ハリウッドの災害パニック映画とは違って、現実の災害では自然による破壊のみならず、「暴動」「火事場泥棒」など人間による被害が起こることもあります(特に海外では)。
この「アフターショック」はそんな「災害が引き起こす人々のパニックや暴力」という、災害現場の残酷で生々しい描写がメインとなった珍しい作品です。
ドン引き&トラウマ必至の、もはやホラー映画と呼べるレベルの人災描写は圧巻です。詳しくレビューします。
「アフターショック」あらすじ
2012年 アメリカ
監督:イーライ・ロス
キャスト:イーライ・ロス、アンドレア・オズヴァルト、アリエル・レビ、ニコラス・マルティネス
南米のチリを訪れたアメリカ人観光客のグリンゴたちは、現地のクラブで同じく観光客のモニカたちと知り合う。
ところが、突如そこで大きな地震が発生。建物が崩壊して死者や重傷者が多発する大惨事となり、街の秩序は完全に崩壊する。
人々は暴徒化し、さらに付近の刑務所が破壊されて大勢の囚人が脱走するなど、ますます事態が悪化していき……
「アフターショック」感想
胸くそ悪いシーンしかない
「ホステル」や「グリーン・インフェルノ」といった凄まじいトラウマ映画を数多く手がけて、ホラー映画界では広く名前を知られているイーライ・ロス監督。
その彼が自らメガホンをとり、主演まで務めただけあって、この「アフターショック」のトラウマレベルも凄かったですね。ここまで胸くそ悪いシーンしかない映画も珍しいです。
知らない街での大災害に混乱する主人公たちを唯一助けてくれた親切なおばちゃんが即行で死ぬのは序の口で、簡単に腕は飛ぶし首も飛ぶし人が燃えるし地獄描写のオンパレード。
グリンゴの友人で傲慢な性格のポヨが、珍しく周囲の人々に頭を下げて瀕死の友人を病院行きのロープウェーに乗せてやったのに、そのロープウェーが落ちて友人も結局死んだり、あらゆる行動が裏目に出るのが皮肉ですね。
さらに、そんな前半のショック描写すらただの前菜だと言わんばかりに後半が酷い。「刑務所から脱走した極悪ギャングの集団が追ってくる」だなんて、字面を見ただけで失神ものの恐怖です。
そんな奴らに捕まったらどうなるか…という最悪の想像を、その最悪なまま描写しちゃうのはさすがイーライ・ロス監督。レイ〇もリン〇も手加減なく映し出して、観ているこちらのヘイトは溜まりっぱなしです。
しまいには主演の自分を生きたまま丸焼きにして、それを生で映してしまうんだから徹底してますね(Amazonビデオで見たらモロすぎてぼかしが入ってました)。
これだけヘイトを溜めておいて、それを一切発散させないまま最悪のエンディングへ。ここまで酷いともはや笑いが出ます。
これも災害の現実のひとつ
さすがにこれは映画だから過剰にエグい展開になるようにストーリーが組まれていますが、ひとつひとつのエピソードを見ると、この映画と同じことが現実の被災地でもわりと起こってるから恐ろしいですね。
治安のよさでは世界トップクラスの日本ですら、被災地での窃盗や被災者を狙う暴行への警戒情報がよく回ってます(SNSが発達した現代だからこそ、そうした犯罪の存在が浮き彫りになったわけですが)。
ハリウッドのパニック映画は娯楽性を重視してるので、「力を合わせて自然災害に立ち向かう人々」しか描かれません。
が、現実の被災地では混乱に乗じてよからぬことをする人が確実に一定数いるし、そういった災害の醜い側面を一切の容赦なく描く、という意味ではこの映画もけっこう重要な一作かもしれませんね。
まとめ:自己防衛って大事
いくら災害現場だからといって、この映画ほど酷い有様になることは日本ではあり得ないと思います(海外だってここまでの惨状になることはほぼないだろうし)。
が、その油断に乗じて悪いことをする人もいる以上、自己防衛も大事だな~と思わされますね。
当のイーライ・ロス監督はそんなことまで考えてこの映画を作ったわけじゃないと思いますが、100%フィクションとは言えないからこそのリアルな恐怖も感じられる映画でした。
本当に不快な描写が多いので観るには覚悟がいりますが、異色の災害パニック映画としておすすめの良作です。
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