マフィアに最愛の娘と夫を殺された女性が、自らを鍛え上げて壮絶な復讐をくり広げる「ライリー・ノース -復讐の女神-」。
家族を殺された男が犯人に復讐、という映画はわりと見かけますが、それの女性主人公版で、しかもここまでノワールやバイオレンス寄りの作品は珍しいですね。
ややB級感もありますが、「復讐」の一点にフォーカスをあてた作りでなかなか楽しませてくれる良作でした。詳しくレビューしていきます。
「ライリー・ノース -復讐の女神-」あらすじ
2018年 アメリカ
監督:ピエール・モレル
キャスト:ジェニファー・ガーナー、 ジョン・ギャラガー・Jr、 ジョン・オーティス、 フアン・パブロ・ラバ
裕福とは言えないながらも娘と夫と平和に暮らしていた女性ライリーは、マフィアの銃撃によって2人を失ってしまう。さらに、マフィアの手が回された検察や判事によって、実行犯たちは無罪になってしまう。
ライリーは自らの手で復讐を果たすため、格闘術や銃撃戦の技術を身に着ける。そして家族の死から5年後。ライリーの壮絶な復讐が始まる。
「ライリー・ノース -復讐の女神-」感想
女性版/復讐版「96時間」って感じ
序盤でテンポよくストーリー背景を説明して、その後はひたすらマフィアとの戦いを描く……という展開で既視感を覚えたのが、リーアム・ニーソン主演の「96時間」でした。
で、wikiを見てみると、なんと監督が「96時間」のピエール・モレルさんご本人。どうりでテンポ感やアクションの見せ方が似てるわけだ。
見心地はまさに「女性版&復讐版96時間」って感じで、あのハイスピードアクションサスペンスがよりバイオレンスに、より悲愴感を漂わせながら展開されて面白かったですね。
も~っとアクションがあってもよかった
主演のジェニファー・ガーナーはゴールデングローブ賞の受賞経験もある名女優ですが、ものすごくアクションが得意とかいうわけではなかったはず。
それなのにこの映画のためにかなりの訓練を積んだのか、アクションシーンのクオリティはそれこそ「96時間」のリーアム・ニーソンと比べても遜色ありませんでした。
特に中盤でマフィアの拠点のひとつに殴りこむシーンは良かったですね。無駄のない動きで男の多勢を全滅させる銃撃戦はかなり様になってます。爽快感ばっちりです。
ただ、アクションシーン的にはそこがピークかな。終盤も派手な爆発シーンやマフィア組織の大検挙など見どころは多いものの、あの過激なアクションは控えめ。お金の都合かジェニファー・ガーナ―の限界だったのか、またはリュック・ベッソンがプロデューサーにいないからなのか。ちょっとバランス悪く感じました。
個人的には、も~っと終盤までアクションのボリュームを詰めてほしかった感もありました。せっかく「スラム街でマフィアの集団とライリー・ノース」という構図になったんだし。
復讐までの過程をもう少しじっくり見たかった
あとストーリー展開的に気になったのが、「ライリー・ノースが復讐を始めるまでの描写が浅い」という点。なんというか、気づいたら復讐がヌルっと始まってるんですよね。
まず冒頭で復讐の一部を見せて、その後に回想で事件をふり返る……みたいに複雑な構成にしてありましたが、わざわざこんなに時系列いじらなくてよかったんじゃ…?ふつうに家族で幸せそうなシーンから始めてほしかったです。
「ライリーが復讐のために戦闘術を学んだ」というシーンもかなりあっさり気味だし、実行犯や検察官への復讐は直接描写せずニュース映像だけで済ませてるし、「なんでそこを省略した?」とツッコミたくなる部分がけっこう目立ちますね。
その割に、女性FBI捜査官を話に絡ませたのに活躍もさせずあっさり退場させたり、実は裏切り者だった刑事も特に見せ場もなく死んだり、色々と要素を詰め込もうとしたけどいまいち機能してない感もありました。
まあ、「だから駄作」というほどのものではないし、ストーリー自体のテンポはいいので退屈することもありませんが、だからこそ「もっと意味のある要素だけでギュッと固めたら濃さも増したのに」と思えてしまいます。
まとめ:王道のバイオレンスアクション映画として良作
気になる部分もちょこちょこありましたが、王道バイオレンスアクション映画としては十分「良作」と言っていいレベルだと思いました。最後にはちゃんと復讐がやり遂げられるから後味も悪くないし、戦闘シーンの切れ味はアクション映画ファンでも納得の高クオリティです。
「一度は警察に捕まるも、いい刑事の手を借りて逃亡」という終わり方からして、あわよくば続編を作る狙いもあるみたいですが、どんな話にするんですかね。法で裁けない悪を討つダークヒーロー的な話にでもするんでしょうか。