世界レベルの大ヒット作を生み出し続けるハリウッドですが、「失敗」とされる作品ももちろんたくさんあります。
そこで、2010年代の作品の中で、とくに「大コケっぷり」が印象的だった赤字ハリウッド映画をまとめて紹介します。「いい作品なのに…」と同情してしまう作品から「これが赤字なのは納得」と言えてしまう作品まで、多種多様です。
大爆死した大コケ作品を眺めて、波乱万丈だった2010年代のハリウッドをふり返ってみましょう。
- 【初めに】興行収入をいくら稼げば黒字になる?
- 移動都市/モータル・エンジン(2018年)
- ゴースト・イン・ザ・シェル(2017年)
- 47RONIN(2013年)
- ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018年)
- ジュピター(2015年)
- クラウド アトラス(2012年)
- ヴァレリアン 千の惑星の救世主(2017年)
- ベン・ハー(2016年)
- グリーン・ランタン(2011年)
- ゴースト・エージェント/R.I.P.D.(2013年)
- ジョン・カーター(2012年)
- バトルシップ(2012年)
- ジャックと天空の巨人(2013年)
- モンスタートラック(2017年)
- ローン・レンジャー(2013年)
- まとめ
【初めに】興行収入をいくら稼げば黒字になる?
まず、「そもそも映画っていくら稼げば黒字になるの?」という疑問がありますよね。
映画の興行収入は、「製作費を超えれば黒字」というほど単純ではありません。宣伝広告費や映画館側の取り分などもあるので、赤字を避けるには製作費の2倍~3倍ほどの興行収入が必要と言われています。
大体の目安ですが、興行収入が
- 製作費の3倍を超えられない→成功とは言い難い作品
- 製作費の2倍を超えられない→興行的には失敗作扱い
- 製作費の額すら超えられない→会社が傾く、最悪倒産
という感じでしょうか。
それを踏まえて、2010年代のやばい赤字映画をふり返っていきます。
移動都市/モータル・エンジン(2018年)
まずはこちら。2010年代を代表する赤字大作映画のひとつでしょう。
製作費1億ドル(110億円くらい)に対して、興行収入はわずか8000万ドル強という結果に。製作側の損害は1億5000万ドルを超えたとか。
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで知られるピーター・ジャクソンが製作を手がけた注目のSFファンタジー映画でしたが、散らかり気味のストーリーを見ると「あんまり売れなかったのも納得…」と思ってしまいます。
スチームパンク的な映像世界は凄かったのにね…
ゴースト・イン・ザ・シェル(2017年)
日本の人気SFアニメ「攻殻機動隊」をハリウッドが実写映画化したことで話題になった一作。
MCUシリーズにも出てるスカーレット・ヨハンソンが主演で、さらに北野武も登場したりと、日本では特に話題を集めましたね。
ですが、SF映画としての評価はいまひとつで、製作費1億1000万ドルに対して興行収入は1億6000万ドルほど。大スターのスカヨハ主演でもSF映画のヒットはやっぱり難しいんでしょうか。
47RONIN(2013年)
日本ではおなじみの時代劇・忠臣蔵を、なんとキアヌ・リーブスが主演で実写化した歴史ファンタジーアクション映画。
「アメリカ人オタクの僕らが考えた最強のクールJAPAN」という感じで、時代劇としてのリアルさは完全に捨ててファンタジックな派手さを重視した風変わりな一作です。
1億7000万ドルも製作費をかけて、興行収入は1億5000万ドルほどという結果に。正直納得というか、「なんでこの映画でその製作費を回収できると思ったんだ」と突っ込みたいです。
ネタ映画としては面白いですが、ハリウッド大作としては駄作でしょう。これなら紀里谷監督のハリウッド作品「ラスト・ナイツ」の方が忠臣蔵映画としてよほど面白いです。
