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『86 エイティシックス』3巻のネタバレあり感想 ついに再会するシンとレーナに涙……

86―エイティシックス―Ep.3 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈下〉 (電撃文庫)

『86 エイティシックス』の第3巻で、ギアーデ連邦に行き着いたシンたちのさらなる戦いを描く『86-エイティシックス Ep.3 ラン・スルー・ザ・バトルフロント<下>』

衝撃的な新章開幕を見せた2巻に続いて、電磁砲型レギオンとの戦い、レギオンによる大攻勢への抵抗が描かれます。

そして最後にはついにレーナと対面するシンたち。感動のラストは涙なしでは読めません……

『86 エイティシックス』3巻のあらすじ

レギオンによる大攻勢と電磁砲型レギオンの急襲を受け、壊滅的な被害を被ったギアーデ連邦西方方面軍の最前線。

このままでは戦線が崩壊しそうな危機の中、ギアーデ連邦軍の上層部は、通信のとれている他の生き残り国家であるロア=グレキア連合王国とヴァルト盟約同盟と協力して一か八かの作戦に出る。

それは、各国の主力部隊が陽動戦闘を行いつつ、シンたちの戦隊を「槍の穂先(スピアヘッド)」としてレギオン支配域の奥深くに切り込ませ、電磁砲型レギオンを討つ――というあまりにも過酷なものだった。

生存確率の限りなく低いこの作戦を、しかし当たり前のように受け入れて戦いに臨むシンたち。

一方で、同じように電磁砲型レギオンの砲撃を受けて防衛線が崩壊したサンマグノリア共和国では、レーナが生き残りのプロセッサーたちをまとめ上げて絶望的な戦況を戦い抜いていた。

東と西でお互いのことを思いながら戦うシンとレーナは、やがて戦場で邂逅して……

 

『86 エイティシックス』3巻の感想(ネタバレあり)

ミリタリーSFとしての濃さは今までで一番

1巻と比べて2巻はミリタリーSF色が一気に強くなりましたが、3巻はさらにその色が濃くなりました。

最初の頃は「エイティシックスたちの日常風景のひとつ」という感が強かった戦闘描写が、3巻からは完全にメイン要素のひとつになっていますね。

敵地の奥に超低空特殊輸送機で入り込み、レギオンだらけの戦域を進み、やがて電磁砲型レギオンと対峙して決戦に臨む……文量の半分くらいが戦闘描写に割かれていて、ヒリヒリするような緊張感が続きました

特にクライマックスのキリヤ(電磁砲型レギオン)との決戦はやばい。土煙や硝煙の匂いがムンムンに漂ってきますね。

ピンチの瞬間に共和国側から前進してきたレーナの部隊に救われて、協同して戦う展開も熱すぎて鳥肌総立ちでした。男の子なら、いや女の子も、この展開に燃えること間違いなし。

 

シンがキリヤに重ねたのは兄レイの姿?

2巻~3巻のいわゆる「ボス敵」となったのが、かつてフレデリカの騎士で、シンにとっては遠い縁戚でもある青年キリヤ・ノウゼン。彼の脳を取り込んだ「羊飼い」である電磁砲型レギオンは、実は1巻からシンたちを苦しめてきた存在でしたね。

生前の大切な人への執着がいつの間にか呪縛と化して、呪いの言葉を吐きながら暴れまわる様は、シンの兄であるレイに重なる部分が多くありました

実際に、シンもキリヤから聞こえる「声」やフレデリカから聞かされる話に兄の姿を重ねていたみたいでしたね。ところどころにそんな描写があります。

かつて絶死の戦場を5年も生き延びて探し続け、ついに弔った兄に重なったからこそ、あまり他人に関心を持たないシンが個人的な感傷も見せつつキリヤに立ち向かい、彼を眠らせてあげたのでしょう。

社会や歴史が違えば友人になれていたかもしれない遠い親戚の青年の、レギオンと化してもなお止まらない暴走を、シンも無心で見ていられなかったのではないでしょうか。

 

シンとレーナの「再会」であり「邂逅」であるラストシーン

キリヤとの決戦に並ぶ本巻のクライマックスが、キリヤを斃した直後の戦場でのレーナとの邂逅、そして、かつてシンたちが「行き着いた果て」でのレーナとの再会のシーンです。

まずは、お互いの顔を知らないが故にすれ違う戦場での出会いのシーン。レーナの名前を聞いてシンの方は気づいたものの、再会すべき場所は「まだここじゃない」と考えて自分の名前を言わないところが共感できる一方で「早く再会しちゃえよおおお!」とやきもきさせられる部分もありました。

レーナがシンのパーソナルマークを知らないから、機体を目の前にしてもシンに気づけないのが歯がゆかったですね。

そして遂に、シンたち5人がレーナと顔を合わせて、本当の意味で「邂逅」するラスト。1巻のエピローグに繋がるこのシーンまで、ようやく、やっっっとたどり着きましたね。

いやー長かった。感無量とはこのことでしょう。胸いっぱいです。

もちろんこれで何が解決するというわけでもないんですよね。レギオンとの戦いはこれからも続くし、シンたちはエイティシックスとしての歪な矜持を抱えたまま不安定な心で生き続けています。

ですが、ともかくこれで出会えたわけですから。ここからは二人は「共に歩んで」「一緒に戦って」いけるわけですから。困難が待っていても、とりあえず信頼できる大切な人と一緒にいれば何とかなるんですよ人間は。

『86 エイティシックス』の長いストーリーを通して見ても、このラストは最も重要なシーンのひとつですね。

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『86 エイティシックス』3巻のネタバレあり感想まとめ

ミリタリーSFとしても人間ドラマとしてもますます奥深さを増しながら、ひとつの大きな節目を迎えた『86 エイティシックス』3巻。

これまでは「シンとレーナがそれぞれ戦う物語」だったのが、次巻からは「シンとレーナが一緒に戦う物語」になるんですよね。この3巻までが『86 エイティシックス』の第一章と言えるかもしれません

アニメでここまでのストーリーがどのように描かれるかも、今から期待ですね。

 

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