「幽霊よりも人間の方がよっぽど怖い」という言葉もあるように、人間の感情や欲望は、ときにとんでもない狂気へと変貌することがあります。そんな人間による恐怖を描いた映画は、いつの時代も人気を集めてきました。
というわけで、思わずぞっと鳥肌が立つ人間の狂気を描いた、サイコホラー・サイコスリラー映画のおすすめをまとめて紹介します。
- クリスチャン・ベールがサイコキラーを熱演:アメリカン・サイコ
- 「立場」は人を狂気に陥れる:エクスペリメント
- 現代サイコホラー映画の大傑作:エスター
- 過剰な「贈り物」が恐怖を生む:ザ・ギフト
- 常識を覆す新感覚サイコスリラー:ゲット・アウト
- 武装マスク集団が襲来:サプライズ
- 新時代のSFサイコスリラー:パージ
- モンスターより人間の方が残酷:ミスト
- 究極の胸糞サイコホラー:ファニーゲーム
- トラウマ必至の超禁断スリラー:マーターズ
- 旅行者を襲うサイコキラーたちの暴走:ホステル
- 衝撃のサイコパスホラー映画:悪の経典
- 実話をもとにサイコパスの暴走を描く:愛なき森で叫べ
- 「ファンの好意」も度が過ぎると怖い:ミザリー
- 不朽の名作サイコホラー:シャイニング
- まとめ
クリスチャン・ベールがサイコキラーを熱演:アメリカン・サイコ
「ダークナイト」や「アメリカン・ハッスル」などのクリスチャン・ベール主演で、ウォール街のエリートビジネスマンでありながら、狂気のサイコキラーの本性を秘めた男を描くサイコサスペンス。
過剰なまでの役作りで知られるクリスチャン・ベールですが、本作でもその怪演っぷりは健在。本当に狂ってるとしか思えない表情で残虐な凶行をくり広げていて、ドン引き必至です。
サイコスリラー映画としてはもちろん、一見華やかだけど空っぽなビジネスマンの世界で、空しいナルシシズムに溺れる憐れな男を描くシニカルなヒューマンドラマとしてもおすすめ。
「立場」は人を狂気に陥れる:エクスペリメント
「囚人」と「看守」の立場に分かれて2週間過ごすという心理実験が始まるも、看守役の被験者たちがだんだん狂気を見せていって……という心理サスペンススリラー。
最初は冗談半分で役割を演じていた看守たちが、次第にマジな顔で囚人たちを虐げていく豹変っぷりが見どころ。ごく普通の人間が、「相手に何でも命令できる立場」を得るだけでここまで狂ってしまうのかと衝撃を受けます。
エイドリアン・ブロディとフォレスト・ウィテカーというベテラン演技派俳優のW主演も注目ポイントで、登場人物たちの狂い方が生々しくて恐怖です。「スタンフォード監獄実験」という実在の心理実験がモデルになっているのも怖さに拍車をかけます。
リメイク元となったドイツ映画「es [エス]」と併せておすすめ。
現代サイコホラー映画の大傑作:エスター
とある家族が養子として迎え入れた少女エスター。最初は個性的で可愛らしい子だと思っていたけど、しだいに恐ろしい本性を表してきて……というお話。
エスターが主人公一家を崩壊させていく手口がかなり嫌らしくて陰湿で、あまりの性格の悪さにドン引きです。家族の中でも特に目の敵にされるママさんの追いつめられ方が可哀想すぎます。
ショッキングすぎるストーリーはもちろん、当時まだ12歳くらいだったのにこのエスターを演じきったイザベル・ファーマンの圧倒的な演技も見どころ。これは天才子役と呼んで差し支えないでしょう。
過剰な「贈り物」が恐怖を生む:ザ・ギフト
ある夫婦の家にしょっちゅう土産(ギフト)を持って訪ねてきて、過剰なまでに接近してくる男の恐怖を描くサイコサスペンス。
映画監督やプロデューサーとして注目を集めるジョエル・エドガートンがメガホンをとり、自ら出演もした作品です。
ただ「高校時代の同級生」だっただけで特別親しかったわけでもない男が、まるで親友のように訪ねてきては過剰なまでにプレゼントをくれる、という意味不明さ。表面上はいい人っぽいのに、その裏に見え隠れする狂気にヒヤッとさせられます。
男がしつこく接近してくる理由が明かされ、さらに最悪の結末を迎えるクライマックスはトラウマ級です。
常識を覆す新感覚サイコスリラー:ゲット・アウト
