どう見てもしょぼいB級映画なのに、ジャケットのインパクトが強すぎてホラー映画ファンの間でちょっとだけ話題になったこの作品。
僕もこのジャケットのあまりにもバカバカしいシチュエーションが気になりすぎてわざわざ新作で観てしまいましたが、感想は……良くも悪くも「このジャケットのインパクトが全て」な作品でした。詳しくレビューします。
「アクアスラッシュ」あらすじ
2019年 カナダ
監督:ルノー・ゴティエ
キャスト:ブリタニー・ドリスデル、ラニサ・ドーン、ポール・ジンノ、マデリーン・ハーベイ
高校を卒業した記念に大型プールに集まってパーティーを開くティーンエージャーたち。
羽目を外して盛り上がる彼らだったが、恋愛関係のゴタゴタから、プールの監視員たちも巻き込んだトラブルが発生してしまう。
さらに、パーティー2日目にはウォータースライダーを使ったレースが開催されることになるが、何者かがウォータースライダーのコース上に刃物を仕込んでいて……
「アクアスラッシュ」感想
パニックスリラーより恋愛サスペンスがメイン
まず予想外だったのが、「パニック映画っぽい展開はめちゃめちゃ後半(というかもはや終盤)になってから」というストーリー構成ですね。
およそ70分というめちゃめちゃ短い尺なのに、そのうちの50分以上は登場人物たちのゴタゴタした人間ドラマがずーーーーっと続くというまさかの展開。こういうB級映画が人間ドラマで尺稼ぎをするのはよくあることですが、まさかここまで極端とは思いませんでしたね。
で、その人間ドラマが微妙にちょっとだけ面白いからなんだかなあ……って感じ。たった1時間ちょっとの映画でなんでこんなに複雑な人間関係を絡めたんだ!と突っ込みたくなるほどのドロドロっぷりで、主要人物ほぼ全員が不倫やら寝取られやらに絡んでて笑えました。
気弱なオタクくんっぽい主人公がよく見たら女の子を思いっきり寝取ってるひどい奴だったり、「客の高校生を食いまくってる20台後半の美人プール監視員」という役柄の女優さんがどう見ても42歳くらいにしか見えなかったり、この手の映画ではイジメっ子ポジションになることが多いマッチョヤンキーくんがただ彼女を奪われた可哀そうな奴だったり。
皆やってることがめちゃめちゃだし、誰と誰が惹かれあってて誰と誰が喧嘩してるのかよく分からなくなっていくし、この人間関係がどうなるのか(ちょっとだけだけど)気になってしまいました。
例のウォータースライダーはまあまあ面白かった
70分の尺のうち55分くらいを使ってこれだけ複雑な人間模様を作り上げながら、それをラスト10分ちょっとのウォータースライダーですべてぶった切っていく終盤はまあまあ面白かったです。
ちゃんとジャケット通りのXカッターがウォータースライダー上に設置されてて、そこに次々にギャルやヤンキーが突っ込んではぶった切られていく映像はなかなかのインパクトがありましたね。
刃の切れ味が微妙だから3人並んで滑っていたギャルの2人目くらいで刃が止まっちゃって、切れずに生き残った最後尾のギャルがパニックになってたら後続のヤンキーがぶつかっちゃって結局みんなバラバラになったり、表現もけっこう細かくて生々しいです。断面図もリアルだし。
この映画を手に取った人たちの「こういうのが観たかったんだ!」という気持ちは一応満足させてくれたと思います。
まとめ:アイデア一発勝負すぎる
「ウォータースライダーでXカッター」というアイデアにあまりにも頼りすぎた作品で、パニック描写は最後だけだし人間ドラマは無駄に複雑だし、どう考えても良作とは言えません。
が、なぜか「駄作じゃねえか!金返せ!」と怒り100%にはなれなくて、妙に憎めないところがあるから不思議です。
ぐちゃぐちゃすぎる人間ドラマが意外とスリリングだったり、登場人物のクセが強すぎて笑えたり、「ウォータースライダーで人体バラバラ!」というジャケットの見せ場だけはしっかりやってたり、ギリギリのバランスでB級映画ファンを退屈させない内容になってるのが勝因でしょうか。
尺がたった70分、というのも大きなポイントですね。これでもし人間ドラマをあと10分長くやってたら非難轟々だったと思います。
イロモノ短編ホラーをネタとして観てみる……くらいの軽い気持ちで、過度な期待をせずに手に取るのならある意味でアリな作品かもしれません。