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『幼女戦記』に登場した各国のモデルまとめ・歴史好きならニヤケる要素満載【ネタバレあり】

幼女戦記 1 Deus lo vult

カルロ・ゼン氏の小説を軸に、アニメやコミックなど幅広いメディアミックス展開で人気を集める異世界戦記物語『幼女戦記』

目を引くタイトル、異世界転生ファンタジーでありながら本格近代戦記に寄った作風、そして主人公ターニャの強烈なキャラクター。どの要素をとっても異色で、個性が際立った唯一無二の異世界作品として反響を呼んできました。

そんな『幼女戦記』ですが、そのストーリーは近代ヨーロッパによく似た大陸を舞台に、第一次世界大戦と第二次世界大戦をミックスしたような大戦がくり広げられます。登場する国々は明確なモデルが見えるものも多く、歴史ファンならニヤリとしてしまうキャラクターや演出が満載です。

というわけで、『幼女戦記』に登場した各国のモデルを解説します。

『幼女戦記』に登場した各国のモデルまとめ

帝国:帝政ドイツ+オーストリア=ハンガリー帝国

まずはターニャが属する帝国。これはもう誰がどっから見ても分かるように、帝政ドイツがモデルのひとつになっています。

ただ、劇中で出てくる地図から帝国を見ると、領域的にはオーストリア=ハンガリー帝国も含まれる模様。

これは第一次世界大戦の終わりに併せて崩壊した国で、今で言うオーストリアやハンガリーをはじめ、チェコ、スロバキア、ボスニア・ヘルツェゴビナなどを含んでいました。その支配的な地位にあるオーストリアが帝政ドイツと同盟関係にあり、第一次世界大戦では共に戦いました。

帝国の国旗(双頭の龍)も、ハプスブルク家の「双頭の鷲」をイメージしたものみたいなので、こっちの国もがっつりモデルになってるんでしょうね。

第二次世界大戦の要素もちらほら見られる『幼女戦記』ですが、こうした部分を見ても、やっぱり第一次世界大戦の方が世界観の軸になっているように思えます。

 

フランソワ共和国:フランス

名前や共和制国家という点からも、分かりやすくフランスがモデルの国。帝国とは主に激戦区のライン戦線で戦火を交えていましたね。

登場人物の名前や文化の描写から見ても、これは確定でしょう。

また、アニメ後半ではド・ルーゴが南方大陸に逃れて自由共和国として臨時政府を樹立しますが、これはおそらく第二次世界大戦でドイツ軍にパリを陥落させられた後に、シャルル・ド・ゴール将軍がイギリスへの亡命の末に設立した「自由フランス」から来ていると思われます。

 

レガドニア協商連合:ノルウェー+スウェーデン

帝国の北側にある、あまり規模の大きくない国家。領土的にはノルウェーにスウェーデンを足した感じ、つまりスカンジナビア半島丸ごとですね。

実際にこの国は第一次世界大戦の少し前、1905年まで「スウェーデン=ノルウェー」という同君連合を形成していました。

どちらかというと小国の部類のようで、位置的にも国の規模的にもまさに「北欧」です。魔導士たちの飛行補助装置もスキー型だし。

『幼女戦記』の世界であれほどの大戦が勃発したのは、この協商連合が安易に帝国に進軍したことがきっかけになっています。

 

アルビオン連合王国:イギリス

「北西方向、海の向こうの島国」という、明らかにイギリスがモデルの国です。

帝国と直接国境を接しているわけではないので、大戦への関わり方は限定的。ですが、ターニャの宿敵メアリーが所属する多国籍義勇軍の指揮官ドレイクが連合王国の出身だったりと、要所要所で存在感を見せてきます。

史実のイギリスも、第一次世界大戦では上手いこと首を突っ込んで利益を得る上手な立ち回りをしていたみたいですね。

 

ダキア大公国:ルーマニア

60万もの大軍を動員しながらターニャたちにボコボコにされた可哀想な国。地図上の領土を見たところ、モデルはルーマニアと考えられます。

史実のルーマニアも、第一次世界大戦では連合側に参加してドイツと戦いましたが、60万人も動員しながらその軍隊は近代戦に対応できるものではない旧時代的なもので、結果的に味方の足を引っ張りまくるかたちで終わったそうです。

