「戦争で文明が崩壊したあとの世界」の映画って、意外とオーソドックスな作品が少ないんですよね。「マッドマックス」シリーズとかは少々ぶっ飛んでてリアルとは言えないし。
そんな中で「ザ・ウォーカー」は、近年の作品としては珍しいほどにコテコテな終末アクション映画ですね。ストーリーのテーマ的には賛否両論ありましたが、この手の世界観が好きな人にとってはたまらない作品でしょう。
あらためて詳しくレビューします。
「ザ・ウォーカー」あらすじ
2010年 アメリカ
監督:アルバート・ヒューズ、アレン・ヒューズ
キャスト:デンゼル・ワシントン、ゲイリー・オールドマン、ミラ・クニス、ジェニファー・ビールス
大規模な戦争で国家が消滅し、社会が崩壊した近未来のアメリカ。心の声に導かれて一冊の本を運びながら歩き続ける男イーライは、カーネギーという男が支配する街にたどり着く。
カーネギーは「崩壊した世界をまとめ上げて支配する力を持つ本」を探し求めており、イーライがその本を持っていると知り、奪おうと襲いかかってくるのだった。
「ザ・ウォーカー」感想
純粋な「終末映画」としての完成度の高さ
この映画のテーマは「キリスト教がもたらす秩序」で、それを象徴するものとしてイーライが運ぶ「聖書」があるわけですが、キリスト教にあまりなじみがない日本ではこのストーリーは感覚的に「???」となる部分が多いですよね。
こういうのは文化の違いなので「元々キリスト教圏向けのお話だから仕方ない」と受け入れるとして、純粋に「終末世界を描くサバイバルアクション映画」として観てもかなり完成度が高いです。
廃墟が広がる荒廃した世界、弱肉強食のサバイバル、西部開拓時代に逆戻りしたような街並みと、「こういうのが観たいんだよ!」という層にとってはたまらない描写と画作りですね。
そして、破天荒でヒャッハー系な終末映画と違うのが、妙に生活感がある人間の描写。「独裁者が屈強な軍団で支配することで一定の秩序が成り立っている街」という、治安が悪いなりに社会として一応成立してる感があるのがリアルです。
こういう生々しさのある終末世界の、「ちゃんとそこで人が継続的に暮らしてる」感がいいんですよね。「アイアムアヒーロー」然り「ウォーキングデッド」然り。
崩壊した街並みだけではただの廃墟だけど、「崩壊した中でも必死に生活を成立させてる」人たちがいることでそこは「新しい世界」になって、新しい魅力が生まれます。終末映画はこうでなくちゃ。
デンゼル・ワシントンがキレッキレ
主演のデンゼル・ワシントンは演技派としても知られてますが、「イコライザー」に見られるようにアクション俳優としてもバリバリ活躍してます。
「ザ・ウォーカー」も、終末世界を荒くれ者が跋扈してるんだからそこを旅するイーライがただで済むことはないわけで。あのキレッキレのスマートアクションがこれでもかと観られるのは嬉しいポイントですね。
特に中盤の街道での戦いは、アクション的にはこの映画の一番の見どころでしょう。まるで往年の西部劇映画のようなかっこよさ。デンゼル・ワシントン主演のアクション映画という点では後の「マグニフィセント・セブン」を彷彿とさせます。
荒野の一軒家での戦いでは「悪魔の銃」として西部劇でおなじみのガトリングガンまで出てくるし。アクション的には明らかに西部劇の影響が強いですね。
まとめ:妄想が捗るサバイバルアクションの良作
「文明が崩壊した世界を生き抜く」というシチュエーションが好きな人は、自分が主人公でそういう妄想を一度はしたことがあるでしょう。
この「ザ・ウォーカー」みたいに終末世界をリアルに描く作品を観たら、そんなサバイバル妄想も捗ります。テーマ的には宗教要素が強い作品ですが、純粋な終末サバイバルアクションとしても十分すぎるほど良作ですね。
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