南アフリカ出身、近年のSF映画界でユニークな存在感を見せてきた映画監督/映像クリエイターのニール・ブロムカンプ。
社会風刺を絡めた強烈なメッセージ性と、いい意味で雑多かつ生々しい世界観の表現に、大きなインパクトを与えられた映画ファンも多いんじゃないでしょうか。
そんなニール・ブロムカンプの監督作品を、ハリウッド大作からYouTube上のショートムービーまでまとめて紹介します。
- 全てはここから始まった『第9地区』
- 強烈な個性がむき出しになったロボットSF怪作『チャッピー』
- ニール・ブロムカンプらしい映像世界は健在『エリジウム』
- 自身のスタジオ「Oats Studios」から贈る短編『Rakka』
- ダコタ・ファニング主演のショッキングSFホラー『Zygote』
- まとめ:SF映画界の新時代を開拓するニール・ブロムカンプ
全てはここから始まった『第9地区』
ニール・ブロムカンプの初長編作品であり、ハリウッドに衝撃を与えた異色のSF映画。
「宇宙船の故障によって地球に流れ着いた大量のエイリアンたちが、難民として南アフリカで保護されることになる」という独特の世界観で、エイリアンたちを管理する機関に勤める主人公が、予想外のトラブルに巻き込まれていきます。
まず、エイリアンが「迫害される弱者」の側にいるというのが異色。スラム街での不衛生な暮らしぶりや現地ギャングにいたぶられる様はまさに困窮する難民そのものです。この世界観には、監督が実際にスラムの並ぶ南アフリカ出身というのも影響してるんでしょう。
製作費はハリウッド映画としてはかなり安めながら、映像のクオリティがかなり高いのも見どころ。キモかわいいエイリアンたちの動きや未知のロボット兵器の戦闘シーンは、大作と比べても遜色なしです。この辺はブロムカンプが映像クリエイター出身なのもあるんでしょうね。
主演のシャールト・コプリーによる、ほぼ全編アドリブという驚愕の演技にも注目。
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強烈な個性がむき出しになったロボットSF怪作『チャッピー』
ニール・ブロムカンプ監督作としてはおそらく最も有名な作品。
起動したばかりでまだ子どものように純粋な思考力しかもっていない人工知能チャッピーが、開発者の青年や周囲のギャングたちに翻弄されながら、しだいに「確かな自我を持った存在」として成長していきます。
「AIが心を持つとどうなるのか」というロボットSF界の王道テーマに加えて、混沌とした南アフリカ社会の近未来、さらには「人間の自我を機械の体に取り入れる」といった禁忌にも踏み込んだ内容で、単なるSF映画、アクション映画を超えたストーリー性があるのが見どころ。批評家や映画ファンからも高く評価されました。
チャッピーの動きや言葉を手がけたのが「第9地区」の主演シャールト・コプリーなのに加えて、シガニー・ウィーバーやヒュー・ジャックマンといった名優が出演してるのも見どころです。
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ニール・ブロムカンプらしい映像世界は健在『エリジウム』
ニール・ブロムカンプの長編監督作の中ではいちばんパッとしないというか、評価がそこまで良くなかった作品です。
ストーリーは「人類がボロボロの地球と綺麗な宇宙コロニーに階層分けされて暮らす未来で、地球出身の主人公が生き延びるためにコロニーを目指す」という、わりとベタなディストピアもの。
ですが、ブロムカンプ作品の象徴ともいえるスラム街の喧騒や、凝ったデザインのメカニックなど、独特の映像美が壮大なスケールで観られるのはSF好きにはたまりません。
「人間の動きをサポートする外骨格パワードスーツ」や「近未来アイテムでアホみたいにカスタマイズされたAK-47(2154年でもまだ現役)」など、ミリタリー映画ファンに刺さる演出が多いのも見どころ。
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自身のスタジオ「Oats Studios」から贈る短編『Rakka』
ハリウッドで3本の長編を手がけたニール・ブロムカンプですが、その後は「大資本に頼らない全く新しい映画製作を」というコンセプトから自身の独立系スタジオ「Oats Studios」を設立。
そのスタジオの初作品として2017年に公開されたのが、短編SF映画「Rakka」です。YouTube上で全編無料公開されて話題になりました。
内容は「エイリアンに侵略された地球でレジスタンスたちが戦う」というシンプルなものですが、注目すべきはその映像クオリティ。少人数スタッフによる自主製作映画とは思えない凄まじい完成度です。
ここまで来たら、逆に下手なハリウッド映画の方がショボく見えるレベル。世界トップレベルの映像チームの本気が観れる作品として一見の価値ありです。主演がシガニー・ウィーバーなのも凄い。
全編が英語ですが、YouTubeの字幕機能でストーリーもちゃんと追えます。
ダコタ・ファニング主演のショッキングSFホラー『Zygote』
こちらも同じくOats Studiosによる短編SF映画。
ストーリーは「カナダの資源採掘移設に異形のエイリアンが現れて暴走する中、わずか2人の生存者たちがサバイバルをくり広げる」という王道のSFホラーで、主演はダコタ・ファニングです。
最大の見どころは襲ってくるエイリアンの造形で、「惨殺した人間の体を自分に取り込む」という最悪な特性のせいで、何十本もの手と足、さらにはおびだたしい眼球を持つというショッキングすぎるビジュアルをしてます。絶対に出会いたくないです。
こいつがノッシノッシ歩きながら迫ってくる様はかなりの恐怖です。サクッと20分でスリルを味わえる良作としておすすめ。
まとめ:SF映画界の新時代を開拓するニール・ブロムカンプ
残念ながら今はOats Studiosの活動は止まってしまってるみたいですが、低予算少人数でこれだけのクオリティを叩き出せるニール・ブロムカンプ監督がこのまま終わるはずはないでしょう。
どんなかたちになるか分かりませんが、彼のこれからの作品・活動がめちゃめちゃ楽しみです。まずはこれまでの監督作に触れて、異色のSFワールドを体感してみてください。
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