どんな映画がヒットしたのかを示す「興行収入ランキング」は、映画ファンにとっては毎年注目してしまうものですよね。
そんな興行収入ランキングですが、トップ層の作品をまとめてカテゴライズしていけば、これまでとは違ったかたちで映画界を見ることができるんじゃ…?と思いました。
そこで、映画の毎年の世界興行収入トップ10作品を並べて、さらにジャンルや要素ごとにまとめて考察していきます。今回は2010年代前半(2010年~2014年)の作品を。
- 2010年の興行収入ランキングトップ10
- 2011年の興行収入ランキングトップ10
- 2012年の興行収入ランキングトップ10
- 2013年の興行収入ランキングトップ10
- 2014年の興行収入ランキングトップ10
- ジャンル・カテゴリごとの作品数
- 主な配給会社ごとの作品数
- 世界興行収入ごとの作品数
- シリーズ続編やスピンオフ、リブート/リメイクじゃない単発作品:9作
- まとめ
2010年の興行収入ランキングトップ10
1位:トイ・ストーリー3(10億6300万ドル)
2位:アリス・イン・ワンダーランド(10億2400万ドル)
3位:ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1(9億4800万ドル)
4位:インセプション(8億2500万ドル)
5位:シュレック フォーエバー(7億4900万ドル)
6位:エクリプス/トワイライト・サーガ(6億9300万ドル)
7位:アイアンマン2(6億2200万ドル)
8位:怪盗グルーの月泥棒 3D(5億2700万ドル)
9位:塔の上のラプンツェル(5億0300万ドル)
10位:ヒックとドラゴン(4億9400万ドル)
2010年のトップは「トイ・ストーリー3」。他にも全体的にアニメ映画が強い年だったみたいですね。
他にもファミリー向けの作品が多い中、「インセプション」が異彩を放っています。
2011年の興行収入ランキングトップ10
1位:ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2(13億2400万ドル)
2位:トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン(11億1700万ドル)
3位:パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉(10億3900万ドル)
4位:カンフー・パンダ2(6億5900万ドル)
5位:ワイルド・スピード MEGA MAX(6億0900万ドル)
6位:ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える(5億8100万ドル)
7位:カーズ2(5億5000万ドル)
8位:ブルー 初めての空へ(4億8300万ドル)
9位:スマーフ(4億8300万ドル)
10位:マイティ・ソー(4億4800万ドル)
2011年のトップは、PART1も前年にランクインしていた「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」。シリーズの集大成だけあって、ぶっちぎりの1位です。
他にも超大作シリーズの続編作品がトップ3を独占。前年とはかなり毛色が違うのが分かります。
そして3位までと4位以下の興行収入の開きがすごい。
2012年の興行収入ランキングトップ10
1位:アベンジャーズ(15億1900万ドル)
2位:007 スカイフォール(11億0800万ドル)
3位:ダークナイト ライジング(10億8400万ドル)
4位:ホビット 思いがけない冒険(10億2100万ドル)
5位:アイス・エイジ4/パイレーツ大冒険(8億7700万ドル)
6位:トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part2(8億2900万ドル)
7位:アメイジング・スパイダーマン(7億5700万ドル)
8位:マダガスカル3(7億4600万ドル)
9位:ハンガー・ゲーム(6億9400万ドル)
10位:メン・イン・ブラック3(6億2400万ドル)
2012年のトップはMCUシリーズ初期の節目となった「アベンジャーズ」。この頃からほぼ毎年MCU作品がトップ争いに参加するようになります。
他にもアメコミやアニメ映画を中心に若い層向けの作品が多い中、2位が「007」というのがけっこう目立ってますね。「アベンジャーズ」がなかったら余裕の年間トップになっていたでしょう。
2013年の興行収入ランキングトップ10
1位:アナと雪の女王(12億7700万ドル)
2位:アイアンマン3(12億1500万ドル)
3位:怪盗グルーのミニオン危機一発(9億7000万ドル)
4位:ホビット 竜に奪われた王国(9億6000万ドル)
5位:ハンガー・ゲーム2(8億6400万ドル)
6位:ワイルド・スピード EURO MISSION(7億8800万ドル)
7位:モンスターズ・ユニバーシティ(7億4900万ドル)
8位:ゼロ・グラビティ(7億4300万ドル)
9位:マン・オブ・スティール(6億8800万ドル)
10位:マイティ・ソー/ダーク・ワールド(6億4400万ドル)
2013年の1位は日本でも空前のブームになった「アナと雪の女王」。他はアメコミからアニメ映画、大人向けの作品までバランスのいい年ですね。
シリーズ続編系の作品が多くて、大作シリーズの強さが実感できます。
2014年の興行収入ランキングトップ10
1位:トランスフォーマー/ロストエイジ(10億8700万ドル)
2位:ホビット 決戦のゆくえ(9億3900万ドル)
3位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(7億7400万ドル)
4位:マレフィセント(7億5800万ドル)
5位:X-MEN: フューチャー&パスト(7億4800万ドル)
6位:ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス(7億2800万ドル)
