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「オデッセイ」の原作小説は映画の3倍面白いよ

オデッセイ(字幕版)

マット・デイモン主演、リドリー・スコット監督で、事故によって火星に一人取り残された宇宙飛行士のサバイバルを描いた「オデッセイ」

圧倒的な映像美の中での純粋なサバイバル、そして彼を救おうとする他のクルーやNASA職員たちを描く熱いヒューマンドラマとして、SFファンを超えて幅広い層にヒットしましたね。

そんな「オデッセイ」の原作小説が、アンディ・ウィアーによる小説「火星の人」。この原作、誤解を恐れずに言うと「映画の3倍面白い」です。

正確には「映画の面白いポイントが原作では3倍くらいの濃密さで描かれてる」という感じでしょうか。

 

「オデッセイ」と「火星の人」は何が違う?

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

 

「オデッセイ」がSF映画として傑作なのは間違いありません。

本当の火星としか思えない映像世界の中での壮大で孤独なサバイバル、火星基地や宇宙船での生活描写、めまぐるしく移り変わるNASAの状況描写。原作小説を先に読んでいた身から観ても、必要な要素をピックアップして最善のストーリーと映像にまとめられてると思います

が、原作がかなりの長編SF小説なので、やっぱり細かい描写はどうしても省略されて、目で見て分かりやすいように改変されてる部分もあります。

具体的には、ワトニーの火星でのサバイバル描写(緻密な科学的考証に基づく作業工程)や、NASA職員たちによる物理学の理論を駆使した救出計画の進行、そして登場人物たちの人間ドラマが、けっこう簡略化されてる部分が多いと感じました。

映像的な見せ場というものがない分、原作はとにかく「ストーリーやバックグラウンドの描写の緻密さ」で魅せてくれる印象です。

 

圧倒的に緻密でマニアックなワトニーのサバイバル描写

まず、主人公ワトニーのサバイバル描写。

劇中ではワトニーが食料増産のために、ジャガイモ(感謝祭用に積んであった唯一の生の食物)で畑を作るシーンが印象的ですね。このジャガイモ栽培のくだりが、小説ではさらにボリューミーになってます

排泄物を使って火星の土をバクテリア豊富な土に変えるにはどれくらいの時間と水が必要か、基地内の面積の何㎡を畑として使えるか、そこでジャガイモを増やすにはどのくらいの間隔で植えるべきか、ジャガイモ1個あったりのカロリーはどのくらいか、育つのにどれくらいかかるか、それをもとに何日分の食料を増やせるか、生産が追いつかなくなって食料が尽きるのはいつか……

そんな計算が具体的な数字とともに描かれてて、開拓ものやサバイバルものが好きな人にとってはたまらなくマニアックです。

 

他にも、劇中ではさらっと流された「ワトニーが作業車で脱出船まで向かう旅路」ですが、水や酸素の供給装置をどうやって車に積むか、どのくらいの重量まで耐えられるか、睡眠や食事はどうするか……といった考察・工作が小説ではもっと細かく描写されてます。さらに、予想外の谷や崖が現れてスケジュールが危うくなったりもして、決して派手ではありませんが、ヒヤッとさせられるスリルも。

こんなふうに、映画化の際に省略された細かいピンチが原作では多く描かれていて、どれも「その問題があったか……」と思わせるリアルさで、本当の遭難記録を読んでるような生々しさを感じさせてくれます。

 

より複雑に絡み合うクルーやNASA職員たちの人間模様

ワトニーの同僚であるクルーたちや、地球で対応するNASA職員たちの人間模様も原作ではさらに濃密です。

それぞれの役職や立場から来るしがらみも多少ありつつ、基本的には全員が「ワトニーを何としても助ける」という信念で団結してるからこそ、ストレスの少ない濃いドラマが読めます。

最初の支援物資打上げがなぜ失敗したのかの説明・考証ももっと詳しく描かれるし、ヘルメス号が地球を旋回して火星に戻る計画の考察もさらに具体的です。中国の宇宙開発部門の協力過程ももっと細かい描写があって、さらにドラマチックに感じられます。

あと、ベックとヨハンセンがラブラブになるまでのロマンスももっと具体的で胸キュンです

 

まとめ:原作を知らないままでいるのはもったいない

僕は原作を先に読んでたから「ここはこういう感じに省略されてるのか~」と比較しながら観ることができましたが、映画を先に観た人には「ここってこういうことだったのか!」とさらに奥深くストーリーを理解していく楽しみがあるでしょう。

また、原作を読んだ後にもう一度映画を観たら、初見では気づかなかった細かい背景描写の意味にも気づけるはずです。

「オデッセイ」の世界観や描写が好きなら、原作小説を知らないままでいるのはもったいない。と自信を持って言えます。読んでみてね。上下巻に分かれてないバージョンもあります。

火星の人

火星の人

 

 

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