世界的に人気を集めるカプコンのホラーゲームシリーズ「バイオハザード」。その実写化作品であるハリウッドの映画「バイオハザード」は、ゲームとはまた違った世界観の作品として、賛否両論ありつつも6作目まで続く長寿シリーズとなりました。
そんな映画「バイオハザード」シリーズの見どころやツッコミどころを、あらためてふり返ってみます。
- バイオハザード(2002)低予算ながらスリリングに仕上がった名作
- バイオハザードII アポカリプス(2004)原作ファンから絶大な高評価
- バイオハザードIII(2007)ここからどんどん映画オリジナル路線に
- バイオハザードIV アフターライフ(2010)ゲームっぽさの強まりと世界観の広げすぎ
- バイオハザードV リトリビューション(2012)さらに強まったゲーム感
- バイオハザード: ザ・ファイナル(2016)設定の後付けと過去作との矛盾が多すぎる
- まとめ:今ふり返ってみれば愛すべきシリーズだったね
バイオハザード(2002)低予算ながらスリリングに仕上がった名作
全ての始まりはこの1作目「バイオハザード」。もう20年ほど前の映画になるんですね。
アンブレラ社やT-ウイルスといったキーワードは原作ゲームと共有しつつ、ストーリーや登場人物はほぼ完全オリジナル。ウイルス漏洩が発生した地下の研究施設で、特殊部隊員たちがゾンビに襲われるというサバイバルホラーな内容で、日本では特に大きなヒットを記録しました。
ハリウッド映画としてはかなりの低予算映画で、ゾンビ役エキストラに手の空いてるスタッフを総動員したり、背景セットが実は段ボールとアルミホイルで作られていたり、製作陣の涙ぐましい努力の末に完成した本作。ところどころB級っぽさもありながら、スピード感のあるストーリーとスリリングなアクションで魅せてくれています。
特にほぼ全てのスタントを自らこなしたミラ・ジョヴォヴィッチの格闘戦は圧巻ですね。彼女がアクション女優として本格的にブレイクしたきっかけの作品と言えます。
また、未だにホラー映画ファンの語り草になっている序盤のレーザートラップ殺戮シーンが、映像のインパクトが強すぎてゲームに逆輸入されたというエピソードも。
ゲームとは別物でありながら、実写化作品として大成功した稀有な例でしょう。
バイオハザードII アポカリプス(2004)原作ファンから絶大な高評価
ヒット映画の続編は失敗する、というジンクスもあるハリウッドですが、この「バイオハザードII アポカリプス」に関しては完璧な大成功といっても過言ではないでしょう。
「1作目の閉鎖空間から2作目では大都市に」というステージの広げ方も原作ゲームに習っていて、よりスケールアップしながら楽しませてくれます。
街全体でくり広げられるゾンビと特殊部隊の攻防、前作のリッカーを上回る強力なボスキャラ、ゾンビのみならずアンブレラ社という巨大組織も敵になる展開……もはや単なるホラー映画を超えた世界観ですね。
また、原作の人気キャラクターであるジル・バレンタインも登場して、その再現度が「ゲームの中からそのまま出てきたみたい!」とゲームファンに絶賛されたのも注目ポイント。さらには同じくゲームの主要キャラであるカルロス・オリヴェイラも登場してたり、原作へのリスペクトをしっかり示しているのも映画の成功の要因でしょう。
ゲームの実写化とオリジナルストーリー展開のバランスをうまくとってますね。
バイオハザードIII(2007)ここからどんどん映画オリジナル路線に
原作ゲームファン・映画シリーズファンともに、評価が怪しくなってきたのがこの「Ⅲ」から。
T-ウイルスの蔓延で世界が崩壊し、主人公アリスをはじめとしたわずかな生存者たちは荒廃した世界でサバイバルを続けていた……というお話ですが、「ウイルス蔓延でなんで世界が砂漠化するんじゃい」とか「ジルとアンジェラはどこいった」とか「なんで前作でワクチン打ったL.J.がふつうにゾンビ化するんじゃい」とか全体的にツッコミどころが多め。
実際はジルとアンジェラについては小説版を読めば消息が分かるそうですが、映画しか観ない大多数の人にとってはただ「?」な部分でしょう。
こうした世界観の綻びのせいでシリーズファンからの評価はいまいちな本作ですが、個人的には大好きです。終末ホラーパニック的なテイストが強めで、この後に続く「Ⅳ」以降と比べてもよっぽど真っ当にゾンビ映画してると思います。
全6作の「バイオハザード」シリーズですが、この「Ⅲ」までのホラーテイストと、「Ⅳ」以降のSFアクションテイストに分けることができますね。
