「銀行強盗サスペンス」といえば、映画界ではもはややり尽くされたジャンルでしょう。そして「いわくつきの建物が舞台のホラー」も同じく手垢のついたテーマです。
では、その2つを混ぜ合わせて「変なものが"出る"という噂のある銀行に強盗が入っちゃったら」を描いたら…というのがこの「ザ・ボルト -金庫強奪-」。
面白い部分も惜しい部分もある、異色の挑戦作でした。詳しくレビューします。
「ザ・ボルト -金庫強奪-」あらすじ
2017年 アメリカ
監督:ダン・ブッシュ
キャスト:ジェームズ・フランコ、タリン・マニング、フランチェスカ・イーストウッド、スコット・ヘイズ
ある平日。センチュリオン信託銀行ではいつも通り業務が行われていたが、姉妹と弟の3人に男2人を加えた5人の銀行強盗が現れ、行内は騒然となる。
銀行ロビーだけでは思っていたほど金を得られなかった強盗たちは、人質の行員から情報を得て地下の金庫内の金を奪うことを計画。しかし、強盗達が地下に足を踏み入れたことで、謎の人影や異常な現象が発生していき……
「ザ・ボルト -金庫強奪-」感想
強盗シーンと終盤の種明かしはなかなか秀逸
まず、冒頭の銀行強盗シーンは緊張感があってよかったです。
客を装って銀行内へ……というのはまあ定番ですが、アルバイトの面接として来て重役に近づく、というのはけっこう新しい。さらに、銀行の近くで火事が起きて混乱してるのに乗じて侵入……というのも「不自然ではなく、タイミング的に通報もされづらい」という点で頭いいですね。
そこからの強盗開始のシーンもなかなかの迫力で、安っぽさもなくちゃんとハラハラします。ふつうにこのまま強盗サスペンスとしても楽しめそう、と思えました。
そして、この映画でもうひとつ見どころなのが「終盤」です。銀行の地下でのオカルト現象に関するとある秘密が明かされるわけですが、これがなかなかパンチの効いたどんでん返しでした。あの人物をそこでそう使うか、と驚かされます。
監督や脚本家もサスペンス的な作品が得意なんでしょうか。緊張感のある演出や、伏線を紛れさせたストーリー展開はなかなか秀逸でした。
中盤のオカルト描写/その原因描写はやや力不足
一方で、本作のもうひとつの推しポイントであるはずの「オカルト描写」はちょっと微妙かも。
銀行の地下室はなかなか不気味だし、最初に「何か」が出現したときのワンシーンはけっこうヒヤッとさせられましたが、そこからは何というか…「幽霊出るんだ、ふーん」って感じです。
犠牲者のゴア描写なんかはけっこう頑張ってますが、妙にアクティブで物理攻撃の多い幽霊たちは正直あんまり怖くなくて、ホラー映画としてはやや力不足感があります。
あと、なぜこの銀行に幽霊が出るようになったのかのエピソードも語られるんですが、これがなんか分かりづらいんですよね。語り方がふわっとしすぎててふつうに内容を理解しづらい。もうちょっと上手く説明してほしかったですね…
ジェームズ・フランコ萌えは抜群
この「ザ・ボルト -金庫強奪-」の目玉キャストが、銀行の管理職役のジェームズ・フランコでしょう。
旧「スパイダーマン」シリーズでの主人公の親友役や、「猿の惑星:創世記」の主演で有名な彼ですが、一見クールっぽいイケメンぶりと、どこか不安定だったり頼りなかったりするキャラのギャップがその魅力のひとつでしょう。
本作でもそんなキャラクターで、観てるとなんだか「ほらほら頑張って!」と応援したくなります。ジェームズ・フランコに萌えたい方は十分楽しめるでしょう。
あと、強盗グループのリーダー格で、あのクリント・イーストウッドの娘のフランチェスカ・イーストウッドが出てるのも見どころです。
女優としてはまだまだ無名の彼女ですが、出てきたときからやたらと目を引く存在感があって、ナチュラルに演技慣れしてる感じもあったりで、「さすが巨匠の娘」な貫禄がありました。
作品や役柄に恵まれれば、スコット・イーストウッドみたいに2世俳優として成功しそうなカリスマ性が感じられます。
まとめ:変わり種の強盗サスペンスとしては佳作
「銀行強盗×いわくつき建物ホラー」という異色のジャンル融合に挑戦した「ザ・ボルト -金庫強奪-ですが、上手くいってるとは言い難い部分もあるものの、強盗サスペンスが好きな人なら変わり種としてまあ楽しめる佳作ではあると思います。
90分くらいでサクッと観れるし、だらだらしながら流す暇つぶしの一作としておすすめです。