Netflixは『バードボックス』『カーゴ』『#生きている』など独特のシチュエーションのパニック映画をオリジナル作品として生み出してきましたが、また新たな変わり種の良作が出てきました。
それがこの、ジーナ・ロドリゲス主演のパニックスリラー『AWAKE/アウェイク』です。
その見どころ、感想をまとめました。
『AWAKE/アウェイク』あらすじ
2021年 アメリカ
監督:マーク・ラソ
出演:ジーナ・ロドリゲス、アリアナ・グリーンブラット、ルシウス・ホヨス、バリー・ペッパー、フランシス・フィッシャー、シャミア・アンダーソン
元軍人で現在は警備員として働くジルは、ある日娘のマチルダと息子のノアを自身の車に乗せて街を走っていた。
すると、突然車がコントロールを失い、事故で湖に転落。マチルダが水を飲んで一時心肺停止になるという悲劇に見舞われる。
さらに街中で同様の事態が発生し、世界中全ての電子機器が破壊されてしまったことが分かる。
その上、全ての人類が「眠れなくなる」という異常も起き、人々は不眠のせいで次第に冷静さを失い、凶暴化していくのだった。
そんな中で、なぜかマチルダだけが「普通に眠れる」状態にあって……
『AWAKE/アウェイク』感想(ネタバレあり)
「眠れない」ことひとつで起こる惨劇がやばい
古来より、「眠らせない」という仕打ちは拷問のひとつとして用いられてきました。
人間を「座ったらぎりぎり鼻が沈む」くらいの水を溜めた空間に放り込んでおけば、絶対に眠れないせいでしだいに精神が弱って簡単に情報を自白する……という拷問方法があったそうです。
つまり、「不眠」とはそれほど恐ろしい、人間を狂気に陥れるものだということ。それが世界規模で発生したら、おまけに電子機器が全て死に絶えて文明崩壊したら……というのが本作『AWAKE/アウェイク』というわけですね。
どんなに眠くても、疲れていても、一睡もできない。それがどれほど恐ろしいかは、想像に難くありません。そんな状態が何日も続けば、これからもずっと続くと思えば、「永遠の眠りでいいから眠らせてくれ」と思ってしまう人も多く出ることでしょう。
この『AWAKE/アウェイク』でも、そうやって人々が狂気に飲まれていく様が映像的な見どころとして演出されていました。
まずは異様な状況でハイになってやけくそのどんちゃん騒ぎを巻き起こし、やがて「どうして眠れないんだ」とイライラし始めて睡眠薬などを求めるようになる。なかには薬局や病院を襲ってまでそういうものを手に入れようとする。
やがて、その苛立ちを他人に向け始める……
教会のシーンで、一人だけ眠れるマチルダの存在を知って殺気立った人々が「彼女を燃やして神に捧げてみよう」と真剣に言い出す様がぞっとしましたね。その場に居合わせた保安官が簡単に銃を抜いて人を撃ってしまうのもショッキングでした。
余談ですが、筆者の好きなバリー・ペッパー(牧師さん役の人)がせっかく出演してたのに、この教会のシーン以降まったく出番がなかったのは悲しかったです。
パニックはしだいにエスカレートし、さらに文明崩壊まで起こっているんだから質が悪い。
銃を持って、(コンピュータを積んでいないから)壊れていなかったクラシックカーを乗り回してヒャッハーし始める人が出てきたり、囚人が集団脱走してたり……社会システムが崩壊して秩序が壊れた上に、全人類もれなく不眠でイライラしてるから余計に怖いです。
中盤の「全裸になって太陽を浴びている集団」も地味にホラーでしたね。きっと誰かが「ありのままの姿で自然と一体になって太陽の光を浴びれば眠れるんじゃね?」とか言い出したんでしょうが。
軍の医療部隊による「極少数の眠れる人の体を調べる研究拠点」の崩壊方法も衝撃でした。
まさか「まつぼっくりを手榴弾と見間違えた人が「敵襲ー!」と叫んで銃を乱射し始めて、それがきっかけで全員パニックを起こして同士討ちの虐殺祭りになって全滅する」なんてね。
傍から見ればギャグにしか思えませんが、一週間近くも眠らずに精神を消耗させれば、こんな小さな間違いがきっかけになって秩序の最後の一線を越えてしまうんだよ、というのはかえってリアルでした。
ストーリーの結末はパニック映画を見慣れた人なら予想がつくかも
文明崩壊パニック映画としてはやや低予算ながら見どころがある本作ですが、なぜマチルダだけ眠れるのか、どうやったら他の人も眠れるのかを解き明かすサスペンススリラーとしては少し物足りないというか、先が読めてしまいました。
最初にマチルダが湖に落ちて心肺停止になり、心臓マッサージで蘇生した……というのがあからさまにヒントになっていましたね。
バリー・ペッパー演じる牧師さんとの会話シーンとか、けっこう露骨に「一度死んで(心停止して)そこから蘇生した人たちは普通に眠れる」という答えを暗示してました。
この説明からすると「牧師さんも眠れるのかな?」と思って後半で役割を持つことを期待してたんですが、最後まで何の伏線回収もありませんでしたね……
筆者に限らず、こういうパニックスリラー映画を観慣れてる人や察しの良さに自信がある人は、わりと序盤でこの結末を予想できてしまうかもしれません。
細かい理屈は突っ込んじゃ駄目
一応、本作は「太陽フレアによってコンピュータを積んだ電子機器が全滅し、人間のリンパが狂わされて眠れなくなった」という理屈付けがされていますが、その辺のリアリティに関しては突っ込んではいけないんでしょう。
本作がやりたかったのは「文明崩壊した上に人間みんな眠れなくなったらどんなやばいパニックが起きるかな?」という世界観であって、科学的な考証は二の次のはずです。
純粋にこういうシチュエーションありきのパニック描写を楽しむB級エンタメ映画として楽しむのが、正しい観方でしょうね。
『AWAKE/アウェイク』のネタバレ感想まとめ:長生きしたいなら睡眠は大事
本作を観てとりあえず思ったのが「人間って寝ないとやばいんだな」ということ。
劇中で「人間は眠らないと幻覚を見始めて、脳が肥大して死ぬ」と言ってましたし、眠れない人々が起こしたパニックや暴走も、あながち嘘じゃないんでしょうね。
どちらにせよ、この映画の描写を観ていたら、不眠は最後にはガチで生命に関わるんだと分かりました。
長生きしたいなら、睡眠は大事。これがこの映画から学べたことです。
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