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【感想】『ブラック・サマー: Zネーション外伝』シーズン2は前作の魅力をそのままスケールアップさせた傑作!【ネタバレあり】

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「ゾンビから逃げ惑うパニック」のみに焦点を当て、圧倒的なスリルとスピード感によるアクション・サバイバルで世界中のゾンビファンの心を掴んだNetflixオリジナルドラマ『ブラック・サマー: Zネーション外伝』。

そのシーズン2が、2021年6月17日からついに配信開始されました。

その内容は……文句なしの傑作です。

長回しのワンカットを多用して臨場感あふれるパニック描写を描く作風はそのままに、銃撃戦などアクションのスケールは一回りも二回りもアップ。硬派なゾンビドラマとして極限のクオリティに仕上がっています。

そんな『ブラック・サマー: Zネーション外伝』シーズン2をレビューします。

『ブラック・サマー: Zネーション外伝』シーズン2あらすじ

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ゾンビウイルスがアメリカ中に蔓延してから数か月。季節は冬になっていき、生存者たちはゾンビとの戦いだけでなく、生存者同士の戦いや寒さとの戦いにも明け暮れていた。

残り少なくなっていく物資を奪い合い、より長く生き永らえるために他の生存者の命を奪い、至るところで壮絶なサバイバルがくり広げられる。

そんな中で、ローズは娘のアンナを守るために、ときには人の道を外れた非道な行為にも平然と手を染めながら生き延びていく。

集団で略奪を行う他の生存者グループが脅威として現れたり、上空から物資を投下する謎の飛行機が現れたりと、状況はしだいに変化していき……

 

『ブラック・サマー: Zネーション外伝』シーズン2の感想

冒頭からアクションに次ぐアクション、パニックに次ぐパニック

『ブラック・サマー: Zネーション外伝』の魅力と言えば、人間ドラマをできるだけ排して「パニック」と「サバイバル」のみに焦点を当てた構成

なので、シーズン2のトレーラーを見たときはわりと人間ドラマ要素が多そうで、「もしかして路線変更しちゃうのかな……?」と心配になりました。ドラマ性の強いゾンビものなら『ウォーキング・デッド』や本家『Zネーション』を見ればいいですもんね。

 

ですが、いざ配信開始された本作を観て安心。作風はシーズン1と何も変わっていません。

まず冒頭のパニック描写に度肝を抜かされますね。なんとランス(よく一人はぐれてゾンビに追いかけられる羽目になってた兄ちゃん)が生きていたんです!

と思ったら、他の生存者の策略に嵌ってあっさり死ぬんです!ランスうぅ!シーズン1であんなに頑張って生き延びたのにいぃ!

で、ゾンビ化したランスが他の生存者を襲うシーンからして、シーズン1とは金のかけ方が違います。とんでもなく派手です。

 

1話目のつかみだけでなく、以降の話でもパニックアクションの規模感は衰えません。明らかに、前作よりも多くの生存者とゾンビが入り乱れます。

シーズンを通した規模で言えば、大作ゾンビ映画……例えば『ドーン・オブ・ザ・デッド』とか『バイオハザード』シリーズとかの予算を上回るんじゃないでしょうか。

シーズン1が世界的にも大成功したので、きっと予算が大幅に増えたんでしょうね。

 

正直言って、「ゾンビパニックアクションを観た」という満足感だけで言えば、あの大作『アーミー・オブ・ザ・デッド』を上回ります。

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他の生存者を平然と見捨てる究極のサバイバル

本作、とにかく生存者同士の戦いのシーンが多いです。戦いというか、見捨て合い、奪い合いですね。

本作を観たら、他のゾンビ映画もゾンビドラマも甘く見えるほど。マジで皆、何の躊躇もなくろくにためらいもせずに人を撃ったり斬ったり刺したり殴ったりします。

「えええそんなにあっさり殺っちゃうの!?」と驚愕するレベル。ほんとに「知らない人=全員敵」という感じで、それどころか「顔見知りでも家族以外は味方じゃない」くらいの殺伐とした価値観です。

 

何せ、前作であんなに協力し合ったのに、ローズが2話で手負いのスピアーズ(黒人の兄ちゃん)を秒で見捨てて娘のアンナだけ連れて逃げますからね。娘と再会できたのはスピアーズのおかげなのに。

