近年のハリウッドの災害パニック映画といえば「CGによるド派手な破壊シーン」「家族の絆を描くベタなドラマ」という2大お決まりパターンがありますよね。
この「デイ・アフター・トゥモロー」は、そんなディザスターパニック大作のお約束を決定づけた作品のひとつでしょう。
2000年代以降のパニック映画界において、金字塔のひとつと言える本作をあらためて詳しくレビューします。
「デイ・アフター・トゥモロー」あらすじ
2004年 アメリカ
監督:ローランド・エメリッヒ
キャスト:デニス・クエイド、ジェイク・ギレンホール、エミー・ロッサム、イアン・ホルム
気象学者のジャック・ホールは「温暖化によって北極や南極の氷が溶け出すことで、逆に氷河期が到来する」という理論を提唱するも、アメリカ首脳からは相手にされなかった。
ところが、ジャックの提唱する現象が予想以上のスピードで現実化し、北半球に大寒波が到来。竜巻や津波などの異常気象を巻き起こし、未曽有のパニックを発生させていく。
アメリカ政府が国家存亡のために奔走する中、ジャックはニューヨークに取り残されてしまった息子サムを救出するために自ら大寒波の中へと進んでいくが……
「デイ・アフター・トゥモロー」感想
ローランド・エメリッヒ監督が確立した「現代的破壊描写」の基礎
ビルをなぎ倒す巨大ハリケーンやニューヨークを飲み込む大津波、人間すら凍らせる寒波と、異常気象系の災害パニック描写をほぼコンプリートした作りが話題になったこの「デイ・アフター・トゥモロー」。
それまでもハリウッド発の災害パニック映画はたくさんありましたが、それと比べても一線を画す派手さです。
本作以前のハリウッドの代表的なパニック映画といえば「アルマゲドン」や「ディープ・インパクト」、「アウトブレイク」など、どちらかというと「災害をバックに人間ドラマをくり広げる」系の作品が主流でした。
そんな中で、本作は「破壊シーン!次にまた破壊シーン!さらにもっと破壊シーン!」という、ド派手なCG映像で埋め尽くす系パニック映画のスタイルを確立しました。
後に続く「2012」や「カリフォルニア・ダウン」、「ジオストーム」、「イントゥ・ザ・ストーム」、「日本沈没」などのハチャメチャ系現代パニック映画は、どれもこの「デイ・アフター・トゥモロー」を直接の先祖に持つと言っても過言ではないでしょう。
また、本作のパニック描写の見どころとして「登場人物の目の前で街並みが破壊されていく」「目前まで迫る津波から主人公目線で逃げる」などの、圧倒的な臨場感が挙げられます。
この「今まさに災害の只中にいる」感はローランド・エメリッヒ監督作品の最大の特徴とも言えるでしょう。
パッと見だと「ただ派手なCGでガチャガチャやってるだけ」に思えるかもしれませんが、こういう「全体を映しつつ、災害に巻き込まれてる最中の人々の目線も見せる」という立体的な破壊描写の演出スタイルをCG技術と組み合わせて編み出した張本人がエメリッヒ監督です。
さすがマイケル・ベイと並んでハリウッドの2大破壊王に数えられるだけのことはありますね。
ハリウッドの現代パニック映画界において、「なんとなくデイ・アフター・トゥモローっぽくしとけばあんまり外れない」というステレオタイプを確立したという意味では、実は映画史の中でもけっこう重要な作品なんじゃないでしょうか。
いいパニック映画にはいいドラマといいキャラがある
これも個人的にローランド・エメリッヒ作品の特徴だと思ってるんですが、「実は映像だけじゃなくてストーリーもけっこういい」んですよね。
そもそも、彼がストーリーダメダメ監督みたいに言われる理由が分かりません。「インデペンデンス・デイ」の熱いストーリー書いたのもこの人だし、エンタメ映画の脚本家としてもふつうに超凄い人だと思います。国も世代も性別も問わず、「ほぼ全員の観客をそこそこ楽しませて納得させられる無難な人間ドラマ」を毎回ちゃんと作るってかなり凄いことだと思うんです。
もちろん批評家から絶賛されるようなものじゃありませんし、ベタベタのベタな家族ドラマがくり広げられるだけなんですが、だからこそいいんです。しっかりのめり込みながら観ても、なんとなく流し見しててもちゃんと分かるし楽しい。この絶妙な大ざっぱさがいいんです。
しかも本作は地味にデニス・クエイドとジェイク・ギレンホールという演技派W主演だから、演技面でもけっこう見ごたえがあります。若くてかわいいジェイク・ギレンホールを大迫力の映像の中で観れる貴重な作品ですね。
まとめ:コテコテの災害パニックが観たいなら間違いなしだね
ある意味で「現代的なハリウッド式ディザスターパニックはここから始まった」とも言える作品です。こういう量産型パニック映画はここからどんどん作られていくわけですが、その第1号的な作品として重要な名作です。
ベタベタでコテコテの、ありとあらゆる王道を詰め込んだ災害パニック映画として「こいつを選んどけば間違いないぜ!」と言える作品でしょう。
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