジションですが、そんな彼も生き残るためなら他人を容赦なく撃ったりするし、最後には惨めに死んでいきます。どこにも主人公らしさはありません。

では最後まで生き残る弟のダニーが主人公か、と言われるとそれも違うでしょう。彼は本作の語り部的なポジションにいますが、彼が生き残ったのはほぼ「運」に近いです。本人が特に活躍したわけじゃありません。

ダニーが同じく生き残ったケイトと海辺でたたずむラストシーンはロマンチックさのかけらもなく、「別に恋人でもない男女がたまたま2人だけで生き残っちゃった」という気まずい結末はかなり悪趣味でした。

ちなみに、ブライアン役のクリス・パインは「スター・トレック」シリーズの主演で今やハリウッドスターですね。この「フェーズ6」は彼の無名時代の出演作でもあります。

 

まとめ:パニック映画史に残る絶望的な怪作

「ほんとに世界の終末が来たら、現実なんてこんなもんやで」と見せつけるような映画でした。登場人物たちの行動はひどいし結末は救われないし、「社会が崩壊した後にこんな生活が待ってるとしたら、とっとと死んでしまう方がマシかも」とすら思えます。

ここまで絶望感ただよう終末パニック映画も珍しいんじゃないでしょうか。ある意味でパニック映画史に残る、怪作といえる存在かもしれません。

フェーズ6 (字幕版)

フェーズ6 (字幕版)