さらに、スピアーズを見捨てきれなかったサン(アジア系の姉ちゃん)まで普通に見限って逃げるから徹底的に容赦がないです。トレーラーで見た人間ドラマっぽい印象とまるで違います。

それ以外の面でも、ローズがこのシーズン2でいちばん冷酷だったんじゃないかなってくらい厳しかったですね。ふつうに他の生存者を銃で脅して物資奪ってるし、「疑わしきは銃殺」って感じで、厄介を起こしそうな奴はあらかじめ(まだ厄介を起こしてないけど)撃って始末したり、見知らぬ男が遠くから走ってきただけで敵対の意思確認すらせず狙撃したりしてます。

娘を守るためなら何でもする……という意気込みなんでしょうが、「母は強し」であると同時に「母は怖し」です。あの世界でゾンビとローズどっちと出会いたいかと言われたら、ゾンビの方がギリギリまだいいかもしれません。撃たれない分。

 

まあ、他の生存者もみんな大概なんですけどね。

1話目の冒頭でランスを撃ち殺したカップル(しかもその直後には彼女が彼氏を裏切る)とか。

冬の森の中の邸宅で遭遇したバイオレンス息子とアウトローぶった母親の最悪親子とか。

所属するグループをころころ替えながら、命の恩人のサンも平気で裏切る女の子とか。

ふつうの狩人かと思ったらラスボスと化すおじさん集団とか。

とにかく登場人物たちの好感度が低すぎました。皆が生き残るために必死だというのは分かりますが、「生き残るためなら何でもする」という生存本能の発露って傍からみたらこんなにも醜いのかと思わされます。

 

この『ブラック・サマー: Zネーション外伝』には、「正義の陣営」がいないんですよね。最初から皆、人間性なんて放り捨ててます。登場人物、ほぼ全員悪人……という、どこかの極道映画のような人間模様です。

トレーラー観たときにてっきり悪者なのかと思った軍人の集まりみたいなグループも、生存者全体で見れば特別に悪いわけでもなかったのが皮肉でした。まあ、彼らが悪くないというか、他の生存者も全員が彼らと同じくらい悪いだけなんですけどね。

ただ、その軍人グループのボス(赤いジャケットのおじさん)は本当にまともな方でしたね。かといって決して善人ではないけど。彼でもマシに見えると思うと、ほんとに作品全体の善人の基準が下がりすぎです。

本作でちゃんと善人なのはサンだけでしたね。マジで彼女が唯一の良心、実質メインヒロインでしょう。

 

「一匹のゾンビ」の脅威がよく分かる

シーズン1から続くこの『ブラック・サマー: Zネーション外伝』の伝統というか特徴なんですが、「走るゾンビは一匹いるだけでとてつもなく厄介」だと描写から分かるんですよね。

ゾンビ映画では大群のゾンビが迫ってきて、撃っても撃っても次が来る……というのが定番ですが、本作ではたった一匹に延々と追いかけられる、という展開が多いです。

そもそも、走り回る人間の頭を正確に銃でぶち抜くなんて、プロの軍人や警官でも難しいらしいですね。ましてや一般人が、体力のリミッター解除されたゾンビにフルスロットルで追いかけられてそう簡単に倒せるわけないんですよね。

同じくらいの体格の人間に本気で襲われて撃退しろって言われたら、できる人はそうそういません。なので、ゾンビは一匹だけでも凄まじい脅威。二匹来たら絶望、三匹以上きたらもうどうにもならない。それが本作ではよく分かります。

 

『ブラック・サマー: Zネーション外伝』シーズン2の感想まとめ

いやー全編にわたって容赦がなかった。一瞬たりとも、一ミリたりとも優しくない無慈悲で地獄なゾンビパニックサバイバルアクションでした。

「感染パニック」だけに焦点をあてたシーズン1からさらに進化して、「感染パニック+生存者グループの戦い」ばかりを徹底的に高純度で描いた素晴らしいシーズン2でしたね。

終わり方も続きが気になる感じでしたし、これはぜひシーズン3も作ってほしい。こういう路線のお金のかかったゾンビものは定期的に観たいです。

 

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