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【Netflix】「キング」感想 そして孤独な王になる(ネタバレあり)

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アカデミー賞にもノミネートされた若手演技派の筆頭ティモシー・シャラメを主演に、15世紀イングランドの王子が一人の「王」へと成長していく姿を描いたNetflixオリジナル映画、その名も「キング」。

原作はシェイクスピアの戯曲だそうですが、僕はシェイクスピア作品には馴染みがないので、wikiで最低限の概要だけ調べたうえで観てみました。詳しくレビューします。

 

「キング」あらすじ

www.youtube.com

2019年 アメリカ、オーストラリア

監督:デヴィッド・ミショッド

キャスト:ティモシー・シャラメ、ジョエル・エドガートン、ロバート・パティンソン、ベン・メンデルソーン、リリー=ローズ・デップ

 

イングランド国王の長子でありながら、気ままな放蕩生活を送っていたハル王子。ところが、老いによって死んだ父親に代わって、ある日突然イングランド王ヘンリー五世になる。

それまでの自由な生き方から一転して、不安定な国内外の情勢への対処や、国王の能力に疑問を抱く臣下たちへの対応に追われていくヘンリー五世は、独自の理念にもとづいて国を治め、しだいに王として成長していく。

 

「キング」感想

原作のシェイクスピア戯曲については知らなくても大丈夫

まず、本作「キング」は先に書いたようにシェイクスピアの戯曲が原作です。イングランドの王を数世代に渡って描く4部作、通称「ヘンリアト」の後半が基になってます。

が、昔の戯曲といってもストーリー自体が複雑なわけではなく、原作について知らなくても十分内容を追っていけると思います。せいぜい、

  • ヘンリー四世(主人公の父)は国内外に多くの問題を抱えていた
  • 主人公ハル王子は王家を飛び出して気ままな放蕩生活を送っていたが、父の死を受けて急きょ国王(ヘンリー五世)になる
  • 当時のイングランドはまだまだ不安定で王様の地位も危うい

くらいのことを押さえていけばいいでしょう。

 

孤独で優しい王様の苦悩

さて、本作の主人公ハル王子/ヘンリー五世ですが、「放蕩息子の王子がある日いきなり国王に」というあらすじから来るイメージとは違って、まったく「バカじゃない」です。

むしろ、争いを極力避ける主義で父親よりも国内の諸問題をうまく収めていったりと、内政に関してはかなり優秀と言えるでしょう。

なので、本作の最大の見どころは「放蕩息子の成長」というよりは「自由で人間らしい立場から孤独な王になった青年の苦悩」にあります。

 

争いを避けたいヘンリー五世のスタンスは外政にも表れていて、彼は「できるだけ戦争したくない/むやみに民を死なせたくない」派です。当時としては異質ともいえるほどに。

そして、「この考えこそが彼を最も苦しめることになっていく」というのがかなり皮肉で、ものすごく人間的だからこそ王様という立場に苦悩するヘンリー五世の姿が、「王の孤独」を体現してるように思えました。

ヘンリー五世が「立派な国王になった」と評されて忠誠を集めていくほど、彼が最初に望んでいた「戦争をせず、民を死なせない」という理念から行動がかけ離れていくのが印象的です。

こうして人間らしい情を捨てて冷酷な決断を下すのが「王になる」ことだとしたら、王様ってなんて孤独で非人間的な立場なんでしょうか。

 

「フォルスタッフ」というキーキャラクター

この「キング」においてキーとなるのが、主人公のハル王子/ヘンリー五世を最も近くで支えることになるフォルスタッフでしょう。最初は「ハル王子の悪友」だった彼の立ち位置の変化が印象的です。

ヘンリー五世にとってフォルスタッフは唯一心を許せる相手ですが、ヘンリー五世が王になった後はフォルスタッフの態度もやっぱり一歩引いた位置にいます。「友人がいない」ことよりも「かつて友人だったフォルスタッフですら、前とは違う距離感になった」ことが、王の孤独さをかえって強調して感じさせます。

そして、終盤での彼との別れが「ヘンリー五世が真の王(真の孤独)に至った」ことを象徴してるように思えました。

 

当時のイギリスらしい暗さとミニマルさが好き

個人的に、この頃のイギリスの雰囲気ってけっこう好きなんですよね。ゲームやアニメで描かれる「夢の中世ヨーロッパ!」とは全然違う、暗くてじめじめした雰囲気。

この「古き良き(悪き?)イギリス」の空気感は同じくNetflixオリジナルの「アウトロー・キング」でも観られましたが、泥と埃の匂いまで漂ってきそうな映像作りはさすがNetflixの大作です。

 

その気概は戦闘シーンにも表れていて、もう凄まじいです。文字どおり泥まみれ血まみれの大混戦。「アクション的な楽しみ方をさせる気は一切ないぞ、これが本当の中世の戦争だ!」と言わんばかりのグチャグチャ具合です。

そして、当時は人口も国力も今とは比べ物にならないから、国とか戦争の規模もミニマル。このいい意味での汚さ、ショボさが渋くてナイスでした。

 

実力派俳優たちの名演が光る

原作がシェイクスピアでメインが「主人公の成長」ということもあって、出演者たちの演技も素晴らしくよかったです。

まず、主演のティモシー・シャラメは「君の名前で僕を呼んで」でアカデミー主演男優賞にノミネートされましたが、さすがの演技力でした。やや影のある雰囲気に惹きこまれます。

そして何といってもフォルスタッフ役のジョエル・エドガートン。彼なしでこの映画は成り立たなかったでしょう。ていうかジョエル・エドガートンってこんなずんぐりむっくりの大男だっけ。もっと中肉中背の体型たっだはずですが、どんな役作りだよすげえ。

あと、個人的に印象的だったのが、フランスからヘンリー五世に嫁ぐキャサリン妃役のリリー=ローズ・デップ。今までは「ジョニー・デップの娘」というイメージしかなかったんですが、本作では出番短めながら凄まじい存在感です。こんなに演技派だったとは。

さらに、敵役となるフランス王子を演じたロバート・パティンソンもよかった。「トワイライト」シリーズのヒーローとして有名な彼ですが、今回はかなり憎たらしいキャラクターでなかなかの怪演を見せてくれました。アイドル的人気を博した俳優がイメージを覆す役で実力を発揮するのってなんかいいよね。

 

まとめ:渋く味わいのあるイギリス歴史映画の秀作

ストーリー的にはどうしても駆け足になる部分(特に中盤)があった感は否めませんが、それを十分に補うキャストたちの名演と「一人の青年から王への成長」というテーマをうまくまとめた演出で、渋く味わいのある歴史映画に仕上がってたと思います。

やや意外さを見せるラストもあって、しっかりカタルシスの残る秀作でした。

 

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