僕たち観客が映画を観るときの視点って、いわば「神の視点」ですよね。
すべてを見渡す究極の上から目線でストーリーを追ってるからこそ、「そこはもっとこうしろよ!」「何やってんのよ!」というツッコミを入れたくなることもあります。
そんな映画のお決まりをぶち破って、「登場人物一人ひとりの限られた視点からひとつの事件を見ていったら…?」というのを描くのが、この「バンテージ・ポイント」です。詳しくレビューしていきます。
「バンテージ・ポイント」あらすじ
2008年 アメリカ
監督:ピート・トラヴィス
キャスト:デニス・クエイド、フォレスト・ウィテカー、シガニー・ウィーバー、エドゥアルド・ノリエガ、エドガー・ラミレス
スペインで開催されていた国際サミットの演壇上で、アメリカ合衆国大統領が何者かに狙撃され、さらに演壇の下に仕掛けられていた爆弾が爆発。多くの犠牲者が出る大惨事が発生する。
事件の只中にいた警護官やテレビクルー、地元警官、観光客、そしてテロの実行犯たちの視点で事件が可視化されていき、徐々にその真相が明らかになっていく。
「バンテージ・ポイント」感想
タイトルの意味は「観点・見地」
面白い試みの作品ですよね。やってることはベタなクライムサスペンスですが、視点をバラバラにすることで違ったハラハラが感じられます。
タイトルの意味は「観点」とか「見地」とか。まさにこの映画そのものを表してますね。
ふつうは映画のストーリーってゴールに向けて真っすぐ進んでいくものですが、本作のストーリー展開は「わずか数十分の事件を視点を変えながらリピートすることで、徐々に真相が鮮明になっていく」というもの。まるでタマネギの皮を一枚一枚むきながら芯にたどりついていくような感覚でした。
事件の内容をぶっちゃけてしまえば「テログループがシークレットサービスの裏切り者と共謀して爆弾テロを起こしつつ別の場所にいた"本物の大統領"を誘拐するも、最終的には失敗して全滅」というだけのもの。
だからこそ「大した話じゃないじゃん!」という批判も受けて賛否両論ある作品になってるみたいですが、個人的にはそんな悪く言わなくても……と言う感想。ちゃんと面白くて珍しい良作だったと思います。
視点に悩まされて視点に救われるストーリー
本作のいちばん面白いポイントって、「視点が限られることで最初は不自由するのに、最終的にはたくさんの視点から見ることで観客が誰より事件の真相を知ってる」というストーリー展開だと思うんですよ。
真相を知ってしまうとなんだか小さいサスペンスに思えますが、例えば主人公のバーンズはテロ犯たちの裏にあったゴタゴタ(弟を人質にされて協力させられた、とか)を知らないし、地元警官のエンリケはシークレットサービス側のゴタゴタを知らないし、観光客のルイスなんて事件については分からないことだらけ。
「登場人物たちが自分の目の届く範囲でしか事件の内容を知らないまま終わる映画」って、かなり珍しいと思うんですよ。
一方で、僕たち観客は最初こそ「ふつうの映画と違って一人物の視点しかないから不自由」であるものの、最終的には「現実ではあり得ないほど多角的に事件を見ることで絡み合った真相の全てを知ってる」ことになります。だからこそ「そういうことだったのね~」とスッキリして観終わることができます。
個人的には、この対比が新鮮だな~と思いました。
「多角的な視点で物事を見ることって大事」ということをひしひしと感じさせられますね。監督は絶対そんなメッセージ性込めてないだろうけど。
意外に豪華キャストなのも見どころ
設定の珍しさに意識を向けがちですが、この映画なにげに凄い豪華キャストだと思うんですよね。
まず、フォレスト・ウィテカーとシガニー・ウィーバーという超ベテラン名優が並んでるし、「LOST」の主演で知られるマシュー・フォックスもキーとなる役どころだし、「アバター」などで知られるようになるゾーイ・サルダナも出演してます。
そして主演はデニス・クエイド。この人は苦労してるおじさんの役が本当に似合いますね。
派手なトップスターがいるわけではありませんが、ハリウッド映画ファンなら名前をよく知ってる実力派が一挙集結してる感じ。キャストが豪華だから登場人物それぞれの視点もより楽しく観られます。
まとめ:ふつうのサスペンスじゃ物足りないときに
尺も90分とコンパクトだし、スリルやスピード感のあるサスペンスアクション映画が観たいときにちょうどいい、手堅い良作です。
こういうクライムサスペンスが好きだけど、ふつうの映画は飽きちゃったからちょっと変わった作品が観たいな、というときに手に取ってみてください。
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