7位:キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(7億1400万ドル)
8位:アメイジング・スパイダーマン2(7億0800万ドル)
9位:猿の惑星: 新世紀(7億0800万ドル)
10位:インターステラー(6億7100万ドル)
2014年は興行収入的には特大のヒット作が少ない年ですね。トップの「トランスフォーマー/ロストエイジ」が唯一の10億ドル超えで、3位以下が7億ドル台でだんご状態になってます。
そして「アニメ映画のランクインが0」という珍しい年でもあります。
ジャンル・カテゴリごとの作品数
アクション映画:10
SF映画:4
ファンタジー映画:9
コメディ映画:1
アニメ映画:14
アメコミ映画:12
ここからはデータをまとめつつトップ作品の傾向を考察していきます。
まずは映画のジャンルやカテゴリ。こうして見てみると、やっぱり大作中心になるためか、アクションとファンタジーの人気が目立ちますね。特に「トランスフォーマー」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ワイルド・スピード」「ハンガー・ゲーム」あたりのシリーズ作品がめちゃめちゃ強いです。
逆にコメディやヒューマンドラマなどは、トップレベルの興行収入レースでは派手な大作にほぼ敵わないことが分かります(そもそも作り手もそういう世界規模の大ヒットを狙っていないと思いますが)。
そんな中で純粋なコメディ映画としては唯一ランクインしてる「ハングオーバー」は、どれだけ凄いヒット作なのかよく分かりますね。
そしてやはりというか、映画のカテゴリとして際立って強いのがアメコミ映画とアニメ映画。
2010年代前半はまだまだMCUシリーズは序盤でしたが、それでもMCU外の「アメイジング・スパイダーマン」シリーズやDCコミックス系の映画も合わさって、実に10作品以上のアメコミ映画がランクインしてました。
アニメ映画はディズニー系とその他のスタジオの作品がバランスよく混ざり合っていて、常に安定してランクインしてます。
主な配給会社ごとの作品数
ワーナー・ブラザース:11
パラマウント:6
ユニバーサル:4
コロンビア:5
20世紀フォックス:4
ライオンズゲート:5
マーベル・スタジオズ:5
ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ/ピクサー:8
ドリームワークス:4
次はちょっとマニアックな考察ですが、配給会社ごとのトップ10ランクイン作品数をまとめてみました。
パッと見で目立つのは、10作品以上をランクインさせているワーナー・ブラザーズの強さ。「ホビット」シリーズや「ハリーポッター」シリーズ、DCコミックス系のアメコミ映画を抱えていることもあって、圧倒的です。
そして、実はそれを超える勢いで強いのがウォルト・ディズニー・ピクチャーズです。アニメ映画や「マレフィセント」などのファンタジー作品を中心に安定してヒット作を生み出している上に、実はマーベル・スタジオもこのディズニーの傘下。グループ全体で見たらディズニーがトップだったりします。
ディズニーは2017年には20世紀フォックスも買収したし、今後はハリウッド最大手の配給会社になるのは間違いないでしょう。
他の配給会社はどこもいい勝負ですが、ドリームワークスがパラマウントから20世紀フォックスに渡っていたりして(しかも2016年にはユニバーサルの傘下になったりして)権利関係がけっこう複雑です。単純に配給会社ごとで作品数を分けるのが難しかったりします。
そして地味にひっそりと強いのがライオンズゲート。もともと中規模作品が多い配給会社ですが、この2010年代前半は「ハンガー・ゲーム」シリーズと「トワイライト」シリーズのおかげでけっこうな好成績を収めてるのが印象的です。
世界興行収入ごとの作品数
10億ドル以上:12
7億ドル~10億ドル未満:21
5億ドル~7億ドル未満:13
5億ドル未満:4
次は興行収入ごとの作品数の内訳です。こうして見ると、「世界興行収入7億ドルを超えるヒットを記録したら、トップ10入りは確実」だと分かります。
年度ごとのばらつきもけっこう凄くて、2011年のように「トップ3作が10億ドル超えで4位からはいきなり7億ドル未満」なんて年もあれば、2014年のように「10億ドル超えは1作のみで、7億ドル台が団子状態」なんて年も。
年によっては、4億ドル台でトップ10に入れている作品もあります。
大作映画の中心地ハリウッドの製作陣も、1億ドル単位のヒットの動向についてはまったく予想できないのが伝わってきますね。
シリーズ続編やスピンオフ、リブート/リメイクじゃない単発作品:9作
シリーズ続編作品や、最初からシリーズ化前提の作品、既存作のリメイクやリブート、スピンオフの作品を除いた完全な単品映画のランクインは、わずか9作品です。
つまり、他の41作はすべて何かしら過去のヒット作と絡みがあったり、大資本を投じたシリーズ化プロジェクトとして進められていた作品ということ。「ハリウッドは人気映画の続編化に頼りすぎ」と言われている現状の危うさがよく分かりますね。
さらに、この単発9作品には「アナ雪」「マレフィセント」「アリス」「ラプンツェル」などディズニーブランドである程度ヒットが約束されていた作品も含みます。しかも結局ここからシリーズ化されたものが多数。
ハリウッドが続編に頼ってるというか、「10億ドル近いヒットを生み出して市場を支えるためにはシリーズ化やブランド化に頼らざるを得ない」という現状が伝わりますね。
そんな中で、完全単発の「インセプション」「インターステラー」をランクインさせてるクリストファー・ノーラン監督の強さは半端じゃありません。ただでさえヒットさせづらいSFジャンルなのに。凄すぎます。
まとめ
どうでしょうか。2010年代前半の5年分を考察しただけでも、ハリウッド映画界の構造やムーブメントがなんとなくつかめますね。
ここから2010年代後半や、逆にもっと昔の2000年代、1990年代を見ていったらどんな全体像が見えるのでしょうか。随時執筆して更新していくつもりなのでお楽しみに。