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018年)
「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ映画です。
2億5000万ドルもの製作費をかけた超大作でしたが、興行収入は4億ドル弱で商業的には赤字に。ですが、直前に公開されていた「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」が大不評だった影響が後を引いていたので、本作自体はまったく悪くないと思います。
むしろ、「スター・ウォーズ映画」として世界観を広げる超熱い傑作でした。王道のスペースアベンチャーとして、興奮と感動が詰まっていて楽しめます。
「ローグ・ワン」といい、2010年代のスター・ウォーズ映画はスピンオフの方が面白い気がする…
ジュピター(2015年)
「マトリックス」シリーズを手がけたことで知られるウォシャウスキー姉妹によるSF大作。
壮大なスペースオペラとして公開されましたが、まとまりの悪いストーリーが低評価を生んで、1億8000万ドルほどの製作費になんとか届く程度の興行成績に。製作側は相当な赤字でしょう。
SF映画としては見どころも多い作品ですが、大作映画として大ヒットを飛ばせるかというと確かに「うーん…」と頭をかしげてしまいますね。
クラウド アトラス(2012年)
こちらもウォシャウスキー姉妹によるSF映画。「精神的に繋がり合う6つの時代の物語を、同時進行で描く」という異色の挑戦作です。
1億ドルの製作費に対して1億3000万ドルほどの収益と興行的には失敗でしたが、SF映画としてはかなり斬新で面白いと思います。
この凄まじい映像世界の表現にどうしてもお金がかかったんでしょうが、映画文化的にはそれだけの意味があった作品だと思います。個人的には5本の指に入るくらい好きな映画です。
ヴァレリアン 千の惑星の救世主(2017年)
「大爆死した2010年代のSF画」としては、本作も欠かせません。
リュック・ベッソンのヨーロッパ・コープが製作した映画なのでハリウッド映画ではありませんが、紹介せずにはいられないので許してください。
「レオン」のようなアクションヒューマンドラマ映画を得意としながら、実は超SFオタクなことで有名なリュック・ベッソン。その趣味が全開になったのがこの「ヴァレリアン」で、SFオタクとしての愛が溢れすぎて凄いことになってるカオスな異色作です。
ヨーロッパ映画史上最高となる1億8000万ドルをかけて作られて、興行収入は2億ドル強。ベッソンの製作会社が傾く事態になりました。
ベン・ハー(2016年)
1950年代の超名作映画「ベン・ハー」と同じ原作を持つ歴史アクション大作。
1億ドルという大作クラスの製作費で作られた古代ローマの世界観や戦車競走シーンの激しさはかなりの見ごたえですが、ストーリー的にはアカデミー賞を受賞した1950年代版を超えられずに辛口の評価に。
最終的に、興行収入は1億ドル足らずで日本ではDVDスルーという散々な結果に終わりました。
グリーン・ランタン(2011年)
今では「デッドプール」の主演で大人気スターとなったライアン・レイノルズの黒歴史的な作品。
ハリウッドが贈る新たなアメコミ大作として2億ドルもの製作費がかけられましたが、興行成績は2億ドル弱で評価も微妙という地味な結果に終わりました。
ライアン・レイノルズ的には苦い思い出の作品らしく、「デッドプール」ではこのグリーン・ランタン役のオファーを受けて喜ぶ過去の自分を撃ち殺す、という自虐ジョークをかましてます。
ゴースト・エージェント/R.I.P.D.(2013年)
こちらもライアン・レイノルズ不遇時代の赤字作品。殉職した刑事が「ゴーストを取り締まるあの世の刑事」となって戦うというファンタジーSFアクション映画で、演技派俳優ジェフ・ブリッジスとのW主演でも話題になりました。
内容的には「ゴースト版メン・イン・ブラック」という感じで派手アクションとユーモアを楽しめる良作ですが、1億5000万ドル近い製作費に対して興行収入は8000万ドル以下と、かなりやばい成績に終わっています。
