アニメでは『劇場版 幼女戦記』から本格的に登場し、主人公ターニャ・デグレチャフのライバルとして、またある意味では「もう一人の主人公」として存在感を見せた少女、メアリー・スー。
シリーズファンからは賛否両論を呼んでいる彼女ですが、それもそのはず。メアリーはあらゆる要素がターニャと正反対であり、ターニャにとっては目障りな「敵」として立ちはだかるのですから、好感度が上がるわけがありません。
では、具体的にターニャとメアリーはどんな点が、どんな風に正反対なのか、まとめてみました。
『幼女戦記』メアリー・スーとは:強すぎる宿敵
「劇場版 幼女戦記」公開まであと20日!
— 「幼女戦記」アニメ公式【TVシリーズ第2期製作決定!】 (@youjosenki) January 19, 2019
今作の主人公、もとい主人公のようなものと記されているメアリー。彼女が今回の戦いの中でどのような存在となるのか…?https://t.co/vBpfxHK59c
「劇場版 幼女戦記」は2月8日(金)全国ロードショー。
お楽しみに!!
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メアリー・スーは、『幼女戦記』のキーとなる重要キャラクターの一人。
協商連合の出身で、父親は連合の軍人であるアンソン・スーです。戦地に赴く彼とは違って、母親とともに別大陸の合衆国へと亡命していました。
アンソン・スーといえば、物語の序盤(アニメ1期)ではターニャの宿敵として何度も立ちはだかった協商連合の士官。屈指の強敵でしたね。
しかし、最後にはターニャが勝利し、戦利品として彼の持っていた短機関銃を奪い、その後も使用。ですがその短機関銃は、メアリーがアンソンに贈ったものでした。
その後の帝国と諸国の戦争(劇場版のメインとなる戦い)で、メアリーは父の命を奪った「憎き悪の帝国」を討つために合衆国の義勇兵として従軍。戦場で父の銃を持つターニャを見て、それ以来ターニャを「父の仇」と定めて異常な執着心で襲います。
仇であるターニャを討つためなら上官の命令や部隊行動を無視して単独で突進したり、色んな政治的思惑を理解せず「悪の帝国を倒すために色んな国が手を取り合って正義の戦いをしている」と本気で信じていたりと、ぶっちゃけ言ってかなり「痛い子」です。
しかし、神(ターニャの言う「存在X」)からはターニャの対抗馬になり得る人物と見られており、膨大な魔力と加護を与えられています。若年兵の彼女があまりにも強すぎる背景にはこうした事情もあります。
世界観的な意味でも、まさしくターニャのライバルと言える存在です。
『幼女戦記』ターニャとメアリーが正反対な4つのポイント
1.ターニャは未来を求める メアリーは復讐(過去)に執着する
まずそもそも大きく違うのが、ターニャとメアリーの「見据えているもの」でしょう。
ターニャが転生世界で求めているのは「安楽で安定した人生」であり、彼女が戦争で積極的に成果を見せようと奮闘するのも「ゆくゆくは出世コースに乗って安全な後方で気楽に暮らす」ためです。
すなわち、ターニャは常に「未来」を見据えて行動していると言えます。かなりクセのある言動のせいで戦争狂いのサイコキラーみたいに見えるターニャですが、本質はポジティブで平和主義(?)でより良い未来を望む少女なんです。
一方でメアリーはどうでしょうか。彼女が何よりの最優先事項としているのは「復讐」です。彼女は「父の仇ターニャ・デグレチャフを討つ」という、個人的な感情で動いています。突き動かされています。
復讐とはすなわち、過去の清算です。ターニャが生きている限り、メアリーは復讐という過去への執着に囚われ続けるのでしょう。
2.ターニャは実利で動く メアリーは感情で動く
アニメや小説からもよく分かるように、ターニャは徹底的に実利のみを見て動く超合理主義的なキャラクター。
作者のカルロ・ゼンさんはターニャについて「シカゴ学派を人間に適用したら、という思考実験の結果生まれた」と語っているほどですから、究極的ですね。
ターニャが見るのは基本的に「数字で見える結果」だけです。人間の心理状態なども考慮には入れますが、それすらも自分の中で数値化して利益を計っているように見えます。
何せ、部下の兵士たちでさえ「目的達成のための人的資源」として数えているというね……資源を大切に、の精神の結果として部下を救ったり気遣ったりします。
一方のメアリーは、劇場版を見ても分かるように猪突猛進型と言っていいくらい感情一直線。
基本的に実利を見て動く軍隊の中にいながら、あの行動原理はあり得ません。上官の命令を無視して一人で突っ込むとかどうかしてるぜ。
魔導師としての能力はともかく、精神的には全くと言っていいほど大人レベルに達していないんでしょうね。かんしゃくを起こす子どもと一緒。
「復讐」という目的にとらわれ過ぎて、自分の行動から生まれる利益と損失を一ミリたりとも計算していないんでしょうね。まあ彼女の場合は復讐の達成が究極の利益で、他の損失は全て微々たるものと見ているとも言えるのかもしれませんが。
少なくともメアリーは「数字に置き換えられる利益」なんてまったく考慮していません。「復讐してすっきりする」という感情的な満足感が全て。
3.ターニャは現実主義 メアリーは理想主義
