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「ダスト・ウォーカー」感想・評価 後半の失速っぷりが凄まじい(ネタバレなし)

ダスト・ウォーカー(字幕版)

「さびれた田舎町でモンスターが暴れる」というのは、パニック映画としてはやり尽くされたシチュエーションですね。しかし、だからこそ「こういう感じのB級映画が好き」という人にとってはかえって安心感があります。

この「ダスト・ウォーカー」もそんなタイプの映画で、映像面のクオリティも高いし「何か異常事態が起きてるぞ…」という前半の緊張感は良さげでした。が、そこから後半に行くにつれての失速っぷりが凄まじく、目に見えてボロが出てがっかりさせられました。

詳しくレビューしていきます。

 

「ダスト・ウォーカー」あらすじ

www.youtube.com

2019年 オーストラリア

監督:サンドラ・シベラス

キャスト:ジョリーン・アンダーソン、ステフ・ドーソン、タリーナ・ナビード

 

オーストラリアの田舎町に、宇宙からの飛翔物体が落下。その翌日から、町で人々が狂暴化して暴れたり、ペットや野生動物が怪死するという事件が多発する。

町に住む女性警官ジョアンナは事態に対処しようとするが、しだいにパニックは広がり、さらに巨大モンスターの出現や砂嵐の発生など異常が加速していき…

 

「ダスト・ウォーカー」感想

CGのクオリティや序盤の描写はポイント高め

あくまで「低予算B級映画にしては」という前提での話ですが、映像面のクオリティはやたらと高めです。

ゾンビ化した人々の特殊メイクはなかなか真に迫るリアルさで、血管の浮き出た人々が異様な表情でたたずむ姿はけっこう不気味でした。さらに、四足歩行のエイリアンが地中から飛び出してくるシーンもわりとハイクオリティです。

そして一番よくできていたのが、地平線を埋めつくすほどの巨大砂嵐のシーン。ここだけは大作パニック映画と比較してもいいくらいの出来のよさで、映画全体のスケールをでかく見せてくれました。

 

アクション的な盛り上がりにもっと力を入れてほしかった

上記のように映像面のクオリティはB級映画としては高めなんですが、それが動きのあるアクションシーンになるとまったく活かされていないのが残念でした。

「日常が壊れていく違和感」を見せる序盤はよかったけど、中盤以降で「ゾンビ化した人々との戦い」がはじまると一気に映画としてのクオリティが落ちます。

 

ゾンビ化した人々の演出自体は本当によくできてたのに、それが「生存者を襲う」というアクションシーンになると急にがっかりポイントに。「ゾンビ役が殴るふり→やられた人がワーッと痛がって寝転ぶ(勢いよく倒れるほどの度胸はない)」という迫力皆無のがっかりアクションの連続です。それまでの緊張感が台無し。

砂嵐のシーンも出来はいいのにほとんど背景として映るだけだし、インパクト抜群のエイリアンも人間との絡みはほとんどなく「よくできたCG映像」としてカットに映るだけです。

「映像効果にはそこそこお金をかけたけど、アクションシーンをまともに演出できるスタッフはいなかったんだろうな」と製作側の事情が見えてしまいます。殴り合いや銃撃シーンを監修できる人さえいれば、パニック映画として数段上のクオリティになったはずだろうに…と思わずにはいられません。

 

ストーリーぶん投げすぎ

あと、いくらなんでもストーリーを適当にぶん投げすぎです。起承転結じゃなく「起承承転」くらいで終わりやがった。

いきなり隕石が落ちてきて、そこから町の住人に異常が広まっていくあたりはテンポも演出もいい感じだったのに、その「異常がじわじわ広まる」のシーンをいつまでも続けてついに尺の後半まで突入。

超しょぼいアクションとうっすい人間ドラマ(笑)がダラダラと続いて、登場人物たちがどうしたいのかもよく分からないままいつの間にか終盤でした。

そして、「もしかしてこれがクライマックスの盛り上がりのつもり…?」と色んな意味で衝撃な展開を経て、何も解決しないままエンディング。これで観客が納得すると思ったなら脚本家の頭は〇〇〇てます。

 

いくらB級パニック映画だからって、物語として破綻するほど説明不足では駄目です。良作とされるB級映画は「楽しいツッコミどころと整合性のとれたストーリー」を両立してるからこそ評価されてるのであって、決して何もかもが適当でいいわけじゃありません

そこのところをはき違えた感が強くて、しかも作風自体は変にシリアスにかっこつけてるからネタ映画としても振り切れてなくて、どこに着地させたいのか分かりませんでした。

 

まとめ:もうちょっとテンション上げてくれれば…

映像面はほんとに「なかなかやるじゃん」と思わせるクオリティだったので、もうちょっとアクションに対応できる人材を入れてB級パニックとしてテンション上げてくれれば…と観ていて悔しかったですね。

出だしでは「トレマーズ」や「スパイダー・パニック」のような良作モンスターパニック映画になれるポテンシャルも感じられただけに、後半にいくほどにボロが出て失速していく感じが残念でした

映像のクオリティを差し引いても物語として面白くないので、ちょっとおすすめとは言い難い凡作です。

ダスト・ウォーカー(字幕版)

ダスト・ウォーカー(字幕版)

  • 発売日: 2020/01/10
  • メディア: Prime Video