ゲオ先行レンタル作品ってだいたい45点~55点くらいの微妙な面白さの作品が多くて、自分の中では「珍品のB級映画枠」みたな扱いなんですよね。
この「タイムリミット 見知らぬ影」もそんな作品だろうと思って何気なく観始めたら、これがビビるくらいめちゃめちゃ面白かったです。
クライムサスペンス好きなら強くおすすめしたい良作です。詳しくレビューしていきます。
「タイムリミット 見知らぬ影」あらすじ
2018年 ドイツ
監督:クリスティアン・アルヴァルト
キャスト:ヴォータン・ヴィルケ・メーリング、ハンナー・ヘルツシュプルンク、クリスティアーネ・パウル、エミリー・クーシェ、カルロ・トーマ
大手建設会社で幹部を務めるカールは、家族を大切に想う一方で、仕事に時間を取られて家族との間には溝ができていた。
ある朝、カールが子どもたちを車で学校に送っている途中に非通知の着信が入る。それは「座席に爆弾を仕掛けた。席を立つを爆発する。死にたくなければ金を払え」という脅迫の電話だった。
カールは子どもたちを救うために男の指示に従うが、立て続けにトラブルが発生して事態が悪化していき……
「タイムリミット 見知らぬ影」感想
主人公が可哀想すぎて目が離せない
本作を観ていてまず思ったのが、「主人公かわいそう……」ということ。
知らない男に脅されて、子どもたちには不満げな視線を向けられながら、周囲からも「離婚騒動で自暴自棄になって子どもを人質に暴走した残念な男」扱いされて。あまりにも悲惨です。
劇中の描写を観てる限り主人公は夫や父親としては誠実な人間みたいなのに、妻と子どもたちへの愛情をことごとく踏みにじられてるのが可哀想すぎました。
そんな主人公の超不幸が、サスペンス映画としてはめちゃめちゃ面白いからまた悲惨です。次から次にトラブルが続いて何ひとつうまくいかない脅迫劇はスリリングで、クライム映画として純粋にめちゃめちゃハイクオリティでした。
「父親VS父親」のストーリーがよかった
真犯人は主人公の過去のブラックなビジネスのせいで自殺した女性の夫だったわけですが、その動機が妻の死にあったり、そいつもまた子どもを持っていた(金の要求は自分の子どものためだった)事実があったりと、構図的には「父親VS父親」の戦いでしたね。しかもどっちも被害者であり加害者でもあるという。
だからこそ、敵にも相当な凄みというか、捨て身の犯行だからこその覚悟みたいなものが見えてゾッとさせられます。その気持ちも分かるからきついですね。
主人公もグレーゾーンを超えてアウトなビジネスをしていた事実があるわけで、爆弾事件が解決してエンドではなく、主人公が詐欺の罪を償って刑務所から出てきて、家族と再会するところで終わるのが印象的でした。
警察が(ていうか刑事が)信用できなくなる
本作で一番怖いと思ったの、爆弾でも犯人でもなく、「主人公を犯人だと決めつけて射殺に向けて動く刑事」なんですよね。
状況から主人公を一番疑うのは分かるけど、彼も被害者だと感づいた爆弾処理班の女性刑事を無視して制圧作戦を強行しようとして、しかも「容疑者はギャンブル依存症で金に困って子どもを人質にしたクズだ!」みたいな100%嘘をSWATに吹き込むのが衝撃でした。
あんなの見てしまったら「刑事ってこんなひどいの…うわあ…」と不信感MAXになってしまいます。同情できる信念をもって動いてた犯人の方がまだ感情移入できるレベル。公権力を持ってる分あの刑事の方がよっぽど質が悪いです。
映画の後半はあの刑事さえいなければもっと話が早かったのに…と思ってしまうくらいの問題児でしたね。まあこいつが状況を引っ掻き回したからこそサスペンスとしてさらにスリルが生まれてたとも言えますが。
まとめ:サスペンスとしてもヒューマンドラマとしても圧巻の面白さ
主人公をはじめ登場人物たちにしっかりと人間味があるし、犯人もちゃんと「記憶に残る魅力的な悪役」に仕上がってるし、刑事が事態を複雑にひっかき回してくれるので、クライムサスペンスとして最初から最後までノンストップに楽しめました。一人の父親を描くヒューマンドラマとしても意外なほど楽しめたのもよかったです。
最初にも書いたようにゲオ先行レンタルって純粋な当たりが少ない印象だったので、ここまで文句なしに面白い王道サスペンスが観れたのはお得でした。この手の映画が好きな人は必見レベルの傑作だと思います。
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