前述のように、ターニャは行動原理に「実利」があります。そもそも彼女は世界そのものを利益を基準に見ています。戦争自体も「最も愚かな資源の浪費」として侮蔑していて、その考え方の裏返しとはいえ彼女は心から平和を望んでいます。
そんなターニャなので、国同士の思惑や事情を理解して、それを踏まえて平和を実現するために行動できます。現実を見据えて、現実の中で自身の目的を達成するために動けます。
アニメ1期の最後では、「人はときに実利を越えて感情で復讐に走る=このままでは世界の恨みを買いすぎた帝国が負ける」という考えに至るなど、実利を重んじるからこそ、理性だけで動かない人の世の現実をよく理解している様子も見せました。
一方のメアリーはというと、もうね、見ていて「勘弁してくれ……」と言いたくなる理想主義者。正義と博愛を重んじる心優しい清い女の子()です。
ぜーったいに裏には黒い思惑がある多国籍義勇軍をマジで「悪しき帝国を討つために立ち上がった正義の軍隊」だと信じ込んだりするお花畑ちゃんです。
劇中で語る理屈も青臭いったらありゃしない。「罪のない市民が襲われているんです!私たち義勇軍は助けるべきでしょう!?」とか言って待機命令を無視して出撃しちゃいます。
他にも原作では、ルーシー連邦の掲げる理念を丸呑みして、帝国の捕虜を連邦に引き渡そうとする(そんなことしたら捕虜たちは収容所一直線)とか、理想主義的すぎて常識知らずな行動をとります。
ただ、この彼女の理想主義に関しては「父親の敵を討つことを正当化するために理想主義や博愛主義に魅せられている」ようにも見えるんですよね……たとえ本人は無自覚だとしても。
4.(結果的に)ターニャは部下を守る メアリーは仲間を危険にさらす
合理主義のターニャにとっては、部下たちも自分の望む未来を獲得するための「人的資源」です。
そして、現実主義のターニャはその人的資源を有効活用するためには「ときには休息も必要・なるべく死なせず怪我もさせず・ときには心理的ケアも必要」だとよく理解していて、それらを実践します。
なので、結果論としてターニャは部下の面倒をよく見て、彼らをよく守っているんですよね。
部下以外の友軍についても同じです。「自陣営の人的資源は多い方がいい」くらいの考えなのでしょうが、多くの友軍兵士を救って英雄扱いされています。
対してメアリーは……どう見ても仲間を危険にさらしていますね。
部隊行動による連携が必須の軍隊にいながら、独断専行で突進していくとかあり得ません。あんな無茶苦茶な戦い方をしていては一緒にいる兵士が危険でしょう。
しかもその目的が「父の仇を追う」だから救いようがありませんね。隊長のドレイクからも「感情で敵を決めるな」と言われていましたが、まさしくその通りです。
こういう「個人的な復讐のために戦争を利用している」感があるのも、彼女の理想主義が浅く感じられて白けてしまう要因です。
さらに、メアリーがターニャを執拗に追うせいで戦闘被害が無闇に拡大して、街が破壊されまくったりするのも皮肉ですよね。画面には映らなくてもきっと犠牲者も出てるんでしょう。彼女の語る博愛主義はどこへ行ったのか。
『幼女戦記』メアリーは嫌われ者?
この極端な思考や行動もあって、ネット上ではメアリーのことを「嫌い」「怖い」「うざい」と非難する声もかなり多いです。正直同感です。
合理主義的すぎてむしろ清々しいターニャ。対して、理想主義的すぎて感情的すぎて見ていてイライラする、仲間への実害もまき散らしまくりのメアリー。どっちが好かれるかなんて、考えるまでもありませんね。
上官のドレイクも、言うこと聞かなすぎるメアリーには完全に手を焼いていますね。問題児のくせに魔導師としての才能は無駄に溢れているから暴走の規模も大きくなっちゃって、その尻拭いをさせられる彼がかわいそうです。
Web版では味方の手によって死亡するメアリー
Web版『幼女戦記』ではキャラクター設定がかなり違うメアリー。アンソンの娘で父親の復習を誓っている……という設定は書籍やアニメで付け加えられたもので、Web版では単に「神(存在X)を妄信する合衆国出身の兵士」という存在でした。
その狂信者っぷりは突き抜けていて、「帝国は神の敵」「だから帝国を滅ぼすためにはどんな戦い方をしてもいい」と考え、味方を巻き込みながらの攻撃をしたり命令無視からの勝手な行動で敵味方に犠牲を出したりとやりたい放題。
最終的には友軍兵士たちから恨まれて抹殺されるという悲惨な最期を遂げました。
そもそもの名前が「Mary Sue(テンプレ的すぎる強キャラを揶揄する海外のスラング)」からとられていたりと、読者の恨みを集めた上で残念な退場の仕方をして「ざまあ」されるためのキャラクターだったみたいですね。
『幼女戦記』をネット小説ではなく商業作品化する上で、メアリーにもより深い役割が与えられて、人間味のあるキャラクターになったのかな……とも思えます。
まとめ:『幼女戦記』ターニャとメアリーはまさに裏表の存在
その考え方や行動、精神、さらには存在Xとの関わりまで、何から何までターニャと正反対のメアリー。
神様によってターニャと戦うことを運命づけられた、あらかじめ決められた究極の敵と言えるでしょう。
書籍版では今後も重要な局面でターニャとぶつかり合っていくと予想されます。約束された宿敵メアリーの描かれ方や役割、さらには結末にも注目です。
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