映画界では際立って有名というわけでもなく、歴史に残るほどの名作というわけでもないけど、やたらと記憶に残ってる「自分にとっての思い出の映画」ってきっと誰しもありますよね。
筆者にとってのそんな映画のひとつが、この『ファイヤーウォール』です。木曜洋画劇場やら金曜ロードショーやら午後のロードショーでやたらと見かけるうちに、いつの間にか4回くらい観てました。
個人的に思い出深いというだけでなく、ひとつのクライムサスペンス映画としてもふつうに良作だと思います。手堅いストーリーとハリソン・フォードの渋さがナイスマッチです。
そんな『ファイヤーウォール』の感想をネタバレありでまとめました。
『ファイヤーウォール』あらすじ
2006年 アメリカ
監督:リチャード・ロンクレイン
キャスト:ハリソン・フォード、ポール・ベタニー、ロバート・パトリック、ヴァージニア・マドセン、ニコライ・コスター=ワルドー
とある大手銀行のセキュリティを担当し、ITセキュリティの優れたシステムを開発したジャックは、銀行内でも幹部級の社員として重要視されていた。
ある日、ジャックのもとにコックスと名乗るビジネスマンが接近してくる。しかし、実はこのコックスは犯罪者集団のボスであり、ジャックの家族を人質に取った上で銀行から大金を盗む計画に無理やり協力させようとするのだった。
ジャックは自分が設計した高度なコンピューターセキュリティを破り、1億ドルもの金を盗み出すために奔走することになるが、その中で淡々と反撃のチャンスをうかがう。
『ファイヤーウォール』感想
これぞ「2000年代アクションサスペンス」って感じ
昔ながらの「人質サスペンス」&「銀行からお金を盗む系サスペンス」に、「コンピューターセキュリティ」という、当時としては斬新な要素を取り入れた作品です。
まず、テンポがいいですね。開幕からものの15分もたたずに敵ボスのコックスが牙を向いてジャックたちが人質にとられ、あれよあれよという間にサスペンスに突入します。
その先も「どうにかして通報できないか」「外部に助けを求められないか」と奮闘しつつそれが失敗してピンチに陥ったりと、基本的に「ジャックの自宅」「銀行」の2シチュエーションでストーリーが展開するだけなのに退屈しません。
この手堅さ、なんというか「これぞ2000年代のアクションサスペンスだなあ」と思えます。映像は綺麗になりつつも、まだ90年代のエンタメ作品の色も受け継いでる感じ。
なんとなくですが、クリス・エヴァンスの『セルラー』とかと同じ匂いがしますね。
渋さ極まれるキャスティングも好き
何気にキャスティングがいいのも本作の見どころ。
主演のハリソン・フォードはもはや説明不要。この主演時はすでに60歳を超えていますが、だからこそ後期ハリソン・フォードの「苦労を重ねたおじ様」的な渋いキャラクターが主人公ジャックとよく合っています。
敵ボスのコックス役は、当時はまだ今ほど有名じゃなかったポール・ベタニー。今はマーベルシリーズのヴィジョン役で知られる彼ですが、彼の若手時代の出演作をいくつか観てきた筆者としては、こういう得体の知れない人物の役の方がしっくり来るかもです。『レギオン』とか『ダ・ヴィンチ・コード』とか好きですね。
『ターミネーター2』のT-1000(液体金属ターミネーター)役で知られる、ロバート・パトリックが出演しているのもポイント。主人公の上司役ですが、T-1000のイメージが強すぎて「こいつ絶対裏で敵と繋がってるやん……」と思ってたら最後までふつうの銀行マンでした。
そして、個人的にはデンマーク出身の俳優ニコライ・コスター=ワルドーが出てるのも嬉しいです。『ゲーム・オブ・スローンズ』のジェイミー役で有名な彼ですが、映画界でもちょこちょこ有名作品でいい役をやってるんですよね。
ツッコミどころはご愛嬌
手堅くサクッと楽しめるのが本作の魅力ですが、ツッコミどころが多々あるのはまあ、ご愛嬌でしょう。
ジャックが周囲に状況説明するの下手すぎて「そこはこう言えばもっと分かりやすく伝わるだろ!」っていう場面が何回もあるのが、いい意味でストレスになります。こういうクライムサスペンスの説明グダグダ要素は嫌いじゃないです。実際トラブルに見舞われた人間なんてこんなもんですよね。
あと、ジャックが「コンピューターセキュリティの天才」って言う設定なのにそんな感じがあんまりしないあたりは、こういうサイバーサスペンス映画の黎明期だったから手探り感がありましたね。ジャックの凄腕描写も一応ありますが、それもなんとなくまだアナログっぽさが……
コックス率いる犯罪者グループの、最後の逃亡の詰めがいろいろと甘すぎるのは笑いました。急に君たちおバカさんになってない?って突っ込みたくなります。
特に、ニコライ・コスター=ワルドー演じる副ボスくんが「主人公から完全に目を離して連絡の電話してたら殴られて死亡」という退場の仕方だったのがポンコツすぎました。
ついでに突っ込んでおきたいのが、最後にジャックがコックスをツルハシでぶっ刺して倒すシーン。後ろから首を絞めてくるコックスの背中にツルハシを振り上げて突き刺す……というとどめの刺し方ですが、「貫通して自分の背中まで刺さなくてよかったね」と思ったのは僕だけじゃないはず。
『ファイヤーウォール』の感想まとめ
歴史に残る傑作ではありませんが、仕事終わりの夜のフリータイムにお酒か炭酸飲料でも片手にダラダラ観るのにちょうどいい娯楽映画。そんな感じの作品です。
クライムサスペンスが好きなら、あるいはハリソン・フォードが好きなら、それなりに楽しめるんじゃないでしょうか。
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