また、ゲームでは主人公的ポジションの一人であるクレア・レッドフィールドが登場したのも見どころ。さらには宿敵アルバート・ウェスカーも顔見せしてくれてます。
バイオハザードIV アフターライフ(2010)ゲームっぽさの強まりと世界観の広げすぎ
この4作目「バイオハザードIV アフターライフ」からは、それまでとはうって変わってさらにアクション映画よりのテイストになりましたね。
また、戦闘やクリーチャーの演出などでゲームっぽさが強まったのも特徴。スマートできれいになった一方で、前作までのような生々しいゾンビホラー感はなくなりました。
ストーリーも「アリスのクローン軍団がアンブレラ社の本部を襲撃して大銃撃戦」みたいにリアリティをかなぐり捨てていて、東京の地下に要塞のような秘密基地があることになってたり、色々ぶっ飛びすぎです。
映像的には派手ですが、こうした世界観の広げすぎ演出が続編以降に響いてくることになるんですよね……
ただ、クレアが引き続き準主役として登場して、さらに彼女の兄であるクリス・レッドフィールドも出てきて、加えてウェスカーと本格的なバトルが描かれたのはゲームファンにとっては嬉しいポイントです。こういう原作との絡め方は相変わらずけっこう上手いんですよね。
バイオハザードV リトリビューション(2012)さらに強まったゲーム感
前作でとんでもない大風呂敷を広げて終わったからどうなるのかと思ったら、その風呂敷をまったく畳まず新たな風呂敷を広げだした5作目。
冒頭から派手なアクションで攻めて、その後は「ゾンビやクリーチャーとひたすら戦ってエリアをひとつずくクリアしながら進んでいく」というあからさまにゲームっぽい展開。もはや1作目らへんのホラー映画感は皆無ですが、こういうスタイリッシュアクション映画として受け入れた上で観ればふつうに面白いです。
さらに、レオンやエイダ、バリーといったゲームの主要キャラも一挙登場。さらにさらにレインやカルロス、ワン隊長といった映画シリーズ序盤の主要キャラがクローンとして登場したり、ファンサービスは大盛りです(なんでただの下っ端戦闘員であるレインたちのクローンが作られてるのか、とかツッコミどころはさておき)。
一方で、クレアとクリス、Kマートがとくに説明もなく退場してたりして、ストーリー的な説明不足も加速。説明しきれてないというか、ストーリーの整合性をとるのを諦めてる感がありますね。
バイオハザード: ザ・ファイナル(2016)設定の後付けと過去作との矛盾が多すぎる
前作「Ⅴ」でストーリーのバランスとりを放棄した感がありましたが、最終作となるこの「バイオハザード: ザ・ファイナル」ではそれがさらに加速。
まず前作のラストで「ホワイトハウスを舞台にクリーチャーの大群と最終バトル!」な雰囲気を出しながら、その過程をまるまる省略。気づけばレオンもエイダもジルもいなくなっていて、あまりにも説明不足です(小説版では全滅した描写があるそうですが)。
さらに、アイザックス博士が再登場して「Ⅲ」の彼はクローンだったと分かったり、アリスですら実はクローンだったと分かったり、ウェスカーがただのザコかませキャラと化してたり。
本作内での矛盾点も過去作との矛盾点もどれから挙げればいいのか分からないほど多いし、ツッコむべきところが多すぎてローラが出演してることに触れる暇もありません。
が、そこまで含めて「バイオハザード」シリーズの個性だとも言えるし、最後のアリスの結末は意外とグッときました。なんやかんやで15年も観てきたキャラクターの戦いがやっと終わるのは感慨深いものがありましたね。
まとめ:今ふり返ってみれば愛すべきシリーズだったね
シリーズ後半にかけては明らかなバランス崩壊も目立つし、間違ってもよくできた映画とは言えませんが、いざ完結してふり返ると「意外と悪くなかったね」と思えてしまうから不思議です。
駄目なところはたくさんありますが、どちらかというと「愛すべきポンコツ映画」「ネタとして楽しめるおバカ映画」的な感じ。ストーリーの矛盾が嫌いな人はまったく受けつけないと思いますが、こういうB級アクション映画として観ればぜんぜん楽しめる許容範囲内です。
こうやって日本のゲームへの愛を発揮して、6作も映画を作ってくれたポール・W・S・アンダーソン監督には日本人として大感謝ですね。ストーリーを書く才能は全然ないみたいだけど、これからもアクション一辺倒のエンタメ映画を撮り続けてほしいです。
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