黒人の青年が白人の彼女の実家にお呼ばれして行ってみたら、そこには白人の両親や白人の親戚、そして黒人のお手伝いさんたちが。居心地の悪さを感じながらも、しだいにその家に隠された異常性に気づいていき……というお話。
多民族国家であるアメリカならではの社会情勢をシニカルに風刺しつつ、誰もが無意識に持っている偏見の隙をついてショッキングな超展開を見せる秀逸なサイコホラー映画です。斜め上のストーリーに「そっちか!」と度肝を抜かされます。
全世界でスマッシュヒットし、批評家からも絶賛された傑作としておすすめです。
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武装マスク集団が襲来:サプライズ
両親の結婚35周年を祝うために集まった4人の兄妹と、それぞれの配偶者・恋人たち。ところがそこへ動物のマスクを被った集団が現れ、凶器や罠で殺戮をくり広げる……というバイオレンススリラー映画。
王道のサバイバルスリラーと思いきや、ある理由によって敵も味方もグチャグチャに傷つきながら死闘をくり広げる泥沼のアクション展開へと進んでいきます。
マスク集団の襲撃の背景にある動機がとんでもなくて、人間の恐ろしさが生々しく炙り出される良作です。
新時代のSFサイコスリラー:パージ
「年に一度、12時間だけあらゆる犯罪が許される」という法律ができた近未来のアメリカを描くサスペンススリラー映画。低予算ながら、秀逸なアイデアと恐怖のストーリーで大ヒットを記録して4作目まで続く人気作になりました。
「犯罪が合法だから誰も助けてくれない中で、武装した仮面の集団が家を襲撃してくる」というシチュエーションはかなり恐怖で、不条理で胸糞の悪い怪作として一見の価値ありです。主演が名俳優イーサン・ホークなのも見どころ。
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モンスターより人間の方が残酷:ミスト
スティーヴン・キングの小説を「ショーシャンクの空に」などのフランク・ダラボンが映像化したパニックホラー映画。
田舎町を謎の霧が包み込み、しかも霧の中には謎のモンスターがいて人々を襲撃。スーパーマーケットに居合わせた人々が立てこもってサバイバルをくり広げるが……というお話です。
前半はモンスターパニック調のストーリーですが、後半に進むにつれて「極限状態でパニックになった生存者同士の争い」が激化。多くの人が群集心理で理性を失い「生け贄を捧げれば怪物は引いていくはず」といった狂気に包まれていく様がかなり怖いです。
映画ファンの間では伝説となっている最恐最悪のエンディングも見どころで、「モンスターより人間の方がよっぽど怖くね?」と心の底から思わされます。
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究極の胸糞サイコホラー:ファニーゲーム
別荘で穏やかなバカンスを楽しんでいた親子3人が、突然やってきて壮絶な暴力を振るう青年2人によって恐怖のどん底に落とされる……というショッキングサイコスリラー映画。
先に紹介した「ミスト」と並んで超胸糞最悪ホラー映画として知られる一作で、まったく罪のない家族がひたすら理不尽に痛めつけられていく様がただひたすらくり広げられます。
ハラハラドキドキするとか手に汗握るとかいうこともなく、「観客をムカムカさせることに全力を尽くしてる」としか言いようのない描写の数々。人生でトップレベルの不条理体験ができること請け合いです。
ナオミ・ワッツ主演によるハリウッドリメイク作「ファニーゲーム U.S.A.」もおすすめ。
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トラウマ必至の超禁断スリラー:マーターズ
ホラー映画界では伝説として語られているフランス・カナダ産スリラー映画。これは怖いとか刺激的とかそういうレベルじゃなく、ホラー慣れしていて、心臓が強くて、こういうカルト映画が好きな変人さんでない限り観ない方がいいトラウマ作品です。
内容は「カルト集団に監禁された主人公が、延々と痛めつけられる」というもの。想像を絶する描写の数々で直視に堪えません。