 

ルーシー連邦:ソ連

共産主義の連邦制国家で、首都の名前が「モスコー」で、軍の高官や魔導師を強制収容所送りにしていて、「兵が畑で取れる」と言われるほど人が多い……うん、誰が見てもソ連

ターニャも思いっきりソ連と同じ性質の国家として見ていましたね。赤の広場とか民間セスナとか地元(地球)ネタ全開で喋ってたし。

連邦の指導者たちも露骨にスター〇ンとかベ〇ヤとかのモデルがいて、他の国々と比べてもモデルにかなり似せているように見えます。

 

合衆国:アメリカ

別の大陸の大国、劇場版の時点では(名目上は)中立。地理的にも立場的にもアメリカをモデルにした国だと分かります。

史実のアメリカは第一次世界大戦の後半で途中参戦しているため、今後は『幼女戦記』の世界でも合衆国が参戦してくるものと思われます。というか原作ではします。

 

イルドア王国:イタリア

アニメでは今のところほとんど登場しない国。領土的にはイタリアがモデルと思われます。

作中では珍しく帝国に敵対的ではない国で、好意的な中立国です。敵対国家たちとの交渉の窓口としての価値もあります。

原作では後半の方で重要な役割を果たすんですが、アニメで今後どう登場してくるのか注目です。

 

アニメ『幼女戦記』で描かれた戦いの元ネタは?

せっかくなので登場国家だけでなく、アニメ劇場版までに描かれた部分を中心に、主な戦いのモチーフになったと思われる史実の戦闘もまとめました。多分これかな?という推測なので、間違ってたらごめんなさい……

 

ライン戦線:第一次世界大戦の塹壕戦?

作中の主な戦線のひとつとして何度も出てくる、帝国西方の戦線。

ここでの戦いは第一次世界大戦の塹壕戦による硬直状態を描いたものと分かります。いわゆる「西部戦線」ですね。

泥沼の戦闘っぽさが当時の塹壕戦の雰囲気をリアルに伝えてくれます。

 

協商連合との戦い:ヴェーザー演習作戦?

帝国と協商連合の戦いですが、単純に「ドイツと北欧がぶつかり合った戦闘」と考えると、第二次世界大戦のヴェーザー演習作戦なのかな?とも思えます。

ただ、史実の細かい状況とはけっこう違いもあるので、これに関しては特定の明確な元ネタがあるわけではないのかもしれません。

 

対パルチザン戦:ワルシャワ蜂起?

テレビアニメ中盤でショッキングな描写も多く見せた対パルチザン戦。

これに関しては、ポーランドのワルシャワ蜂起などが近いのかなあ……という印象。市民が放棄して、無関係の民間人も多く巻き込まれた泥沼の市街戦、という点でよく似ていると思います。

ちなみに、パルチザンというのは外国勢力などに対して抵抗する非正規の軍隊を指します。レジスタンスとほぼ同義ですね。

 

解錠作戦:パッシェンデールの戦い?

ライン戦線の硬直を終わらせるために帝国が行った解錠作戦。

地下に坑道を掘り進めて大量の爆薬で敵陣地を吹っ飛ばす、というのは、第一次世界大戦の「パッシェンデールの戦い」で実際に行われました。ただし『幼女戦記』とは逆で、連合国軍側がドイツ軍に対してやっています。

これによるドイツ軍の被害は1万人以上、使った爆薬は500トン近く。人類が起こした爆発の中でも歴史上最大規模のもののひとつとされているそうです。

 

史実と比べて見るとより興味深い『幼女戦記』

以上、史実と比較しながら『幼女戦記』の世界の国や戦いを見ていきました。

歴史を上手いこと架空戦記の中に収めていて、歴史を知っていても知らなくても楽しめるように構築されているのが分かりますね。

ただ、せっかくなら元ネタが分かる方がやっぱり楽しいでしょう。史実を調べつつ『幼女戦記』を観て、読んでみると、興味深さが増すのでおすすめです。

 

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