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「28週後...」感想・評価 絶望と退廃のベストマッチ(ネタバレあり)

28週後… (字幕版)

「スラムドッグ$ミリオネア」などで知られるダニー・ボイル監督の初期作品のひとつ「28日後…」は、"走るゾンビ"映画の金字塔的な作品として今でもカルト的人気を誇っています。

その続編であるこの「28週後…」もかなりの傑作。アクションホラーとしてよりパワーアップしつつ、1作目のような退廃的な映像美もしっかり感じられる作品です。

詳しくレビューしていきます。

 

「28週後...」あらすじ

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2007年 イギリス

監督:ファン・カルロス・フレスナディージョ

製作総指揮:ダニー・ボイル、アレックス・ガーランド

キャスト:ロバート・カーライル、イモージェン・プーツ、マッキントッシュ・マグルトン、ジェレミー・レナー、ローズ・バーン

 

人間を狂暴化させる「レイジウイルス」によってイギリスが壊滅してから28週後。感染者が全て餓死して事態が収束したイギリス国内に、NATO軍の主導で国民の帰宅がはじまる。

ところが、ひょんなことから再び感染が発生。市民や軍の駐留部隊を巻き込みながら、壮絶なパンデミックが広まっていき……

 

「28週後...」感想

「ゾンビに襲われる」シーンなのに美しい

まず、本作に登場するのは「ウイルスで狂暴化した人間」なので厳密にはゾンビじゃないんですが、世間的にはゾンビ映画の括りで語られることが多いのでその前提で書いていきます。

 

で、この「28週後…」ですが、1作目と比べるとアクションホラーとして圧倒的にパワーアップしてるんですよね

前作のヒットで予算が大幅に増えたのもあるんでしょうが、軍による壮絶な殲滅戦や空爆、ヘリコプターによる戦闘シーンなど、「ドーン・オブ・ザ・デッド」や「ゾンビランド」のようなハリウッド大作にも全く引けを取らないスケール感。

前作は「ゾンビよりも人間の生存者の方がよっぽど怖い」と思わせるダークさが印象的でしたが、本作はもっと単純に「派手なゾンビアクション映画が観たい!」と言う人でも楽しめるのが魅力でしょう。

 

しかも、シリーズの生みの親がダニー・ボイル監督なのもあってか、ゾンビによる襲撃シーンは怖いはずなのに「綺麗だなぁ」と思ってしまう部分もあります。

特にオープニングの襲撃シーン。「爽快な大草原で見渡す限りゾンビが迫ってくる中を、必死の形相で走って逃げる」というシチュエーションに絶望感たっぷりのテーマソングがベストマッチして、退廃的な美しさを感じさせてくれました。

他にも、屋上スナイパー部隊によるゾンビ狙撃戦とか火炎放射での焼死シーンとか、カメラワークや演出がいちいちハイセンスです。「エンターテインメントとして絶望感を映し出す」ということへの徹底的なこだわりが感じられます。

ダニー・ボイルが関わった作品って、こういう風に娯楽作なのに芸術派だな部分もあるからいいですよね。

 

ジェレミー・レナーがかっこよすぎ

この「28週後…」の登場人物、ダメダメなパパとか無鉄砲すぎる子どもたちとか楽観的な軍人たちとか観ていてイラっとしてしまうキャラが多いんですが、そんな中で数少ない「頼りになる大人」として登場するのがジェレミー・レナー演じるドイル軍曹。

このドイル軍曹、本当にめっちゃめちゃかっこよすぎるんですよね。危機的状況でも冷静だし子どもたちを怯えさせないよう常に微笑んでるし、狙撃めっちゃ上手いし。

この頃のジェレミー・レナーはまだそんなに有名俳優ではありませんでしたが、MCUから彼を知ったファンにもぜひこの勇姿を見てほしいです。彼の演じた役の中でも随一のイケメンっぷりだと思います。

 

ちなみに他にも、「パシフィック・リム」はじめ大作への出演が多いイドリス・エルバとか「インシディアス」シリーズのローズ・バーンとか、主演のロバート・カーライルとか、出演者はみんな実力派ばっかり。

本作以降さらに有名になった俳優が多いので、彼らのキャリアのひとつとして観るのも面白いです。

 

根底にあるのは「家族への愛」

前作は「人間の業」みたいなダークなテーマがありましたが、本作では「家族への愛」がメインテーマになってますね。

愛と言っても「自分を見捨てて逃げた家族を許せるか」とか「子どもたちが自分を軽蔑のまなざしで見ることに耐えられるか」とか、そういうどんよりした重いテーマですが。

映画全体がハリス一家をストーリーの軸にしてるので、ある意味では他のキャラクターは全て「脇役」と言ってしまってもいいポジションなのかも。ドイル軍曹はじめ主役級の活躍を見せたキャラが意外とあっさり退場してしまうのも、そのためなのかもしれません。

 

まとめ:「走るゾンビ」が好きなら観るべき

あいかわらず全体的にネガティブで重いストーリーですが、そんな作風とアクションホラーとしての見ごたえをしっかり両立してるのは素晴らしいバランス感覚。この辺もダニー・ボイルが尽力してるんでしょうか。

「走るゾンビ」が出てくるアクション寄りのゾンビ映画が好きな人なら、一度は観るべき傑作です。

ちなみに、3作目となる「28 month later(28ヶ月後)」の企画も本格的に進んでいるとか。まだ日本にはほとんど情報が入ってきてませんが、さらなるスケールアップに期待が高まりますね。

 

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