普通の人が「なんか凄そうなホラー映画だな」と軽い興味本位でこれを観たら、マジで心に傷が残るかもしれません。一生で一度も観ずに済むなら確実にその方が幸せでしょう。
旅行者を襲うサイコキラーたちの暴走:ホステル
ヨーロッパに旅行に訪れた青年が「旅行者を拉致し、痛めつけて楽しむ」という地下組織に捕まってしまう様を描いたスプラッターホラー映画。
「グリーン・インフェルノ」などを手がけたホラー映画界の鬼才として知られるイーライ・ロス監督の出世作です。
めちゃめちゃ痛そうなシーンが満載のショック映画としてはもちろん、前半・中盤・後半でガラッと雰囲気を変えてくるストーリーから人間の愚かさや醜さを味わえるヒューマンホラーとしても秀逸。
衝撃のサイコパスホラー映画:悪の経典
表向きは真面目で爽やかな高校教師の男が、凶悪なサイコパスとしての一面をしだいに露わにしていく邦画サスペンススリラー。
男らしくて明るいイメージの伊藤英明が、笑顔で殺戮をくり広げるキャラクターを演じたことが反響を呼びました。
ストーリーも「不良生徒や問題教師がひしめく高校を舞台に、サイコパスの主人公が暗躍する」というかなりブラックな内容で、不快感の溢れるエピソードが満載。倫理的に問題のありすぎる壮絶なクライマックスは、悪い意味で圧巻です。
生徒役では二階堂ふみや元E-girlsの水野絵梨奈、林遣都、染谷将太と当時の注目若手俳優が並んでいるのも見どころ。
実話をもとにサイコパスの暴走を描く:愛なき森で叫べ
邦画界が誇る鬼才・園子温が手がけたNetflixオリジナル映画。実際に起こった事件をもとに、一人の詐欺師が多くの人を巻き込みながら壮絶な惨劇をくり広げるストーリーが描かれます。
Netflixオリジナル作品の中でも圧倒的に異質な一作で、気が触れたようなハイテンションな世界観と生理的嫌悪感をくすぐるショックシーン、人間の汚いところをこれでもかと見せつける生々しいストーリーが混ざり合って、観ているだけで熱が出そうになります。
サイコな詐欺師を演じる椎名桔平はもちろん、キーとなる少女を演じた新人女優・鎌滝えりの圧倒的な存在感も注目ポイント。
「ファンの好意」も度が過ぎると怖い:ミザリー
スティーヴン・キング原作、スリラー映画史に残る超名作のひとつです。
売れっ子小説家が熱狂的なファンの中年女性に監禁され、代表作シリーズの執筆を強要されていく奇妙な日常が描かれます。
明らかにまともじゃないおばさんが暴力的に執筆を迫ってくるのはめちゃめちゃ怖いし気持ち悪いんですが、主人公の大ファンなので甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたり、「誰からも相手にされない孤独な女性」として主人公に弱音をこぼしたりと、やたらと人間味があってどこか憎めないのが見どころ。
「監禁犯と被害者」という関係なのにまるでおしどり夫婦のように見えるシュールな場面もあって、「ホラーとコメディは紙一重」なのを体感させてくれます。
不朽の名作サイコホラー:シャイニング
こちらもスティーヴン・キング原作のサイコスリラーの傑作。雪山のホテルに住み込み管理人として家族と引っ越してきた男が、ホテルにいる「何か」に精神を蝕まれて狂気に堕ちていきます。
監督はスタンリー・キューブリックで、徹底的にこだわり抜いた演出・映像の数々が見どころ。そこにジャック・ニコルソンの怪演が合わさることで、映画全体が異様な雰囲気で包まれてます。斧でドアを叩き割り、顔をのぞかせるシーンはあまりにも有名ですね。
オカルト寄りの作品ですが、どの怪現象よりも「狂って迫ってくる男」の人間描写がインパクトを感じさせます。
まとめ
以上、人間の狂気の限界に挑むようなぶっ飛んだ作品から、現実でも起こりそうな生々しいものまで、「人間が怖い!」と震撼させられるサイコホラー・スリラー映画をまとめました。
これを全部観れば、人間を信じられなくなること間違いなし。本当にトラウマレベルの作品もあるので、自分の心の強さと相談しながら手に取りましょう。
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