「超能力者」がテーマの映画といえば、「X-MEN」シリーズやMCUみたいな、ド派手なバトルアクションを想像する人が多いんじゃないでしょうか。
そんな大作と比べたら、この「PUSH 光と闇の能力者」は地味で目立たないB級作品です。ですが、劇中での「限定的な超能力を持つ人々のリアルな戦い方」は、他の超能力SF映画とはまったく違った見ごたえがあります。
個人的にもっと知られるべきだと思ってる、隠れた名作のこの映画を詳しくレビューです。
「PUSH 光と闇の能力者」あらすじ
2009年 アメリカ
監督:ポール・マクギガン
キャスト:クリス・エヴァンス、ダコタ・ファニング、カミーラ・ベル、ジャイモン・フンスー、クリフ・カーティス
一般社会に紛れて超能力者たちが暮らす世界。「ディヴィジョン」と呼ばれる秘密機関は、そんな超能力者たちをさらっては兵器化のために人体実験をくり返していた。
ディヴィジョンから逃亡を続ける超能力者のニックはある日、予知能力を持つ少女キャシーと出会う。キャシーにある作戦への協力を持ちかけられたことから、ニックは他の超能力者グループやディヴィジョンの刺客たちが絡んだ壮大な戦いに巻き込まれていき……
「PUSH 光と闇の能力者」感想
超能力者たちの絶妙な「弱さ」がリアル
この映画の超能力者たちって、X-MENのミュータントたちやMCUのスーパーヒーローたちと比べたら圧倒的に「弱い」んですよね。
「少し先の未来が(抽象的にだけど)見える」「目を合わせた人に偽の記憶を植え付ける」「手で触れずにものを動かす」「物体を別の物体だと錯覚させる」など、どれも便利そうだけど無敵のスーパーパワーとはほど遠いです。空を高速で飛んだりビルをなぎ倒したりはできません。
登場人物たちはあくまでも「ちょっと特殊な技能を持った人間」でしかなくて、それぞれの能力はうまく活用すれば強力だけど、だからといって能力者たちが無敵なわけではないんですよね。
能力には制約があるし、鍛錬を積んでないとコントロールが効かないし、本人の体調が悪ければ能力の効果も半減するし。身体もただの生身の肉体なので、撃たれたらもちろん死ぬし殴られたら怪我をします。
だからこそ「現実に超能力者がいたらこんな感じなんだろう」「このくらいの能力者ならもしかしたら本当にいるかもしれない」と思わせるリアルさがあります。「超能力」というフィクションがテーマなのに、リアリティがあるように思わせてくれるから好きです。
現実社会の中での地道な攻防が見どころ
超能力がそんな感じなので、能力者たちの戦いも「自陣営の能力をうまく組み合わせてどう立ち回るか」というチーム戦になってるのが面白いです。
キーとなる重要アイテムを互いの能力を駆使して隠し合ったり、守るべき重要人物を周囲の認知から隠したり。ときには自分の記憶すら操作して脳内を探ってくる敵をかく乱したり、サスペンス的なスリルがあります。
直接の戦闘シーンも凝った描写が多くて、「銃を念力で浮かせて死角の敵を撃つ」「空気を念力で固めて自分のパンチに威力を上乗せ」「敵兵士を洗脳して自分を守らせる」など、現実の戦い方をより拡張するような戦闘スタイルが出てくるのが見どころです。「能力と効果のコスパを考えたら、わざわざ車をぶん投げたり建物をぶち壊したりせずにこういう戦い方になるよな……」と納得させられる説得力があります。
今観たらキャストがすっごい
あと余談なんですが、この映画のキャスト今ふり返ったらすっごい豪華ですね。
まず主演がクリス・エヴァンス。今やキャプテン・アメリカとしてあまりにも有名な彼ですが、この頃はまだマイナーというか、良く言っても中堅俳優でした。彼のブレイク前の出演作って地味に良作が多いんですよね。気になる方は2010年以前の彼のフィルモグラフィを見てみてください。「サンシャイン2057」とかおすすめです。
他にも、当時まだまだ子役だったダコタ・ファニングちゃんも出てるし、敵の重要人物として登場するのはハリウッドを代表するアフリカ系俳優の一人ジャイモン・フンスーです。さらに、脇役ながらニュージーランドを代表する俳優クリフ・カーティスも登場。
こういう、「ド派手なスターはいないけど実力派キャストが集まった小規模映画」っていいですよね。
まとめ:現実に超能力者がいたらこんな感じ?
ぶっ飛んだ超能力アクションがくり広げられるSFアクション映画ももちろん楽しいですが、たまにはこういう「現実に超能力者がいたらこんな感じだろうな」と思わせる、渋い超能力SF映画を観てみるのもおすすめです。
丁寧に作られた世界観とストーリー、絵的には地味ながら凝った超能力描写で、想像力をかき立ててくれます。この映画はもっとたくさんのSF映画ファンに知られてほしい秀作です。
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