ジョン・カーター(2012年)
ライアン・レイノルズの赤字シリーズの次は、テイラー・キッチュの赤字シリーズを見ていきましょう。
まずこの「ジョン・カーター」。ウォルト・ディズニー・ピクチャーズが贈るSFアドベンチャー大作として2億5000万ドルもかけて製作され、「スター・ウォーズ」のような壮大なスペースオペラを展開しました。
内容的にはエンタメアドベンチャー映画として盛り上がれる良作で、評価も上々で3億ドル近い興行収入を記録したものの、元々の製作費が莫大すぎて収支的には失敗。2億ドル近い損失という、歴史的な赤字作品二なってしまいました。
映画としてはかなり面白いだけに、気の毒です。
バトルシップ(2012年)
テイラー・キッチュ主演の大赤字映画その2。こちらはユニバーサル・ピクチャーズ100周年記念作品になった大作です。
謎の宇宙船と米軍&海上自衛隊の軍艦が戦うという海洋アクションで、浅野忠信も出演して日本でも話題に。
ド派手なアクション大作として3億ドルもの興行収入を記録しましたが、元の製作費が2億ドルもかかったのでこちらも収支的には大赤字でした。
頭からっぽで派手さ重視な内容は批評的にボロクソでしたが、「アホで派手なアクション映画が観たい!」という層からは大好評で、今もカルト的人気を誇る一作です。
ジャックと天空の巨人(2013年)
若手俳優として筆頭の人気を誇るニコラス・ホルト主演で、有名な童話「ジャックと豆の木」をド派手なアクションファンタジー風に仕上げた映画。
スタンリー・トゥッチやユアン・マクレガー、ビル・ナイといった実力派俳優も出演して、天空世界の映像美やユーモラスで個性豊かな巨人たち、クライマックスのド派手な戦闘シーンなど見どころが盛り込まれた良作ですが、その分製作費も膨らんで2億ドル近い額に。
興行収入はなんとか製作費に届くかどうかという程度で、商業的には失敗作になりました。
いい映画だと思いますが、いかんせん大人向け本格ファンタジーなのか子供向けファミリーファンタジーなのか中途半端になってしまった感が強い…
モンスタートラック(2017年)
「X-MEN」シリーズのハヴォック役で知られるルーカス・ティルを主演に、トラックの中に棲みついてしまった未知のモンスターと青年の交流を描くSFコメディ映画。
「巨大モンスター」×「E.T.」という感じの作品で、でかくてニュルニュルなのに愛嬌があって可愛いモンスターと主人公の友情、さらにはモンスターを狙う企業との派手な攻防など、エンタメ性たっぷりの良作です。
ですが、モンスターの映像面で製作費が膨らんだらしく、B級テイストに見合わない1億2000万ドルという高額映画に。興行収入は7000万ドルにすら届かず、2017年トップレベルの赤字映画になりました。
ローン・レンジャー(2013年)
ジョニー・デップ主演で2億ドル以上の製作費をかけながら、興行収入はなんとか製作費を超える程度、という結果に終わった西部劇ファンタジー映画。2010年代を代表する大赤字映画のひとつです。
古き良き西部開拓時代の世界観や派手なアクションシーンで楽しめて、ジョニー・デップも相変わらずのユニークキャラで、悪い作品ではないと思います。が、西部劇というヒットが難しいジャンルなのもあってか、莫大すぎる製作費は回収できませんでした。
まとめ
こうしてふり返ると、世界的ハリウッドスターが主演する大作でも、出来が微妙だと平気で大コケするという映画界の厳しさがよく分かりますね。ハリウッドの容赦ない実力主義っぷりがうかがえます。
また、製作費がかかりがちなファンタジーや歴史もの、SF映画は良作でも赤字になりかねない、という厳しい現実も見て取れますね。逆に言えば「商業的に失敗していても面白い作品は多い」ということでもあります。
2020年代のハリウッド映画界も、こうした波乱万丈の興行レースがくり広げられることでしょう。今から楽しみですね。
こちらの記事もおすすめ↓