「新種ウイルスによる世界崩壊」という映画みたいな話が決して絵空事ではない今こそ注目したいのが、1980年公開の日本映画「復活の日」。
小松左京のパニック小説を原作にしたこの作品は、製作費30億円、海外キャストを多数起用して海外ロケも山盛りという、今では考えられない超大作です。
ハリウッド映画並みのスケール感はもちろん、ウイルス感染パニック作品としての生々しさも見どころの本作をあらためてレビューです。
「復活の日」あらすじ
1980年 日本
監督:深作欣二 製作:角川春樹
キャスト:草刈正雄、千葉真一、ジョージ・ケネディ、ボー・スベンソン、オリビア・ハッセー、エドワード・J・オルモス、グレン・フォード、ロバート・ボーン
イギリス軍によって開発された新種ウイルスがスパイによって持ち出されるも、スパイの乗る飛行機が墜落。ウイルスがイタリア北部にまき散らされ、「イタリア風邪」として世界中に広まっていく。
凄まじい感染力で人間のみならず動物にまで蔓延したウイルスによって、人類は壊滅状態に。ウイルスは極寒では活動できないことから、各国の南極基地の隊員たちだけが生き残る。
新たに「南極政府」が設立されて人類復活のための活動が始まるが、予想外の脅威が巻き起こっていき……
「復活の日」感想
知らずに観たら洋画だと思ってしまうほどの大スケール
初めてこの映画を観たときは「これ邦画なの…?マジで…?」と本気でビビりました。
Amazonプライムでたまたま見つけたのが鑑賞のきっかけですが、事前情報なしに観たら洋画だと思ってしまうほどのスケール感。頭では分かっていても観てるうちにだんだん「邦画を観てる」という意識がなくなってしまって、主演の草刈正雄さんが顔を出すことで「あ、そういえばこれ洋画じゃなかった…」と思い出すほどでした。
まずとにかく「日本のシーン」が少ない。ほとんどが海外と南極のシーンです。
世界中が崩壊していくパニックシーンはどれも凄まじい規模だし、アメリカ首脳部が事態を収拾しようと立ち回るエピソードはまるで昔の政治サスペンス大作を観てるみたい。明らかに邦画のスケールを超えてます。今の邦画でここまでしっかりと「世界規模のパニック」を描いてる作品は皆無でしょう。
出演者もほとんどが海外キャスト。しかもグレン・フォードやオリビア・ハッセーといった当時の有名スターが並んでます。
80年代の映画界の感覚は分かりませんが、これは同時代のハリウッド作品と比べても遜色ないほどの規模なんじゃないでしょうか。この頃ってやっぱりバブルだったのもあるのかな……
圧倒的に生々しいパンデミック描写と世界崩壊
「この頃の邦画すげー!」というだけでなく、純粋にウイルスパンデミック映画や終末パニック映画として今観てもしっかり面白いんですよね。
まず、序盤のパンデミック描写がかなり生々しい。ヨーロッパで赤ん坊を抱えた女性たちが病院に殺到して悲鳴を上げてたり、暴動が起こる西欧の町並みの中で警官隊が並んでたり。
ウイルスの脅威だけでなく、アメリカとソ連であわや核戦争勃発の危機に陥るのも、いかにもな感じでリアルです。「ソ連の大統領がウイルスで死んだ」という一報が入るシーンで、権力者だろうとウイルスの前ではただのヒトでしかないと突きつけられます。
こういった「偉い人や有名人だろうとあっさり死ぬ」という描写だったり、イタリアがまず壊滅的な被害を受けてる描写だったり、今の新型コ〇ナを連想せずにはいられませんね……
草刈正雄の凄まじいイケメンっぷり
主演は先にも書いたように草刈正雄さんですが、平成生まれの僕としては彼には「優男でダンディな感じのおじさん」というイメージしかありませんでした。
が、この頃の草刈さんってビビるくらいの超絶イケメンだったんですね。今も男前だとは思うけど、当時こんなキャラクターだったなんてこの映画を観るまで全く知りませんでした。
リーダーシップばりばりで屈強な西欧の南極隊員たちに対して、日本人の主人公は華奢な感じで一見頼りない学者肌の青年、というのもいいポジションでした。草刈さんの雰囲気に丁度あってます。
こういう人がいざとなったら覚悟を決めて活躍したり、女性ヒロインに対して男らしさを見せたりするとぐっときますね。
原作は日本SF小説史に残る重要な一作
原作は小松左京(「日本沈没」を書いた人)による長編小説なんですが、彼の著作の中でも特に初期の一作として知られてます。
こういう感じのリアルハードSF小説としては金字塔的な作品で、今でもカルト的人気を誇ってます。映画の方は批評的にも商業的にも伸び悩んだ部分があるみたいですが、原作小説の方は文句なしに日本SF界に残る名作です。
小松左京は本作や「日本沈没」以外にも「こちらニッポン…」や「首都消失」と終末系SFの傑作を多く書いてる人なので、こういう「全国・世界規模の異変で大パニック」みたいなストーリーが好きなら小説の方を手に取るのもおすすめ。
まとめ:今観ても楽しめる感染パニック映画の名作
製作から40年が経つ作品ですが、今観ても圧倒的に惹きこまれる世界観とヒューマンドラマですね。
これだけ不朽の魅力があるのも、原作者である小松左京が作り上げた徹底的にリアルで生々しいストーリーと、海外キャスト・海外ロケによる壮大な映像世界がうまく融合したからこそでしょう。
「ウイルス感染によるパニックを描いた映画」を知る上で、ハリウッドの有名作と並んで絶対に欠かせない一作です。
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