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「ハイエナ・ロード」感想・評価 戦闘描写とテーマ性はなかなか(ネタバレなし)

ハイエナ・ロード(字幕版)

中東・北アフリカにはアメリカ軍だけでなく西欧各国の軍隊が派遣されているわけで、そういう国の兵士たちも、もちろん過酷な戦場に身を置いてきました。

その中でカナダ軍の戦いにスポットを当てた「ハイエナ・ロード」は、日本ではかなりレアな「カナダ産戦争映画」です。

本国ではカナダ版アカデミー賞で受賞するなど大きく評価されたそうですが、やや垢抜けない部分もありながら、確かに一見の価値ありの良作でした。詳しくレビューします。

 

「ハイエナ・ロード」あらすじ

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2015年 カナダ

監督:ポール・グロス

キャスト:ポール・グロス、ロッシフ・サザーランド、クリスティーン・ホーン、ナビル・エルーアハビ

 

タリバンの勢力下にあるアフガニスタンのカンダハル。駐留するカナダ軍はここで復興道路「ハイエナ・ロード」建設のためにタリバンと戦いをくり広げていた。

そんなカナダ軍の精鋭部隊が、戦闘中に危機に陥るも現地の老人に助けられて生還する。その老人の特徴から、彼が現地で重要な発言力を持つ「伝説の戦士」だと推測したカナダ軍将校は、精鋭部隊とともにその老人へと接触を試みるが……

 

「ハイエナ・ロード」感想

「憎しみの連鎖」に焦点をあてたストーリー

イスラム過激派との戦いをテーマにした戦争映画の中でも「欧米の軍隊と現地人の協力」をがっつりメインに描く作品ってけっこう珍しいんじゃないでしょうか。

この「ハイエナ・ロード」のストーリーの中心になるのはまさにそれで、カナダ軍精鋭部隊を匿ってくれたやたらと存在感のある老人が「実は現地では伝説として語られる元戦士でした」というお話になってます。

なので、ストーリーではカナダ軍兵士たちの戦いはもちろん、「現地の善良な人々とタリバンの対立・かけ引き」にもけっこうな重みが置かれてます。

だからこそ、「よそ者」である先進国の軍隊を抜きにした「現地で争い続けてきた人間同士の憎しみの連鎖」がリアルに描かれてました。

 

中東でも基本的に「政府は西側諸国の味方で、過激派テロリストは厄介な敵」なわけで、現地の人々にとってもテロリストは「敵」です。だから彼らは彼らでテロリストと戦ってきたし、お互いに憎み合ってます。

そんな状況だからこそ、単なる思想の違いだけでなく「仲間を殺された、家族を殺された」という個人的な恨みも含めた憎しみ合いの連鎖が続くんだなあ~と思わされました。

この複雑な状況で、遠いヨーロッパや北アメリカから「秩序を正して平和を守る」という大義を掲げてやってきた外国人の軍隊が何をできるのか。兵士たち自身の葛藤からも考えさせられて、複雑で後味の悪い気分にさせられますね。

 

ここぞという場面での戦闘描写のインパクトが良い

なかなか独創的なストーリーで「戦争の複雑さ・難しさ」を見せるこの「ハイエナ・ロード」ですが、全体的なクオリティとしてはところどころ「んっ?」と思わされる部分もあります。

アフガニスタンの村の雰囲気が若干「撮影用セットです」感があるとか、銃撃戦シーンのカット割りがちょっと素人っぽい部分があるとか、やっぱりハリウッドの一流大作と比べるとやや垢抜けない部分もちらほら。

ですが、そんなちょっとしたマイナス点も「決めるとこはしっかり決める」という製作陣の気合いで十分カバーされてたと思います。観客にインパクトを与えるべき、ここぞという場面での見せ方はナイスでした。

丘ひとつ吹っ飛ばす勢いの凄まじい爆発描写とか、終盤の目を覆いたくなるエグい破壊描写とかはハリウッドのリアル系戦争映画と比べても劣らないショッキングさです。いい感じの「ブラックホーク・ダウン」風味を感じさせてくれました。

 

まとめ:誰もが戦争の犠牲者

この「ハイエナ・ロード」、作中ではカナダ軍の隊員たちも現地の人々もタリバン兵士たちですらも、自分や身内が傷ついて死んでどんどん泥沼に追い詰められていくんですよね。

そんな展開を観てると、戦争ってほんとに信じられないくらい色んな思想や感情がごちゃ混ぜになって起こってるんだな、と思わされます。

こうなると敵ですら簡単には戦争を止められないだろうし、(個人単位で見たら)ある意味では誰もが戦争の犠牲者なんでしょうね。

ハイエナ・ロード(字幕版)