韓国発のゾンビ映画といえば「新感染 ファイナル・エクスプレス」が大きなインパクトを残しましたね。
もともと韓国映画は邦画と比較しても「ハリウッドっぽいパニックアクション大作」を描くのに慣れてる感がありましたが、その中でもこの映画は圧倒的でした。
そんな「新感染~」の前例があるから、当然この「王宮の夜鬼」も期待するじゃないですか。ところがいざ観てみると…なんか安っぽくない?という印象でした。
詳しくレビューします。
「王宮の夜鬼」あらすじ
2018年 韓国
監督:キム・ソンフン
キャスト:ヒョンビン、チャン・ドンゴン、チョ・ウジン、チョン・マンシク
白目を剥いて狂暴化し、正常な人間に襲いかかる「夜鬼」と呼ばれる存在になってしまう奇病が広まる朝鮮。清から帰国した王子イ・チョンは国の惨状を目の当たりにする。
さらに、国王の側近キム・ジャジュンが王の座を狙い、その謀略で兄が死んだことを知ったチョンは、兄の部下だったパク従事官らと王宮へ向かうのだった。
夜鬼への感染は王宮にまで広がり、チョンは夜鬼の群れとジャジュンの両方と戦うことになり……
「王宮の夜鬼」感想
アクションも派手でキャラもいいはずなのに
まずこの映画、アクションは本当に凄いんですよね。スピード感も派手さも「新感染~」と並ぶレベルで殺陣の切れ味も抜群。ゾンビアクション映画として完璧と言っていいレベルです。屋根を飛び回り、壁や塀を平気で駆け上がってくる夜鬼の大群は「ワールド・ウォーZ」なんかを彷彿とさせました。
やっぱり韓国映画界が本気でアクションを撮ると凄いですね。はっきり言って日本の大抵のアクション映画じゃ足元にも及びません。
登場人物のキャラもいい。主演のヒョンビンは序盤の不良王子から後半での成長っぷりが鮮やかだったし、そのお付きのアンタッチャブル山崎そっくりなおじさんもほどよいコミックリリーフでした。
そして何よりチャン・ドンゴンですよ。ベテラン実力派だけあって凄まじい貫禄と存在感。彼が画面に出てきた瞬間に映画全体の空気が一気に引き締まったのを感じましたね。表情のひとつから立ち振る舞いに至るまで、目を惹きつけるインパクトがありました。そこに居るだけで明らかに空気が違います。
アクションも完璧。キャラも最高。そのはずなのに……なぜか「安っぽい」と感じてしまったんですよね。
その最大の要因は「アクションシーン以外のカメラワークやカット割り」だったように思えます。戦闘じゃない場面でのアングルやカットの切り替わりから悪い意味での「ドラマっぽさ」が漂ってる気がして、細かい部分を詰めるお金と時間のなさを感じてしまいました。
特に本格的な戦闘シーンが始まる前の序盤は「これドラマか?」とモヤモヤした気持ちに。その後は戦闘シーンで「凄い!」と驚くものの、平時のシーンになると「あれ…?なんか…」と微妙な気分になることのくり返しです。
アクションやキャラ、セットや美術などひとつひとつのパーツはハイクオリティなのに、そのまとめ方やつなげ方、仕上げが甘いことで大作映画としての高級感に欠けてしまってる気がしました。
中盤の大乱戦がピークだった
あと、ゾンビアクション映画としての盛り上がりのピークは中盤(映画開始から70~85分ごろの王宮での乱戦)だったように思えます。そこが凄すぎたからてっきりクライマックスなのかと思ったら、さらにそれから30分以上もストーリーが続いて驚きました。
ただ、規模的にはどうしてもこの中盤の戦闘が最大級なので、それ以降の展開はちょっと冗長にも感じてしまいます。そもそもが全体の尺が2時間強とホラーアクション映画としては長めでダラけた部分も感じてしまったので、あと15分くらい縮めてくれたら……とも思えました。
まとめ:パニック映画なのか歴史サスペンスなのか
ひとつひとつの要素は本当にハリウッドレベルのクオリティなのに、「アクションシーンとそれ以外のバランス」とか「ゾンビアクションと歴史政治サスペンスのバランス」とか、とにかく全体的にバランスの悪さが気になってしまう作品でした。
良作と言える範囲内だろうし、ゾンビ映画ファンも出演者のファンもまあまあ楽しめるとは思うけど、どの層が観てもなんか気になる/引っかかる部分が残っちゃうんじゃないでしょうか。「誰が観ても65点」みたいな、器用貧乏な感じがします。
長めの暇つぶしや息抜きとしてはそれなりに楽しめました。
同じ「王朝時代の挑戦にゾンビ×ヴァンパイア的な疫病が蔓延」という設定なら、Netflixドラマ「キングダム」の方が完成度は高かったかな↓